2026.06.22科学技術振興機構(JST)

徳島大らがDNAを簡便・高速に合成する新手法を開発、核酸医薬の製造効率化に期待(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「DNAをより簡便かつ高速に合成する新手法~RNAにも応用可能で、医療・創薬・生命科学を支える技術~」

科学技術振興機構(JST)は2026年6月22日、徳島大学 大学院薬学研究科の南川典昭 教授、田良島典子 准教授、三原菜那 大学院生らのグループが、徳島文理大学薬学部の張功幸 教授と共同で、DNA(オリゴヌクレオチド)の化学合成において新しい手法を開発したと発表した。

新手法では、「ヌクレオシド 3′-ホスホロフルオリダート [P(V)–F]」という五価リン型の新規ビルディングブロックを用いる。既存のホスホロアミダイト法は、三価リン[P(III)]型ブロックの安定性不足と、一塩基伸長ごとに必要な酸化工程が合成を煩雑にしていた。新法ではシリコン系添加剤で活性化することで酸化工程が不要となり、より安定な原料で鎖伸長が可能になった。10量体・12量体・20量体の合成に成功し、化学修飾RNAへの展開可能性も実証した。本研究成果は2026年6月19日(現地時間)に学術誌「Journal of the American Chemical Society(JACS)」にオンライン掲載された(DOI:10.1021/jacs.6c04623)。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年6月22日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260622/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

DNA(デオキシリボ核酸)は遺伝情報の担い手であるだけでなく、近年は「核酸医薬」として創薬分野でも注目されています。特定の遺伝子配列に働きかけるオリゴヌクレオチド(短い核酸鎖)を化学合成し、疾患の原因遺伝子を標的にする治療薬です。このオリゴヌクレオチドをいかに効率よく合成するかは、核酸医薬の製造コストや安定供給に直結する課題となっています。

① 従来法の課題:不安定な原料と酸化工程の繰り返し

現在主流のホスホロアミダイト法では、三価のリン(P(III))を含む反応性の高い原料(ビルディングブロック)を使います。この原料は保存安定性が低く、また1塩基ごとにP(III)からP(V)への酸化ステップが必要なため、合成工程が煩雑になっています。

② 新手法:五価リン型で酸化不要・安定な合成

研究チームは、五価リン[P(V)]型の新規ビルディングブロック「P(V)–F(ヌクレオシド 3′-ホスホロフルオリダート)」を開発しました。このブロックはより安定で保存可能であり、シリコン系添加剤で活性化することで鎖伸長反応が進みます。酸化工程が不要になるため合成手順が簡略化されます。10量体・12量体・20量体の合成に成功しており、化学修飾RNAへの応用も実証しています。

③ 核酸医薬・遺伝子検査の製造基盤への貢献

研究グループは、この技術が核酸医薬や遺伝子検査用材料の製造効率化、コスト低減、安定供給に貢献する可能性があると述べています。核酸医薬は近年、アンチセンス核酸やsiRNAなどの製品が実用化されており、合成工程の簡略化は製造コスト低減に向けた基盤技術として期待されます。

編集部からひとこと

今回の成果はP(V)型の五価リンを出発点とする発想で、合成工程を簡略化する指針を示した基礎研究です。実際の医薬品製造ラインへの適用には、長鎖合成での有効性確認やスケールアップなど次の検証が必要です。核酸医薬の普及が製造コストに制約されている現状を踏まえると、合成化学からの新しいアプローチとして注目される研究です。

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