2026.06.18 科学技術振興機構(JST)

千葉大・東大・京大がCO2から作り肥料に還る循環型プラスチックを実証(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「CO₂から生まれ、肥料と原料へ還るプラスチックシステム~炭素と窒素を循環利用する新しい高分子資源循環系を実証~」

千葉大学大学院融合理工学府博士前期課程仁木陸翔氏(研究当時)、同大学大学院工学研究院青木大輔准教授(同大学園芸学研究院附属宇宙園芸研究センター兼任)、谷口竜王教授らの研究グループは、東京大学神谷岳洋准教授、京都大学喜多祐介特定准教授、田村正純教授らと共同で、二酸化炭素(CO₂)を原料としてモノマーおよび架橋剤を直接合成し、架橋型脂肪族ポリカーボネート材料を創製しました。本材料はソフトマテリアルとして利用可能であるだけでなく、使用後にアンモニア水で処理することで、植物肥料である尿素とモノマーと架橋剤の前駆体へ分解できます。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年6月18日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260618-2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

私たちが日常的に使うプラスチックの多くは石油を原料につくられ、使用後は焼却されて二酸化炭素(CO₂)を排出します。この「つくる・使う・捨てる」の一方通行を、資源が循環する形へ変えようとするのがカーボンリサイクル(CO₂を回収し原料として再利用する技術)の考え方です。とりわけCO₂そのものを材料の炭素源として取り込めれば、排出削減と資源確保を同時に進められると期待されています。

今回の研究が扱うのは、ポリカーボネート(透明性や強度に優れた代表的なプラスチックの一種)をCO₂から合成し、さらに使い終わった後に分解して再び資源へ戻すという循環の設計です。研究グループは、炭素だけでなく植物の肥料になる窒素(尿素)の循環も組み合わせ、材料の一生を通じて資源を使い切らない仕組みを目指しています。

①CO₂を炭素源に材料を直接合成

研究グループは、CO₂を原料に高分子の材料となるモノマー(重合の単位となる分子)と架橋剤(分子同士をつなぐ成分)を直接合成し、架橋型脂肪族ポリカーボネートというソフトマテリアル(やわらかく加工しやすい高分子材料)を作り出しました。石油由来の炭素ではなくCO₂由来の炭素で材料を組み立てる点が特徴です。市場面でも、CO₂を利用する事業の市場は2030年に向けて年率10%台で拡大するとの調査があり、化学品の原料転換は脱炭素の主要テーマの一つになっています。

②使用後は肥料と原料に分解

作った材料は、使用後にアンモニア水で処理すると、植物の肥料である尿素と、材料を再びつくるための前駆体(モノマー・架橋剤のもとになる物質)へ分解できます。これにより、材料の炭素を循環させる「炭素循環」と、窒素を肥料として活用する「窒素循環」を一つの系で結び付けた点が、今回の実証の核心です。廃棄を前提としない素材設計は、基礎化学品のカーボンニュートラル化に向けた選択肢として注目されています。

編集部からひとこと

CO₂を原料にしたプラスチックや分解性の高い高分子の研究は各所で進んでいますが、今回は「材料をつくる炭素」と「分解後の窒素」という二つの資源循環を一つの仕組みにまとめた点に特徴があります。実用化には合成の効率やコスト、量産性など検証すべき課題が残りますが、複数の大学の連携で循環の全体像を実験的に示した意義は小さくないと言えそうです。

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