2026.06.23科学技術振興機構(JST)

京大・名大らがラジカルを組み込んだCOFで磁性と電気伝導を両立(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「ラジカル共有結合性有機構造体の形成~不対電子を組み込んだ有機構造体の形成による擬1次元反強磁性体への展開~」

京都大学 大学院工学研究科の古川修平 教授、関修平 教授らのグループは、名古屋大学 大学院理学研究科の須田理行 教授らと共同で、共有結合性有機構造体(COF)の骨格の節に不対電子を持つラジカルユニットを組み込んだ新材料「Radical COF(RCOF)」の形成を報告した。

この材料では、ラジカルユニットが結晶構造内で規則的に積み重なり、不対電子(スピン)がほぼ1次元状に整列する。低温条件下では隣接スピンが逆向きに揃う反強磁性を示し、面内では電子共役性が発達することで電子伝導性も備える。軽元素のみで構成された有機材料で磁性と電子伝導性を同時に実現した事例となる。本研究成果は2026年6月23日(ロンドン時間)に学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載された(DOI:10.1038/s41467-026-74618-4)。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年6月23日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260623-2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

共有結合性有機構造体(COF:Covalent Organic Framework)は、有機分子が共有結合で規則的に連結した多孔性材料です。金属を使わず軽元素だけで構成できるため、軽量・低毒性・分子設計の自由度という点で注目されています。今回の研究は、このCOFの骨格に「不対電子(スピン)を持つ分子(ラジカル)」を組み込むという新しいアプローチを採っています。

① ラジカルユニットの1次元整列が反強磁性を生む

通常のCOFは電子ペアを持つ安定分子で構成されます。今回は、不対電子を持つラジカルユニットをCOFの骨格の「節(ノード)」に配置しました。結晶構造内でラジカルが積み重なることで、不対電子がほぼ1次元状に整列します。低温下では、隣接するスピンが逆向きに配列する「反強磁性」が現れることを確認しています。

② 磁性と電気伝導性を有機材料で同時に実現

COFの面内では電子が広がって移動できる「電子共役性」が発達しており、電子伝導性も示します。磁性と電気伝導性を、金属を含まない有機材料のみで両立させた点がこの研究の特徴です。軽元素系の有機系材料でこうした性質を設計できる指針を示しています。

③ 有機系量子材料・スピントロニクス分野への展開

低次元の磁性構造は、量子情報処理や新型磁気デバイス研究において候補材料として検討されている設計の方向性のひとつです。金属フリーで磁性を持つ有機材料系の選択肢を広げる知見として、今後の材料研究での活用が期待されます。

編集部からひとこと

今回の成果は、有機COFで磁性と電気伝導を同時に示す構造設計の可能性を実証した基礎研究段階です。より高い温度での反強磁性転移の実現や、実用素子への加工など、応用に向けてはさらなる検証が必要です。一方、金属を使わずスピン整列と電気伝導を有機材料で設計できることを示した点は、材料科学の選択肢を広げる知見として注目されます。

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