2026.06.18 科学技術振興機構(JST)

神戸大学が高輝度の量子もつれ光で量子イメージングの高効率化を実現(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「神はサイコロを振る!?高輝度量子もつれ光で量子イメージングの高効率化を実現」

神戸大学 大学院システム情報学研究科の博士前期課程 𠮷村 佳奈子 氏、米田 成 准教授、的場 修 教授の研究グループは、高輝度な量子もつれ光を生成できるBiBO結晶を用いた量子イメージングを実現し、量子イメージングの高効率化を実現しました。アインシュタイン・ポドルスキ―・ローゼンのパラドックスを用いて空間的な量子もつれ状態であることを実験的に確認し、並列同時相関測定による光子対の同時検出により、高次元量子もつれ状態であることも検証しました。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年6月18日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260618/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

量子イメージングとは、光の最小単位である光子(こうし)がもつ「量子もつれ」(2つの光子の状態が互いに強く結び付く現象)を利用して画像を取得する技術です。ペアになった光子の片方を測ると、もう片方の情報が得られるという性質を使うことで、通常の光では難しい低ノイズの計測や、対象に当てる光を抑えた観察などが期待されています。

こうした量子の性質を光で扱う分野は量子フォトニクス(光の量子技術)と呼ばれ、医療の精密診断や防衛、環境計測などへの応用が見込まれています。研究者が目指すのは、量子もつれ光をより明るく(高輝度に)効率よく生成し、ノイズに強く実用的なイメージングへ近づけることです。

①明るい量子もつれ光を結晶で生成

研究グループは、BiBO結晶(量子もつれ光を効率よく作り出せる非線形光学結晶)を用いて高輝度な量子もつれ光を生成し、量子イメージングの高効率化を実現しました。さらに、アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンのパラドックス(EPRパラドックス=量子もつれの強さを示す古典的な思考実験)を用いて、空間的に量子もつれした状態であることを実験的に確認し、光子対の同時検出から高次元の量子もつれ状態も検証しています。

②ノイズに強い計測への寄与

量子イメージングの課題の一つは、観察したい光に紛れ込む迷光(めいこう=不要な背景光)の影響です。今回の高輝度・高効率な量子もつれ光の生成は、こうしたノイズの影響を抑えやすい計測技術への貢献が期待されています。市場面では、量子フォトニクスの世界市場は2025年の約21億ドルから年率20%超で拡大するとの予測もあり、量子センシングや量子イメージングは実用化に向けた重点領域とされています。

編集部からひとこと

量子もつれを使ったイメージングは研究段階の技術ですが、「明るく効率のよいもつれ光をどう作るか」は実用化を左右する基礎的な課題です。今回は結晶の選択によって高輝度化と量子もつれの検証を両立させた報告で、医療や計測といった応用に向けた一歩と位置づけられます。市場の立ち上がりはこれからで、要素技術の積み重ねが続く分野です。

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