2026.06.17
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科学技術振興機構(JST)
東大・京大・名大らがカゴメ金属で「ループ電流秩序」の微視的証拠を観測(FrontJournal解説)
ニュース紹介
「原子スケールの電流の渦がつくる新しい磁性を発見~カゴメ金属でループ電流秩序の微視的証拠を観測~」
原子核を高感度なセンサーとして用いる磁気共鳴測定により、カゴメ金属CsV3Sb5の内部で、原子スケールの電流の渦に由来する微小な磁場を検出しました。この結果は、電子が結晶格子上で輪を描くように自発的に流れる「ループ電流秩序」の微視的証拠であり、電子の流れが生み出す新しい磁性状態を示すものです。
出典:科学技術振興機構(JST) 2026年6月17日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260617/index.html
FrontJournalの解説
この研究分野について
カゴメ金属とは、原子が竹かごの網目(籠目)のように並んだ結晶構造をもつ金属の総称です。代表的な物質「CsV₃Sb₅」は2020年ごろに見つかって以来、超伝導(電気抵抗がゼロになる現象)や特殊な電子の秩序など、多彩な性質を示すことで世界的に研究が活発になっています。この特徴的な構造が、電子の振る舞いに通常とは異なる効果をもたらすと考えられています。
今回注目されたループ電流秩序とは、電子が結晶の格子の上を輪を描くように自発的に流れ続ける状態を指します。これは目に見えない微小な磁場を生むため検出が難しく、本当に存在するのかが議論されてきました。研究者は、こうした「隠れた電子の秩序」を直接とらえることを目指しています。
①原子核をセンサーに微小磁場を検出
研究グループは、磁気共鳴測定(原子核を高感度なセンサーとして利用し、ごく弱い磁場を捉える手法)により、カゴメ金属CsV₃Sb₅の内部で原子スケールの電流の渦に由来する微小な磁場を検出しました。これは、電子が格子上で輪を描いて自発的に流れる「ループ電流秩序」が実在することを示す微視的な証拠であり、電子の流れそのものが生み出す新しい磁性状態を示しています。研究は東京大学・京都大学・名古屋大学に加え、海外の研究機関との国際共同で行われました。
②超伝導の謎の解明につながる可能性
ループ電流のような「隠れた電子の秩序」は、高温超伝導体などでも議論されてきたテーマで、その正体を直接確かめることは長年の課題でした。今回の観測は、こうした秩序の理解を進め、量子材料(量子力学的な性質が際立つ新しい機能性材料)の物性研究に手がかりを与えるものです。基礎研究の段階ですが、より高い温度で超伝導を示す物質の設計指針につながる可能性が指摘されています。
編集部からひとこと
カゴメ金属CsV₃Sb₅は、ここ数年で国内外の研究が集中してきた物質です。今回は、議論の的だったループ電流秩序の存在を微視的にとらえた報告で、基礎物理の前進といえます。すぐに製品へ結び付くものではありませんが、超伝導や新しい磁性の理解は、将来のエレクトロニクスやエネルギー技術の土台になる領域です。