2026.06.23科学技術振興機構(JST)

九州大らが弱い光で可視光を紫外光に変える固体材料を実現(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「太陽光レベルの弱い光で可視光を紫外光に変える固体材料を実現~光触媒による環境浄化や水素発生の高効率化に期待~」

九州大学の君塚信夫 特任教授(ネガティブエミッションテクノロジー研究センター)、佐々木陽一 准教授らの研究グループは、自然科学研究機構 分子科学研究所、総合研究大学院大学と共同で、太陽光レベルの弱い光(数mW/cm²)の照射下でも可視光を紫外光に変換できる固体材料を実現しました。三重項-三重項消滅(TTA)を利用したフォトン・アップコンバージョンにより、変換効率1.9%(規格化最大値50%)を達成しています。これまで可視光を紫外光へ高効率に変換できる固体材料は報告されておらず、光触媒による環境浄化や水素発生への応用が期待されます。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年6月23日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260623/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

フォトン・アップコンバージョンは、エネルギーの低い光(長い波長)を、エネルギーの高い光(短い波長)に変換する技術です。太陽光のうち紫外光が占める割合はごくわずかで、紫外光を使う光触媒反応では、豊富な可視光を紫外光に変えられれば太陽光の利用効率を高められます。今回はこの変換を、扱いやすい固体の状態で実現した点が要点です。

①固体では「高効率の変換」が難しかった

これまで、可視光を紫外光へ高効率に変換できる固体のアップコンバージョン材料は報告されていませんでした。固体状態では発光する性質と、変換に必要なエネルギーの受け渡しを両立させることが難しく、実用化に向けた課題になっていました。

②分子の形を工夫して固体での両立に成功

研究グループは、発光分子の骨格に対し垂直方向にアルキル基を導入する分子デザインを採用。これにより、固体状態でも高い発光性と効率的なエネルギー移動を両立させることに成功しました。太陽光レベルの弱い光でも動作し、変換効率1.9%(規格化最大値50%)を示しています。

③環境浄化や水素発生への応用

生成した紫外光は、光触媒反応の駆動に使えます。光触媒と組み合わせることで、太陽光を活用した環境浄化や水素発生など、幅広い応用展開が期待されます。成果は2026年6月23日付の学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

編集部からひとこと

太陽光のうち使いにくい可視光を、反応に役立つ紫外光へ固体で変換できれば、光触媒の使い道は広がります。今回は分子設計の指針を示した段階であり、実環境での耐久性や、より高い変換効率をどこまで安定して引き出せるかが、実用化に向けた次の焦点になりそうです。

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