2026.06.29科学技術振興機構(JST)

大阪公立大らが光圧×流体圧で大腸がんマーカーを高感度検出(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「光圧×流体圧で大腸がんの早期診断に貢献~ゴマ粒ほどの血液中のたんぱく質を、基準値の1/1000の濃度で計測~」

大阪公立大学大学院理学研究科の飯田琢也教授らの研究グループは、名古屋市立大学、愛知県がんセンターと共同で、光圧と流体圧の相乗効果を利用して抗原抗体反応を高速化する「マイクロフロー型光誘導加速システム」を開発しました。数百ナノリットルの微量検体で、大腸がんマーカータンパク質CEACAM-5を1〜10ピコグラム/ミリリットルという極低濃度で検出することに成功しています。あわせて、大腸がんマーカータンパク質が血液中でナノスケールの凝集体として存在することを明らかにしました。研究成果は国際学術誌「Nanoscale Horizons」の創刊10周年記念特集の招待論文として掲載されました。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年6月29日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260629/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

血液中のタンパク質を測る「免疫測定法」は、抗体が標的タンパク質(抗原)に結合する反応を利用してがんマーカーなどを検出する手法です。微量のマーカーを早期に捉えるには、反応速度と感度が課題となります。検体量が少なく、マーカー濃度が低い段階で正確に検出できれば、採血の負担を抑えた早期診断につながると期待されています。

①光と流体の力で抗原抗体反応を加速

研究グループは、レーザー光が物体に与える「光圧」と、マイクロ流路内の「流体圧」を組み合わせ、抗原と抗体を局所に集めて結合反応を促すマイクロフロー型光誘導加速システムを開発しました。数百ナノリットルという極めて少ない検体量で測定が可能です。

②基準値の1/1000の濃度で大腸がんマーカーを検出

このシステムを用いて、大腸がんマーカータンパク質であるCEACAM-5を1〜10ピコグラム/ミリリットルで検出することに成功しました。これは従来の臨床検査基準値の約1/1000に相当する濃度です。あわせて、CEACAM-5が血液中でナノスケールの凝集体として存在することも明らかになりました。

③早期診断と病態解明への展開

少量の血液から極低濃度のマーカーを捉えられる仕組みは、非侵襲的ながん早期診断や、他の疾患マーカーへの拡張に道を開きます。マーカータンパク質の凝集状態の知見は、病態の解明や治療法開発の手がかりにもつながります。

編集部からひとこと

免疫測定の感度と必要検体量はトレードオフになりやすく、ピコグラム級の検出を数百ナノリットルで実現した今回の成果は、診断の早期化に向けた実装上の意味が大きい技術です。実用化に向けては、装置の小型化や臨床検体での再現性、他のがんマーカーへの応用可能性などが今後の焦点になります。

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