2026.08.31 │ 東京理科大学・理化学研究所 │ 元発表:2026.08.31

東京理科大学ら、抵抗が切り替わる現象で電流と電圧の逆転を発見

ニュース紹介

「NMRと輸送測定で明らかにした抵抗スイッチングの熱的自己組織化」

東京理科大学先進工学部の伊藤哲明教授、小内貴祥助教、同大学大学院の石井璃空氏、物質・材料研究機構(NIMS)の大池広志主任研究員、東京科学大学の賀川史敬教授、理化学研究所開拓研究所の加藤礼三研究員らの共同研究グループは、有機伝導体の抵抗スイッチング状態において、金属相と絶縁相が共存することを1H-NMR測定により明らかにしました。

相関電子系における揮発性の抵抗スイッチング現象は、電流を流すと抵抗が大きく変わる現象で、基礎物理とデバイス応用の両面から注目されています。一方、その多くは基板上の無機薄膜で研究されてきたため、基板への放熱や金属-絶縁体転移が幅広い温度範囲に広がることが絡み合い、ジュール熱が生む非線形な熱効果を切り分けて理解することは容易ではありませんでした。

本研究では、急峻な一次金属-絶縁体転移を示し、周囲との熱結合が弱いバルク有機伝導体を用いました。その結果、周囲温度を下げても試料の大部分が転移温度付近に保たれる「温度固定効果」と、電流を減らすと反比例して電圧が上昇する「逆オーム則」が現れることを見出しています。これらはジュール発熱と放熱の釣り合いのもとで金属相と絶縁相の割合が自律的に調整される「熱的自己組織化」によって生じることを明らかにしました。

出典:東京理科大学 2026年8月31日 プレスリリース
https://www.tus.ac.jp/today/archive/20260831_0131.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

物質には、電気をよく通す金属相と、ほとんど通さない絶縁相があります。温度によってこの2つが切り替わる現象を金属-絶縁体転移と呼びます。

電流を流したときに抵抗が大きく変わる抵抗スイッチングは、この転移と関係が深く、次世代の記憶素子などへの応用が検討されています。研究者が目指しているのは、電流が生む熱の影響を切り分けて、現象の中身を正しく理解することです。

①薄膜では熱の影響を切り分けられなかった

これまでの研究の多くは、基板の上に作った無機の薄膜で行われてきました。

この場合、基板への放熱や、金属-絶縁体転移が幅広い温度範囲に広がることが絡み合います。そのため、電流が生むジュール熱による効果だけを取り出して理解することは容易ではありませんでした。

②電流を減らすほど電圧が上がっていた

研究グループは、急峻な転移を示し周囲との熱のやりとりが弱い有機伝導体を使い、電気の測定とNMR測定を組み合わせました。その結果、抵抗スイッチング状態では金属相と絶縁相が共存していました。

さらに、周囲温度を下げても試料の大部分が転移温度付近に保たれる温度固定効果と、電流を減らすと反比例して電圧が上がる逆オーム則を見出しています。発熱と放熱の釣り合いで両相の割合が自ら調整される熱的自己組織化によるものです。

編集部からひとこと

電圧と電流が比例するというオームの法則は、電気の基本として広く知られています。今回はその逆の振る舞いが、物質の内部で2つの相が自ら割合を調整する結果として現れました。素子の設計では熱は避けたい対象として扱われがちですが、ここでは熱が状態を決める主役になっています。

FrontJournal編集部

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