フォトニックラティス|東北大学発の「偏光カメラ」でガラスやフィルムのひずみを可視化するディープテック企業

株式会社フォトニックラティス

フォトニックラティス「偏光カメラ」を開発|研究領域=光の振動の向きを1回で面ごと撮影/強み=1回の撮影でひずみを可視化/将来性=検査と光通信へ偏光技術を展開

企業紹介|フォトニックラティスとは?

ガラスやフィルムの内部に残るひずみを、光の振動の向きから映し出す装置として、注目を集める「偏光カメラ」。フォトニックラティスは、その開発と製造に取り組む、東北大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。偏光カメラや複屈折計測装置「PA/WPAシリーズ」を、ガラスや光学フィルム、レンズの製造・研究の現場へ提供しています。

キーワード「偏光カメラ」

偏光カメラは、向きの異なる偏光子(特定の向きの光だけを通す部品)を隣り合う画素に並べ、光の振動の向き(偏光)の分布を1回で撮るカメラです。特徴は、透明な物体の内部にかかる力(応力)を、偏光の変化として画像に表せる点にあります。ガラスや樹脂フィルムの製造現場で、割れの原因となるひずみを目で見える形で確かめられます。

市場課題|透明な部品のひずみは目で捉えにくい

現状のひずみ検査の課題|現状は、ひずみが見えにくく、測るにも時間がかかる/内部のひずみが割れやムラの原因/偏光の撮影に時間を要する

内部のひずみが割れやムラを招く

透明な部品の内部のひずみは、割れや表示のムラの原因です。成形や加工で内部に応力が残ると、材料には複屈折(光の進む速さが振動の向きによって変わる性質)が生じます。複屈折は見た目では分かりにくく、目視の検査ではひずみの量を数値で比べにくいため、そのまま量産すると、歩留まり(製品のうち良品が占める割合)が下がりかねません。

偏光の撮影に時間を要する

偏光を測る従来の方法では、偏光子を回転させながら、何度も撮り直す必要があります。撮影の間に対象が動くと測定がずれるため、割れが進む瞬間のような速い現象は捉えにくく、付帯設備も大掛かりです。一点ずつ測る方式でも、広い面の分布をつかむには長い時間が必要です。

他にも、検査員ごとに判定がばらつきやすい、可視光を通さない樹脂は測りにくい、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 複屈折光が物質の中を進むとき、振動の向きによって進む速さが変わる性質。ガラスや樹脂は内部に応力がかかると複屈折を生じるため、その大きさを測れば、目に見えないひずみの量を推定できる。

フォトニックラティスの強み|「偏光カメラ」を開発

フォトニックラティスが「偏光カメラ」を開発|現在は、偏光カメラでひずみ計測を提供/ひずみの分布を数値で可視化/画素ごとの偏光子で一度に撮影

ひずみの分布を数値で可視化

人の感覚で良否を決める官能検査では、ひずみの有無は分かっても、その大きさを数値で比べにくいという課題がありました。

フォトニックラティスの複屈折計測装置「PA/WPAシリーズ」は、偏光をそろえた光を部品に当てて撮影し、画像から各点の位相差(直交する2つの偏光成分の間に生じる光の進みの差)を一括で算出します。測れる範囲は、低い位相差向けの「PAシリーズ」が0〜130nm、3つの波長を使う「WPAシリーズ」が0〜3500nmです。顕微鏡で見る試料から約50cmの部品まで測れ、結果は面の分布で得られます。ひずみの量が記録に残るため、製造現場は合否の基準を数値で決められ、検査員による判定のばらつきを抑えられます。

画素ごとの偏光子で一度に撮影

偏光子を回転させる方式は、向きごとに撮影を重ねるため、一瞬の変化を記録しにくいという弱点がありました。

同社の偏光カメラは、撮像素子の画素の上に、画素と同じ大きさの偏光子を並べています。偏光子は向きが45度ずつ異なる4種類で、画素と1対1で組み合わさるため、1回の撮影で偏光の向きとそろい具合の分布が得られます。この偏光子は、凹凸を付けた基板に屈折率の異なる2種類の膜を交互に積み、凹凸の形を層ごとに写し取る「自己クローニング法」で作るフォトニック結晶です。偏光子を回転させる機構が要らなくなり、装置を簡素にできるうえ、動いている部品や一瞬の現象のひずみも撮影できるようになります。

FrontJournalの解説
  • フォトニック結晶屈折率の異なる材料を、光の波長と同程度の周期で規則正しく並べた構造。周期や並べ方を設計すると、特定の向きに振動する光だけを通すなど、光の進み方を制御できる。

未来|偏光技術が製造検査と光通信を変える

偏光カメラと偏光素子が変える未来|偏光技術を製造検査と光通信に展開/光学フィルムのムラを自動検査/ガラスの亀裂を高速で撮影/偏光技術の用途拡大を目指す

光学フィルムのムラを自動検査

偏光による計測は、すでに光学フィルムの生産の現場で使われています。同社の「KAMAKIRI」は、光学フィルムの全幅と全長にわたって複屈折のムラを測る検査装置です。2015年にフィルムの生産現場への導入が始まり、ディスプレイなどに使う多くの種類の樹脂フィルムに対応しています。官能検査を自動判定に置き換えることで、フィルムの品質を一定に保ちやすくなります。

ガラスの亀裂を高速で撮影

偏光ハイスピードカメラ「CRYSTA」(クリスタ)は、高速で変化する現象の偏光を撮影できるカメラです。撮影速度は、対応する機種で最高毎秒100万コマです。ガラスに亀裂が進む過程や、切削加工で生じる応力の変化、樹脂が流れるときに生じる複屈折などが解析の対象になっています。材料が壊れる過程を映像で確かめられれば、割れにくい製品の設計に役立てられます。

偏光技術の用途拡大を目指す

同社が目指すのは、偏光素子(偏光を操る光学部品)の技術を、検査装置の外へも広げることです。光通信では、偏光の向きごとに別の信号を送る偏波多重通信向けの素子が、すでに実用化済みです。素子を小さくまとめる集積化についても、技術支援を手がけています。偏光を操る部品が通信機器に広がれば、より多くのデータを送れる通信網の実現に近づきます。

会社概要|株式会社フォトニックラティス

東北大学の研究から創業

フォトニックラティスは、2002年7月に東北大学発のベンチャー企業として仙台で設立されました。創業者は、東北大学名誉教授の川上彰二郎氏です。東北大学電気通信研究所の川上研究室が1990年代に発明した、「自己クローニング法」によるフォトニック結晶の作製技術が事業の核になっています。2011年の東日本大震災で建屋が全壊し、現在の仙台市青葉区へ本社を移しました。2026年からは佐藤尚氏が代表取締役社長を務めています。

井上春成賞を受賞

同社は技術の賞を受けながら、事業を海外にも広げてきました。2014年には「フォトニック結晶形機能集積素子と応用機器の工業化」で、第39回「井上春成賞」(大学や研究機関の成果を企業が実用化した技術に贈られる賞)を受賞しています。宮城県の「みやぎ優れMONO」には2009年と2015年に認定されました。同じ2014年には米国で光通信用素子の製造と販売を始め、測定機器は中国や台湾、韓国などへも輸出されています。

フォトロンのグループに参画

2020年11月、高速度カメラを手がける株式会社フォトロンが同社の全株式を取得し、フォトニックラティスはIMAGICA GROUPの孫会社になりました。両社は10年以上にわたって共同開発を続け、偏光ハイスピードカメラ「CRYSTA」とフィルム検査装置「KAMAKIRI」を製品化してきました。2022年4月にはフォトロンから光学計測事業を譲り受け、光学素子から計測装置までを一社で扱う体制を整えています。同社は、光学素子と計測装置の販売に加え、受託計測や機材のレンタルも手がけています。

会社情報

会社名株式会社フォトニックラティス(Photonic Lattice, Inc.)
所在地宮城県仙台市青葉区南吉成6丁目6-3 LABO・CITY仙台。東京事業所(東京都千代田区)。光学Lab.(東京都品川区)
設立2002年7月
代表佐藤 尚(代表取締役社長)。ファウンダーは川上 彰二郎(東北大学名誉教授)
資本金9,000万円。株式会社フォトロン(IMAGICA GROUP)の子会社
事業フォトニック結晶光学素子の設計・製造・販売。偏光カメラ・複屈折計測装置「PA/WPAシリーズ」・偏光ハイスピードカメラ「CRYSTA」・フィルム検査装置「KAMAKIRI」・赤外線ハイスピードカメラなど光学計測機器の設計・製造・販売。受託計測。特殊機材レンタル
技術領域フォトニック結晶(自己クローニング法)、偏光イメージング、複屈折計測
連携東北大学電気通信研究所(創業技術の発明元)。株式会社フォトロン(「CRYSTA」「KAMAKIRI」の共同開発)
採択第39回井上春成賞(2014年)。みやぎ優れMONO(2009年・2015年)
URLhttps://www.photonic-lattice.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

ガラスやフィルムは、ディスプレイや建物の窓に欠かせない素材です。その品質を左右する内部のひずみは、光の振動の向きという、人の目では区別できない情報の中に隠れています。フォトニックラティスは、この見えない情報を画素ごとに読み取る仕組みを、大学の研究から製品へと育ててきました。

興味深いのは、同じフォトニック結晶の技術が、検査用のカメラだけでなく、光通信に使う素子にも生かされている点です。一つの作製技術が、製造現場の品質管理と通信の基盤の両方を支えています。東北大学からは、東北大学発スタートアップ10選で紹介したように、材料や光の研究を生かした企業が多く生まれています。

透明な部品のひずみを数値で捉える技術が、ものづくりの品質をどこまで高めていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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