2026.09.16 理化学研究所 元発表:2026.09.14

理化学研究所ら、酵母が放出するグルタチオンが微生物の生育を支える

ニュース紹介

「酵母が放出するグルタチオンが微生物の相互作用を支える」

理化学研究所環境資源科学研究センターの吉田稔ユニットリーダー東京大学特別教授)、東京大学吉住僚太朗大学院生リサーチ・アソシエイト広島大学の西村慎一教授らの共同研究グループは、分裂酵母が細胞の外へ放出するグルタチオン(GSH)が、周囲の微生物の生育を支えることを明らかにしたと発表しました。

研究グループは、3,420種類の分裂酵母遺伝子破壊株について、栄養が豊富な培地と最少培地での生育を比較しました。その結果、単独では生育しにくいものの、野生株の近くでは生育を回復する37株を同定しました。このうち14株は窒素源シグナリング因子(NSF)で生育を回復し、残る23株はNSFには応答せず、複数の生育促進物質が作用していました。

培養上清の分画と質量分析法により、生育促進物質の一つとしてGSHを検出しました。培養上清の水溶性画分で生育が回復した11株のうち8株はGSHで生育を回復し、7株はGSHを栄養源として利用、1株では細胞形態の改善が確認されました。本成果は国際学術誌『mSystems』オンライン版に2026年9月14日に掲載されました。

出典:理化学研究所 2026年9月14日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260914_2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

自然界の微生物は、単独ではなく集団で暮らしていることが多く、細胞の外へ放出する化合物を介して互いの生育を促したり抑えたりしています。こうした物質のやり取りは、微生物同士相互作用と呼ばれます。

分裂酵母は、細胞の仕組みを調べる研究のモデル生物として広く使われている酵母の一種です。グルタチオンは、グルタミン酸システイングリシンの3つのアミノ酸からなる物質です。

①単独では育たない株を37株特定

研究グループは、遺伝子を1つずつ壊した分裂酵母3,420種類を調べ、単独では育ちにくいものの、正常な野生株の近くに置くと育ち直す37株を見つけました。野生株が、周りの細胞を助ける物質を外へ出していることを示す結果です。

37株のうち14株は、すでに知られていた窒素源シグナリング因子(NSF)で生育が戻りました。一方で残る23株はNSFでは戻らず、野生株がNSF以外にも複数の生育促進物質を出していることが分かりました。

②栄養と細胞の形の両方を支える

研究グループは、野生株を育てた培養上清(細胞を育てた後の液)を成分ごとに分け、質量分析法(分子の重さを測って物質を特定する方法)で調べました。その結果、生育促進物質の一つとしてグルタチオンを見つけました。

水に溶ける成分で育ち直した11株のうち8株は、グルタチオンで生育が戻りました。7株はグルタチオンを栄養源として使っており、残る1株では細胞の形が改善していました。研究グループは、細胞外のグルタチオンが栄養の供給に加えて、細胞の中に取り込まれることで正常な細胞の形づくりを支えるとしています。

編集部からひとこと

微生物が外へ出す物質は、これまで主に周囲への栄養の受け渡しとして捉えられてきました。今回の成果は、同じ物質が相手の細胞の形にまで関わることを示しています。研究グループは、微生物培養技術発酵生産の効率化への応用を挙げており、微生物を使ったものづくりの現場で、培養条件を考える手がかりになる研究といえます。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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