株式会社TOWINGは微生物を定着させた高機能バイオ炭を開発する名古屋大学発スタートアップです

株式会社TOWING(トーイング)

TOWING「高機能バイオ炭」を研究|研究領域=炭に微生物を定着させた資材/強み=5年以上の土づくりを約1か月に短縮/将来性=宇宙でも作物を育てる研究へ

企業紹介|株式会社TOWINGとは?

有機質肥料に適した土づくりを短期間で終える技術として、注目を集める「高機能バイオ炭」。株式会社TOWINGは、その「高機能バイオ炭」の社会実装を目指す、名古屋大学発の環境系ディープテック企業です。もみ殻や家畜ふんを炭にした特殊肥料「宙炭」を、全国の農業生産者へ提供しています。

キーワード「宙炭」(そらたん)

宙炭」は、地域の未利用バイオマスを炭にし、土壌微生物を定着させた特殊肥料です。特徴は、有機質肥料に含まれる窒素を作物が吸収できる形へ変える働きが、施用した直後から現れる点です。これまで5年以上を要した有機質肥料に適した土づくりを、約1か月へ短縮できます。

市場課題|有機質肥料への転換が進みにくい

現状の土づくりの課題|現状は、土づくりも施用管理も難しい|転換すると収量が30%ほど落ちる傾向/バイオ炭は施用量の管理が難しい

有機質肥料への転換が長期化

慣行農法から有機質肥料を主体とする農法へ切り替えると、収量は一般に30%ほど落ち込むといわれています。有機質肥料に含まれる窒素は、そのままでは作物が吸収できない有機態窒素の形で含まれており、土壌の微生物が分解して初めて肥料として働くためです。同等の収量に戻すまでの土づくりには5年以上を要し、その間の減収を負担できる生産者は限られます。

バイオ炭は施用管理が難しい

化学肥料の施用は一酸化二窒素(温室効果が二酸化炭素の約270倍とされる気体)を排出しますが、施肥が収量を支えるため削減には限界があります。そのため農業の脱炭素では、炭素を土に貯め窒素の流れも整えるバイオ炭に期待が集まります。ただしバイオ炭は土壌の性質を変える資材のため施用量の管理が難しく、普及は限定的です。

他にも、土壌診断の負担、堆肥散布の労力、クレジット売買基準の未整備、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 有機態窒素たんぱく質やアミノ酸などの有機物に含まれる窒素。作物はそのままでは吸収できず、土壌微生物が分解してアンモニア態、硝酸態へ変えることで初めて肥料として働く。

TOWINGの強み|微生物を定着させた炭

TOWINGが「高機能バイオ炭」を開発|炭の穴で微生物を培養してから施用/炭を中性に近づけ量の管理がいらない

炭の穴で微生物を培養

窒素を変換する微生物の量は畑ごとに異なり、狙って増やすことが難しいため、有機質肥料の肥効(肥料としての効き目)は畑によってばらつきます。

「宙炭」は、もみ殻や樹木の剪定枝、家畜ふんなどの未利用バイオマス(使い道のない農林業の副産物)を炭にし、その多孔質な構造土壌微生物を定着させた資材です。同社は導入先の土壌から微生物群を採取し、その土地で使われている有機質肥料とともに培養します。定着させるのは、有機態窒素をアンモニア態窒素へ変えるアンモニア化成菌と、それを硝酸態窒素へ変える硝化菌です。アンモニア化成菌だけが働くと、変換はアンモニア態で止まります。両者を偏りなく働かせることで、有機態窒素は作物が吸収できる硝酸態まで変わります。

中性に近づけ単体で施用

一般的なバイオ炭はアルカリ性で、散布のむらがあると土壌の一部がアルカリ性へ傾き、鉄やマンガンなどの養分が吸収されにくくなります。そのため石灰資材と同じように施用量の管理が必要になります。

「宙炭」は前処理によって中性に近い性質をもつ資材で、まいた量にかかわらず土壌が偏りにくく、石灰資材のような施用量の管理が不要です。畑に入れると土壌中の微生物の量と種類が整うほか、炭の大きな穴が水を通し、小さな穴が水を保つことで排水性と保水性も高まる点が特徴です。肥効は施用の初期から現れ、炭の表面が養分を保持して流亡(水に流されて失われること)が抑えられるため、効き目は栽培の後半まで続きます。試験導入した生産法人7件では、慣行の栽培と比べて収量が20〜70%増加したといわれています。

FrontJournalの解説
  • 硝化菌アンモニア態窒素を亜硝酸、さらに硝酸へと酸化する土壌細菌の総称。多くの作物は硝酸態窒素の形で窒素を吸収するため、この菌の働きが有機質肥料の効き方を左右する。

宙炭の未来|脱炭素から宇宙農業へ

高機能バイオ炭が変える未来|土にためた炭素をクレジットで販売/家畜のふん尿を炭の原料に使う/月を模した砂で作物を育てる研究

農地の炭素貯留を事業化

「宙炭」を農地にすき込むと、炭に含まれる炭素が分解されにくい形で土に残ります。貯留量は、10アール(約1反)あたり二酸化炭素換算で約1トンといわれています。2024年に宮崎県で三菱総合研究所と実施したサトイモの実証では、1株あたりの重量が12%増加し、計15アールでCO2換算1.3トンが固定されました。農地に固定した炭素はJ-クレジット制度(温室効果ガスの削減量を国が認証し、売買できるようにする制度)の対象で、同社はクレジットの取得代行と販売も手がけています。

畜産のふん尿を資源へ転換

同社は日本ハムと共同で、畜産から出るバイオマスを「宙炭」の原料にする実証を進めています。炭化した鶏ふんを原料とする「宙炭」をトウモロコシに施用し、生育と農地の状態の改善度を調べています。豚ふんの堆肥化では、「宙炭」を混ぜることによる堆肥化の促進と温室効果ガスの削減効果を検証中です。畜産の排せつ物を、処理の対象から農業の資材へ移す取り組みです。

宇宙農業の実現を目指す

同社は、月面での栽培を見据えた宇宙農業の実現を目指しています。月の砂は粒が細かく、微生物のすみかとなる隙間が乏しいといわれています。同社は大林組と共同で、月の砂を模した砂を多孔質に焼き固め、地上と同じ方法で微生物を定着させ、コマツナの栽培に成功しました。地球の農地で確立した土づくりの技術を、宇宙の資源へ広げることを目指します。

会社概要|株式会社TOWINGの事業内容

宇宙農業の構想から創業

株式会社TOWINGは、2020年2月に名古屋市で設立されました。創業したのは、西田宏平氏と、弟で取締役CTOの西田亮也氏らです。西田宏平氏は名古屋大学大学院環境学研究科の出身で、学生時代から宇宙農業を構想してきました。2019年11月には、内閣府などが主催する宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2019」で宇宙農業の構想を発表し、入賞しました。拠点は、名古屋大学内の研究室、刈谷市の農園、豊橋市のプラントです。

採択と事業会社との連携

同社の技術は、公的機関の採択と事業会社との共同実証で実装が進んでいます。2022年6月には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究開発型スタートアップ支援事業に採択されました。「宙炭」は、同社のバイオ炭の前処理技術と微生物培養技術に、農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)と名古屋大学が共同で開発した技術を組み合わせて実用化されました。2024年3月には三菱総合研究所カーボンファーミング(農地に炭素を貯留する農法)の実証を開始し、野村グループやサグリとも脱炭素化の実証を進めています。

累計約29.5億円を調達

同社は2025年5月にシリーズBラウンド19.4億円の調達を完了し、累計調達額は約29.5億円となりました。引受先には、名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー2号投資事業組合、三菱UFJキャピタル、東邦ガス、脱炭素化支援機構、サントリーホールディングスなどが名を連ねています。資金の使途は、高機能バイオ炭の技術の高度化、量産プラントの開発・拡充、国内外の事業拡大に向けた採用と組織体制の構築です。

会社情報

会社名株式会社TOWING(TOWING Inc.)
所在地愛知県名古屋市千種区不老町1番
設立2020年2月27日
代表代表取締役:西田 宏平(名古屋大学大学院環境学研究科 出身)
取締役CTO:西田 亮也
調達2025年5月 シリーズBラウンド 19.4億円(累計 約29.5億円)
事業高機能バイオ炭「宙炭」の製造・販売。農地施用および育苗培土(苗を育てる土)としての導入支援。カーボンクレジットの取得代行・販売。「宙炭」で生産した作物の販売
技術領域高機能バイオ炭、土壌微生物の選別・培養、農地の炭素貯留、宇宙農業向け人工土壌
連携農研機構(技術の融合)。日本ハム(畜産バイオマスの実証)。三菱総合研究所(カーボンファーミング圃場実証・2024年3月〜)。野村グループ/サグリ(農業の脱炭素化実証)
採択NEDO 研究開発型スタートアップ支援事業(2022年6月)/S-Booster 2019 入賞
URLhttps://towing.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

有機質肥料への転換は、これまで収量の落ち込みと長い土づくりを生産者が引き受ける前提で語られてきました。TOWINGが開発した「宙炭」は、その前提そのものを、炭と微生物という土壌の側から組み替える試みです。原料が地域の未利用バイオマスである点も、この技術の性格をよく表しています。

注目したいのは、これが肥料であると同時に、環境価値を生む資材でもある点です。収量の向上と炭素貯留が同じ資材から生まれるため、脱炭素の取り組みが農業の収入と結びつく道が開けます。資材の費用と得られる収入の釣り合いが、普及の速さを決めるとみられます。

宇宙で作物を育てるという遠い目標が、地上の土づくりの技術開発を引っ張ってきた点も、この会社の特徴だといえます。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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