株式会社LABバイオテック|900株超の乳酸菌ライブラリから機能性素材を開発する北海道大学発の企業

株式会社LABバイオテック(LAB BIOTECH)

LABバイオテック「乳酸菌ライブラリ」を研究|研究領域=顕微鏡で乳酸菌の作用を株ごとに評価/強み=ラックに並ぶ保存用の小瓶から900株超のうち有用株を選抜/将来性=ヨーグルトと化粧品ボトルで示す食品や化粧品の素材へ広がる

企業紹介|株式会社LABバイオテックとは?

株式会社LABバイオテックは、北海道大学発の食品・ヘルスケア系ディープテック企業です。同社は900株を超える乳酸菌からなる独自の「乳酸菌ライブラリ」を構築し、腸内環境や美容への作用を一株ずつ評価しています。この基盤を軸に、有用株の選抜から機能性評価、成分の精製までを一貫して手がける体制です。主な事業は、食品・化粧品メーカー向けの原料供給と機能性評価の受託試験(他社から委託を受けて行う試験)です。

キーワード「乳酸菌エクソソーム」

乳酸菌エクソソームは、乳酸菌が細胞外へ分泌する微小な膜小胞(細胞外小胞・EVs)です。リン脂質二重膜(細胞膜と同じ脂質の層)の内部に成分を包んだまま運搬する特性を持ち、細胞間の情報伝達に関わると考えられています。化粧品や健康食品の開発では、有効成分を安定した状態で届ける手法が長年の課題でした。そこで同社はこの小胞を乳酸菌から高純度で精製し、原料として提供する体制を整えています。

市場課題|有用株と成分の選別が困難

現状の乳酸菌開発の課題|現状は、選別に時間を要し実用化が遅れる。コロニーが点在するシャーレとチェックリストで示す有用株の特定に時間がかかる課題と、粒が混ざった遠心チューブで示す微量成分の分離が難しい課題

有用株の特定に時間がかかる

乳酸菌を活用した製品開発の課題は、目的に合う株の特定に長期間を要することです。乳酸菌は同一菌種であっても、腸内環境や免疫への働きが株ごとに異なります。そのため一株ずつ培養して作用を検証する工程が不可欠となり、製品化までの期間が長期化します。

微量成分の分離が難しい

乳酸菌が分泌する微量成分の分離も技術的な障壁です。とくに乳酸菌エクソソームのような膜小胞は直径が極めて小さく、培養液(菌を育てる液体)に含まれる他の成分と大きさが近くなります。純度が低いまま原料化すると、作用の由来が小胞と混入物のどちらにあるのか判別しにくく、品質の均一化も困難です。

他にも、作用を裏付ける試験データの整備、品質を維持した量産の難しさ、原料の安全性を評価する工程の長さ、株数に比例して増加する保管の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 乳酸菌糖を分解して乳酸を生成する微生物の総称。腸内環境や免疫との関わりが研究され、同じ種類でも株ごとに作用が大きく異なる。
  • 乳酸菌ライブラリ性質の異なる乳酸菌の株を集めて保存した集団を指す。規模が大きいほど、目的の作用に合う株を選び出しやすくなる。

LABバイオテックの強み|開発短縮と高純度化を実現

LABバイオテックが「乳酸菌ライブラリ」を開発|今後は、選抜と精製で素材化が可能に。1つのウェルだけ色づいたマイクロプレートで示す有用株を迅速に選抜と、澄んだ液滴が落ちる精製カラムで示すエクソソームを高純度で精製

迅速な有用株の選抜

1つ目の強みは、自社で保有する900株を超える「乳酸菌ライブラリ」を活用した候補株の迅速な選抜です。同社は設立から4年で独自に約450株を単離し、その後も収集と単離を重ねて規模を広げてきました。研究拠点は北海道大学 遺伝子病制御研究所内にあり、基礎研究と連動して株の作用を評価できる環境です。目的に応じた候補株を即座に絞り込めるため、顧客企業は探索期間を短縮できます。腸内環境・免疫・美容といったテーマごとに、試験データを添えて候補株を提案できます。

高純度な精製技術

2つ目の強みは、乳酸菌の細胞外小胞高純度で分離・精製する独自技術です。同社はこの技術について特許を出願しており、チーズ製造時の副産物であるホエイ(乳清)を原料として活用します。2026年4月に発表した化粧品原料「Fromage EVs」は、乳酸菌由来の小胞と乳由来の小胞を組み合わせた原料です。表皮細胞(皮膚の最外層を構成する細胞)を用いた試験では、高価なヒト幹細胞由来エクソソーム(ヒトの幹細胞から採取した小胞)と同等の細胞増殖促進作用(細胞の分裂を促す働き)が確認されています。廃棄されてきた副産物を活用するため、ヒト由来の原料に比べて供給が安定しやすいとされています。

FrontJournalの解説
  • 細胞外小胞(EVs)細胞が細胞外へ分泌する、膜に包まれたごく小さな粒。内部の成分を分解されにくい状態で運べるため、化粧品や医薬の分野で応用研究が進む。
  • 単離自然界の試料に混在する微生物から、目的の菌だけを分離する操作。取り出した菌は培養して菌株として保存される。
  • ホエイ(乳清)チーズを製造する過程で分かれる液体。たんぱく質やミネラルを含む一方で排出量が多く、用途の開拓が課題とされてきた。
  • 機能性評価菌や成分が体にどう働くかを実験で確かめること。作用を数値で示し、食品や化粧品の表示・開発の根拠にする。

乳酸菌研究の未来|健康と美容の素材へ

機能性の乳酸菌が変える未来|食品から化粧品、医療の近くへ広がる。ヨーグルトカップで示す身近な食品へ乳酸菌を供給、スポイト瓶で示すホエイ活用で美容原料へ拡大、病院の建物で示す難病の予防への応用を目指す

身近な食品への供給

評価を通過した機能性乳酸菌は、すでに市販の食品へ配合されています。同社は、多様な食材に配合できる「ふるさと乳酸菌」と、植物由来の「クラーク乳酸菌」を原料シリーズとして展開しています。その一例が、「クラーク乳酸菌」を配合した菓子「北大クラーク大福」です。作用が検証済みの株を使用すれば、食品メーカーは製品開発に集中できます。

美容原料への用途拡大

乳酸菌エクソソームの用途は、化粧品分野へも広がっています。「Fromage EVs」は、表皮細胞のターンオーバーを促進する作用に着目して開発されました。原料に用いるのは、国内で年間約40万トンが排出されるチーズホエイです。未利用資源を美容素材へ転換できるため、原料調達と環境配慮を両立できます。

難病予防への応用を目指す

同社は乳酸菌の難病予防への応用を目指し、特許出願と共同研究を推進しています。応用研究の土台にあるのは、免疫と疾患の機構を長く研究してきた北海道大学 遺伝子病制御研究所です。2026年にはコスモ・バイオ株式会社との共同研究により、独自株「KB-1」(同社が単離した乳酸菌)による月経前症候群(PMS=月経前に心身の不調が現れる状態)の改善作用について特許を共同出願しました。さらに眼科疾患の治療に向けた共同研究も進行しており、選抜から精製までの一貫体制が医療領域への展開を支えます。

FrontJournalの解説
  • シンバイオティクス体に有用な菌(プロバイオティクス)と、その栄養源になる成分(プレバイオティクス)を組み合わせる考え方。腸内環境の改善をねらう。
  • ターンオーバー皮膚の細胞が新しく入れ替わる周期のこと。周期が乱れると肌の状態に影響するため、化粧品の開発で重視される指標。

会社概要|事業内容と設立背景

北海道大学研究の事業化

株式会社LABバイオテックは、北海道大学で蓄積された乳酸菌研究を事業化するため、2020年3月18日に札幌市で設立されました。技術基盤は、北海道大学 遺伝子病制御研究所 シンバイオティクス研究部門の研究成果であり、同部門の宮崎忠昭氏は乳酸菌に関する特許出願を重ねてきた研究者です。現在は代表取締役社長を村上睦氏が務め、取締役副社長には盛孝男氏が就いています。

大学発認定と産学連携

2021年6月21日、同社は北海道大学発の認定ベンチャー企業(大学の研究成果や人材を活用する企業への称号)となりました。北海道の有望なスタートアップを選ぶ「J-Startup HOKKAIDO」にも選定されています。本社と研究拠点があるのは、中小企業基盤整備機構(中小企業を支援する国の独立行政法人)が運営するインキュベーション施設(起業支援の共同オフィス)「北大ビジネス・スプリング」です。ライフサイエンス研究支援商社のコスモ・バイオ株式会社とは、2024年1月から乳酸菌の受託研究で業務提携しています。

資金調達による開発加速

2024年10月、同社はコスモ・バイオ株式会社を引受先とする第三者割当増資(特定の相手に新株を割り当てる資金調達)により5,000万円を調達しました。調達資金は、研究開発への投資と新製品の市場投入に充当されます。調達を経て、資本金は4,700万円となっています(2025年1月末時点)。

会社情報

会社名株式会社LABバイオテック
所在地北海道札幌市北区北21条西12丁目2 北大ビジネス・スプリング301号
設立2020年3月18日
代表代表取締役社長 村上 睦。取締役副社長 盛 孝男
資本金4,700万円(2025年1月末時点)
調達2024年10月 第三者割当増資 5,000万円。コスモ・バイオ株式会社
技術領域乳酸菌の単離・機能性評価。乳酸菌エクソソーム(細胞外小胞)の分離・精製。機能性素材および化粧品原料の開発
連携コスモ・バイオ株式会社(2024年1月から乳酸菌の受託研究で業務提携。KB-1株のPMS改善作用で共同特許出願)
採択北海道大学発 認定ベンチャー企業(2021年6月)。J-Startup HOKKAIDO 選定
URLhttps://lab-biotech.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

身近なヨーグルトに含まれる乳酸菌は、株ごとに作用がまるで異なります。膨大な候補から目的に合う株を見極め、その作用を製品の形にするまでには、長い検証の積み重ねが必要です。LABバイオテックは900株を超えるライブラリを軸に、この地道な作業へ正面から取り組んできました。

とりわけ目を引くのは、乳酸菌が分泌する微小な小胞を高純度で精製し、化粧品原料にまで育てている点です。しかも原料になるのは、チーズ製造で大量に生じる副産物。これが美容素材へ転換されていく筋道は、素材開発の醍醐味そのものです。

札幌の研究室で選ばれた一株一株が、食品から化粧品、そして医療の近くへと広がっていきます。その静かな積み重ねに期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。