株式会社セルファイバ(CellFiber)|「細胞ファイバ」を研究

株式会社セルファイバ(CellFiber)

セルファイバ「細胞ファイバ(三次元培養)」を研究|研究領域=ゲルの管の中で細胞を育てる/強み=限られた体積で多く増やせる/将来性=細胞医薬品の量産を支える

企業紹介|株式会社セルファイバとは?

高額な細胞医薬品を量産する技術として、注目を集める「細胞ファイバ」。株式会社セルファイバは、その「細胞ファイバ」の社会実装を目指す、東京大学発のディープテックスタートアップです。卓上型の細胞ファイバ製造装置「Zeito Lite System」を研究の現場へ提供し、量産向けの「Zeito Plus System」の実用化を進めています。

キーワード「細胞ファイバ」

「細胞ファイバ」は、髪の毛ほどの太さの中空のゲルチューブに細胞を封じ込めて育てる、三次元の培養技術です。特徴は、周囲のゲルが細胞を守りながら、限られた体積で多くの細胞を増やせる点にあります。再生医療やがんの免疫療法に使う細胞の製造現場では、装置と組み合わせて閉鎖系を保ったまま培養できるため、汚染のリスクを抑えられます。

市場課題|細胞医薬品の製造の難しさ

現状の細胞医薬品の課題|現状は、製造の負担が重く治療費が高い傾向/培養に人手と設備を要する/細胞が集まり品質がばらつきやすい

細胞医薬品は高額で普及しにくい

細胞を培養して作る細胞医薬品には、1回の治療に数千万円を要するものもあるといわれています。製造の工程は今も手作業に頼る部分が多く、無菌環境を保つ設備も要ります。製造の負担が下がらないかぎり、治療を受けられる患者は限られたままです。

培養中の凝集で品質がばらつく

培養液の中で細胞をそのまま増やすと、細胞どうしが集まって塊になりやすくなります。塊が大きくなるほど、内部へ届く酸素や栄養は不足しがち。塊の大きさで内部の細胞の状態が変わるため、同じ工程で作っても品質にばらつきが残り、製造の規模を大きくするほど管理が難しくなります。

培養は人の手による作業が多く、作業者によって結果が変わりやすい点も指摘されています。他にも、培養中に細胞が受ける物理的なストレス、無菌を保って作業する手間、品質を証明する試験に要する時間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 細胞医薬品細胞そのものを有効成分とする医薬品。がんを攻撃する免疫細胞や、組織を修復する幹細胞を培養して患者に投与する。
  • 培養細胞を体外で育てること。温度や栄養、酸素の条件を整えた環境に置き、目的の数と状態になるまで増やす工程を指す。

セルファイバの強み|細胞ファイバ

セルファイバが「細胞ファイバ」を開発|今後は、ゲルの管で高品質な量産が可能に/限られた体積でも高密度に育てる/ゲルが細胞を守り品質が揃う

高密度培養で製造を効率化

従来の平面培養は、容器の底面積で増やせる細胞の数が決まるため、生産量を増やすほど容器と作業の数が積み上がります。

同社が使うのは、アルギン酸ゲルでできた中空のチューブに細胞を封じ込め、その中で育てる三次元の培養技術です。チューブは髪の毛ほどの太さ。容器の底面ではなく培養液の中に何本も置けるため、限られた体積でも多くの細胞を育てられます。同じ条件のまま培養する規模を広げられるため、研究段階で決めた条件を実際の製造規模まで保ちやすい点が特徴です。同社は閉鎖系での培養で、100億個規模の細胞を製造できることを実証したとしています。

ゲルが細胞を保護し品質を均一化

培養液に浮かせて細胞を増やす浮遊培養では、液の流れによる衝撃や、細胞どうしの過剰な凝集(細胞どうしがくっついて塊になること)を避けにくくなります。

ゲルのチューブは、内部の細胞を衝撃から守りながら、細胞が過剰に集まることを防ぎます。周囲の環境が一定に保たれるため、従来の培養法より細胞の機能が長く保たれ、品質も揃いやすいと期待されています。製品の「Zeito Plus System」は、GMPとGCTPに対応した製造装置です。培養バッグ(培養した細胞を入れる袋)と無菌のまま接合(つなぎ合わせること)できるため、封じた細胞を外気に触れさせず移せます。ファイバ1本ごとに環境が揃うため、まとまった量を作っても細胞の状態が揃いやすくなります。

FrontJournalの解説
  • アルギン酸ゲル褐藻に含まれるアルギン酸から作るゲル。カルシウムを加えると素早く固まる性質があり、細胞を包む材料として広く使われる。
  • GMP医薬品の製造と品質管理に関する国の基準。原料の管理から製造記録の保存までを定め、医薬品の製造には適合が求められる。
  • GCTP再生医療等製品の製造と品質管理に関する基準。細胞を扱う工程の特性に合わせ、無菌操作や工程管理の要件を定める。

細胞ファイバの未来|細胞医薬品への応用

高品質な細胞ファイバが変える未来|再生医療とがん治療の現場へ広がる/幹細胞の量産工程に採用が始まる/固形がんの免疫療法へ応用/細胞医薬品の普及を目指す

幹細胞の商業規模製造で実証

「細胞ファイバ」は、すでに幹細胞の量産で実証されたとしています。2026年5月には、協業先である台湾のLocus Cellが、ヒトの臍帯(へその緒)に由来する間葉系幹細胞をこの技術で商業規模まで製造する工程を確立しました。Locus Cellは、GMPに準拠した細胞製造を専門とする受託製造企業です。この工程は同社の竹北にある自動化工場の稼働にあわせて完全自動化され、再生医療向けの大規模な製造工程として実証されたとしています。

固形がんの免疫療法へ応用

次の応用先は、固形がんに向けた免疫細胞の製造です。2026年8月、同社は米国のTidewave Bioと、固形がん向けの次世代免疫療法の量産化に向けた共同研究を始めました。東京にあるセルファイバの施設で、従来の平面培養と「細胞ファイバ」による三次元培養を比べ、免疫細胞を増やす工程と分化させる工程を評価します。評価で得たデータは、Tidewave Bioが量産の進め方を決める材料になる見込みです。

細胞医薬品の普及を目指す

同社が目指すのは、細胞・遺伝子治療を誰もが受けられるようにすることです。同社は、人や現場が変わっても高品質な細胞を安定して製造できる工程の確立に取り組んでいます。日立製作所とは2023年5月に、GMPに対応した製造装置の共同開発を開始しました。装置と工程を組み合わせ、再生医療やがん治療で使う細胞の安定供給を目指します。

FrontJournalの解説
  • 間葉系幹細胞骨や軟骨、脂肪などの細胞へ変化する能力を持つ幹細胞。骨髄や臍帯から採取でき、再生医療の材料として研究が進む。
  • 分化幹細胞が特定の働きを持つ細胞へ変わること。細胞医薬品では、目的の働きを持つ状態まで確実に導けるかが品質を左右する。

会社概要|セルファイバの事業内容

東京大学の研究から事業化

株式会社セルファイバは、2015年4月に設立されました。技術の源は、東京大学の竹内昌治教授らが科学技術振興機構のERATO(国が支援する大型の研究プロジェクト)で進めた研究です。2013年には長さ1メートルの細胞のひもを作る成果が「Nature Materials」に掲載されました。代表取締役社長を古石和親氏が務めています。

採択と協業で開発を加速

装置の開発を後押ししたのは、国の支援と企業との協業です。2022年11月にはAMED(日本医療研究開発機構)の事業に委託費最大約8億円で採択され、2023年12月にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ディープテック・スタートアップ支援事業」にも採択されています。2023年5月には日立製作所とも協業し、GMPに対応した製造装置を共同開発しています。

資金調達を重ね量産に投資

同社は設立以来、複数回の資金調達を重ねてきました。2020年10月にはシードラウンドで1.05億円を、2022年5月にはリアルテックファンドと大和企業投資から約4億円を、2023年11月にはジャフコをはじめとする複数の投資家から約8.3億円を調達しました。2023年の調達分について同社は、量産の技術開発と海外展開の人材確保等にあてるとしています。

会社情報

会社名株式会社セルファイバ(CellFiber Inc.)
所在地東京都江東区佐賀2-9-8 MSC深川ビル2号館105
設立2015年4月1日
代表代表取締役社長 古石 和親
調達2020年10月にシードで1.05億円。2022年5月に約4億円。2023年11月に約8.3億円。
投資家2020年・2022年=リアルテックファンド(運営=リアルテックホールディングス)。2022年=大和企業投資。2023年=ジャフコ グループ、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター、ファストトラックイニシアティブ、リアルテックホールディングス、千葉道場ファンド。
連携日立製作所(2023年5月から、GMPに対応した細胞ファイバ製造装置を共同開発)。Locus Cell(2026年5月、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞をGMP準拠で商業規模製造する工程を確立)。Tidewave Bio(2026年8月、固形がん向け次世代免疫療法の量産化に向けた共同研究)。
技術領域細胞ファイバ技術(アルギン酸ゲルの中空チューブに細胞を封入する三次元培養)。製造装置「Zeito Plus System」(GMP/GCTP対応)と卓上型「Zeito Lite System」。対象は間葉系幹細胞、iPS細胞、免疫細胞等。
採択AMED「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」(2022年11月・委託費最大約8億円)。NEDO「ディープテック・スタートアップ支援事業」(2023年12月)。
イベントCytivaと共同開催のワークショップ(2026年4月・間葉系幹細胞の培養技術)等。
URLhttps://cellfiber.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

細胞そのものが薬になる時代が始まっています。ただし製造は今も人の手に支えられ、治療費は多くの患者にとって重いもの。セルファイバが向き合うのは、細胞を同じ品質で大量に育て続ける課題です。

面白いのは、細胞をむき出しで扱わず、ゲルの管に包んで育てる発想です。包めば細胞は守られ、密度も上げられます。単なる培養装置ではなく、細胞を扱う器を設計している点に価値があります。

東京大学で生まれた培養技術が、海外の製造現場でも評価され始めています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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