2026.08.10│理化学研究所・京都大学・科学技術振興機構(JST)│元発表:2026.08.10
理研・京大、染色体の3D構造がDNA複製を左右すると解明
ニュース紹介
「細胞分裂後の染色体の形がDNA複製を左右する」
理化学研究所生命機能科学研究センターの平谷伊智朗チームディレクター、大字亜沙美研究員、京都大学大学院医学研究科の遊佐宏介教授らの共同研究グループは、細胞分裂後に染色体が3次元構造を再構築することが、その後のDNA複製の開始に重要な役割を果たすことを明らかにしました。研究チームは全ゲノムスクリーニングを行い、GINS4というたんぱく質を新たなDNA複製制御因子として同定しました。GINS4を除去した細胞では、遺伝子が活発なAコンパートメントと不活発なBコンパートメントの分離に異常が生じ、DNA複製が正常に開始されないことが確認されました。DNA複製が塩基配列の情報だけでなく、ゲノムの3次元構造によっても支配されることを実験的に示す成果と説明されています。研究成果は「Nature Communications」に掲載されました。
出典:理化学研究所・京都大学・科学技術振興機構(JST) 2026年8月10日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260810_1/index.html
FrontJournalの解説
この研究分野について
細胞の中の染色体は、糸をランダムに丸めた塊ではなく、規則的な3次元構造を持って核内に配置されていることが分かっています。近年の研究では、遺伝子が活発に働く領域(Aコンパートメント)と、遺伝子活動が低く抑えられた領域(Bコンパートメント)に大きく分かれ、これがDNA複製のタイミング(複製タイミング)とも密接に関係することが示されてきました。
DNAは細胞分裂のたびに正確に複製される必要があり、複製の開始には多くのたんぱく質が関与します。中心的な役割を果たすのが、DNAの二重らせんを解きほぐす複製ヘリカーゼで、その活性化にはCdc45、MCM複合体、そして4つのサブユニット(Sld5・Psf1・Psf2・Psf3)からなるGINS複合体が集合する必要があります。今回の研究は、GINS複合体の一員であるGINS4に、これまで知られていなかった役割があることを示した点で注目されています。
①染色体の再構築とGINS4の役割
細胞分裂の終盤、コンパクトに折りたたまれていた染色体はほどけて核内に再配置され、AコンパートメントとBコンパートメントに整えられます。研究チームは全ゲノムスクリーニングによって、この分離とDNA複製の開始の両方に関わる因子としてGINS4を同定しました。GINS4を除去した細胞ではコンパートメントの分離に異常が起き、そのままではDNA複製が開始されないことが観察されました。DNA複製の制御に、配列だけでなく染色体の3次元構造が関わることを示唆する結果です。
②ゲノムの空間配置が持つ意味
これまでDNA複製のタイミングとゲノムの空間配置には強い相関が知られていましたが、両者を結び付ける具体的な因子は十分に分かっていませんでした。今回の成果は、「ゲノムがどこに置かれているか」が「いつ複製されるか」を決めるという関係を、細胞内の実験で結び付けた点に意味があります。DNA複製の異常は、がんや発生異常など多くの疾患に関わることが知られており、こうした基礎研究の進展は、将来の治療法や診断技術の設計思想にも影響を与える可能性があります。
編集部からひとこと
「DNAの情報は塩基配列にある」というのは今も正しい理解ですが、細胞は同じ配列を持つ細胞どうしでも役割を分けています。染色体の3次元的な畳み方は、その分業を成り立たせる仕組みの一つであり、複製の順序を決めるレイヤーとしても働いていることが今回の研究から見えてきます。今後は、GINS4の機能異常が実際の疾患とどう結び付くのか、他の生物種でも同じ制御が働くのか、といった検証が焦点になりそうです。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
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