2026.07.29 広島大学・理化学研究所 元発表:2026.07.29

広島大・理研、ゴルジ体から新しいエンドソームが誕生する仕組みを解明(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「細胞内『配送センター』ゴルジ体から輸送担体としてエンドソームが誕生 -細胞膜へのタンパク質輸送の新たな仕組みを解明-」

広島大学 大学院統合生命科学研究科の佐藤明子教授らのグループと理化学研究所 光量子工学研究センターの中野明彦客員主管研究員らは、以前の研究によりリサイクリングエンドソームがゴルジ体からタンパク質(積荷)を受け取って細胞表面へ運ぶことを発見していた。本研究では新たに、積荷のゴルジ体からリサイクリングエンドソームへの輸送のタイミングを薬剤で可逆的に制御できるゲノム編集細胞を作成し、顕微鏡で観察中にゴルジ体からリサイクリングエンドソームへの輸送を開始した結果、積荷の局在するゴルジ体領域で、積荷を内包しながら新たにリサイクリングエンドソームが形成されることを見出した。また、積荷を内包した新生リサイクリングエンドソームが既存のリサイクリングエンドソームと融合することで、既存リサイクリングエンドソームへと積荷が受け渡されることが分かった。さらに、研究チームに理化学研究所 環境資源科学研究センターの豊岡公徳上級技師らと広島大学コアファシリティーセンターの前田誠技師が加わり、3次元電子顕微鏡観察を行うことで、新生リサイクリングエンドソームがゴルジ体から伸びる数珠状構造体であること、この数珠状構造の一部がクラスリンにより被覆されていることが分かった。研究成果は科学誌「Nature Communications」に掲載された(DOI: 10.1038/s41467-026-75784-1)。

出典:理化学研究所 2026年7月29日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260729_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

私たちの細胞のなかでは、常にたくさんのタンパク質がつくられ、必要な場所へと運ばれています。細胞のなかで工場のようにタンパク質を仕上げ、行き先ごとに仕分けているのがゴルジ体と呼ばれる小さな器官です。ここで加工されたタンパク質は、小さな袋(膜で囲まれた輸送担体)に詰められて、細胞膜など目的の場所へ運ばれます。

そのうちリサイクリングエンドソームは、細胞膜との間で膜タンパク質を往復させる中継地点として知られてきました。ゴルジ体からリサイクリングエンドソームへ荷物(積荷)が渡され、そこから細胞膜へ運ばれる経路があることは分かっていましたが、「荷物を運ぶ袋そのものがどこでどう生まれるのか」は詳しく分かっていませんでした。今回の研究は、その生まれる瞬間を細胞のなかで直接とらえたものです。

①ゴルジ体から「荷物を抱えた新しい袋」が生まれる瞬間をとらえた

研究グループは、ゴルジ体からリサイクリングエンドソームへ荷物が動き出すタイミングを、薬剤で可逆的に制御できるゲノム編集細胞を新たに作成しました。この細胞を顕微鏡で観察しながら輸送を始めさせると、積荷が集まっているゴルジ体の領域で、その積荷を内包したまま新しいリサイクリングエンドソームが形成されていく様子が見えたと報告しています。生まれたばかりのエンドソームは、そのあと既存のリサイクリングエンドソームと融合し、荷物を受け渡していきました。「ゴルジ体は加工と仕分けの場」というこれまでの理解に加え、「輸送担体そのものが生まれる場」でもあることが直接示された点が新しい発見です。

②3次元電子顕微鏡で見えた「数珠状の構造」とクラスリン

さらに、環境資源科学研究センターの豊岡公徳上級技師らと広島大学コアファシリティーセンターの前田誠技師が加わり、3次元電子顕微鏡による観察を行いました。その結果、新生リサイクリングエンドソームはゴルジ体から伸びる数珠状の構造体として現れ、その一部が細胞内輸送でよく知られるタンパク質「クラスリン」により被覆されていることが分かりました。光学顕微鏡で見えるライブの動きと、電子顕微鏡で見える細かな形が結び付けられたことで、細胞のなかで新しい輸送担体がどう形づくられるかを立体的に理解できるようになった、というのが今回の成果です。研究成果は科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

編集部からひとこと

ゴルジ体は教科書でも「細胞内の郵便局」「配送センター」と紹介される、なじみのある器官です。今回の報告は、その配送センターから配達用の袋そのものが生まれ、荷物を抱えたまま別の袋に届けられるという、細胞内輸送の一連の流れを実際に見せた点で意義があります。細胞膜にどのタンパク質がどれだけ届くかは、細胞の機能や病気とも深く関わる基盤的なテーマです。基礎研究の成果として、今後の細胞生物学や薬剤送達の研究にも参照される内容だと受け止めました。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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