2026.08.10 理化学研究所 元発表:2026.08.07

カゴメ格子の超伝導、ループ電流秩序から生じることを理論で解明

ニュース紹介

「カゴメ金属でおきる「自発的に回転するクーパー対」」

名古屋大学大学院理学研究科の山川洋一 講師、紺谷浩 教授、理化学研究所 創発物性科学研究センター/開拓研究所の田財里奈 理研ECL研究ユニットリーダーらの研究グループは、カゴメ格子構造を持つAV3Sb5(A = Cs, Rb, K)で観測される特異な超伝導が、電子の「ループ電流秩序」によって自然に生じることを理論的に明らかにした。発表では、自発的に回転するクーパー対が発生することが示され、量子デバイス設計に新しい指針を与えるとされている。原論文のDOIは 10.1038/s41467-026-75259-3。

出典:理化学研究所(名古屋大学大学院理学研究科との共同研究) 2026年8月7日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260807_3/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

超伝導は、電気抵抗がゼロになる現象です。このとき電子は単独ではなく、二つが組になったクーパー対という形で流れます。組の作り方や、組がどんな性質を持つかによって、超伝導の振る舞いは変わります。近年、材料の原子の並び方に注目が集まっています。なかでもカゴメ格子は、竹のかごの編み目のように三角形が頂点でつながった構造で、電子が動きにくい特殊な状態が現れることが知られています。この構造を持つ物質では、通常の超伝導では説明しにくい振る舞いが報告されており、その仕組みが議論の的になってきました。

①ループ電流秩序という下地

今回の研究が扱ったのは、AV3Sb5(AはCs、Rb、Kのいずれか)という物質群です。カゴメ格子構造を持ち、特異な超伝導が観測されてきました。研究グループは、この超伝導が電子のループ電流秩序によって自然に生じることを理論的に示しました。ループ電流秩序とは、電子の流れが材料の中で輪を描くように配置した状態を指します。この下地がある状態で超伝導が起きると、クーパー対そのものが回転する性質を帯びる、という筋書きです。発表ではこれを、自発的に回転するクーパー対と表現しています。外から回しているのではなく、条件が揃うと勝手にそうなるという意味です。

②構造から性質を設計する方向へ

この結果が量子デバイス設計に新しい指針を与えるとされているのは、原因が材料の構造側にあると特定できたためです。ループ電流秩序は原子の並び方と電子の相互作用から生まれるので、どんな元素をどう並べるかで制御できる余地があります。超伝導を使ったデバイスでは、電流の向きや位相といった性質を意図した状態に保つことが求められます。回転という性質が自発的に現れる仕組みが分かっていれば、それを利用する設計も、避ける設計も選べます。理論研究ではありますが、実験で観測されていた現象に説明を与えた形なので、次に何を測ればよいかも定まりやすくなります。

編集部からひとこと

カゴメ格子は日本語の「籠目」から来た名前で、国際的にもそのまま kagome と呼ばれています。編み目という身近な形が、電子の振る舞いを決める舞台になっているのは面白いところです。今回は理論の研究で、実験で見えていた不思議な超伝導に対して、こういう仕組みなら説明がつくという答えを出しています。理論が先に説明を出すと、実験側は何を測れば確かめられるかが分かります。名古屋大学と理研という国内の組み合わせで、この分野の議論に踏み込んでいる点も記録しておきたい発表でした。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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