2026.07.30 東京大学・理化学研究所・科学技術振興機構(JST) 元発表:2026.07.30

東大・理研ら、生体情報処理に「不連続な転移」を理論解明(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「生体情報処理の高度化には"跳躍"がある~リソース制約が最適情報処理の不連続な転移を生むことを理論的に解明~」

東京大学生産技術研究所の小林徹也教授と、理化学研究所基礎科学特別研究員の鳥取岳広協力研究員らの共同研究グループは、生物のリソース制約下における最適な情報処理戦略に関する新たな数理理論を構築した。エネルギーや情報の信頼性などの制約条件が段階的に変化すると、最適な情報処理戦略に「不連続な転移」が生じ得ることを初めて理論的に示し、そのメカニズムを解明したもの。バクテリアから人間の脳まで、生体知能がどのように進化してきたかの理解や、リソース制限を考慮した人工知能・ロボットの設計への貢献が期待される。成果は米科学誌Physical Review Lettersに2026年7月28日付(米国東部時間)で掲載された。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月30日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260730-3/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

バクテリアが化学物質の濃度勾配をたどって栄養源へ向かう、あるいはヒトの脳が視覚情報を瞬時に判断する——生物は外界の情報を取り込み、限られたエネルギーや時間の中で最善の判断を下している。こうした「生体情報処理」の背後にある設計原理を数理モデルで解き明かす分野は、神経科学・システム生物学・情報理論の境界で研究が進んできた。今回の研究チームは、生物が使えるエネルギーや情報の信頼性という「リソース制約」が変わったときに、最適な情報処理戦略がどのように切り替わるかに焦点を当てた。

①戦略の切り替わりは「なめらか」ではなく「跳躍的」に起こる

従来のモデルでは、生物が使えるエネルギーや情報の信頼度が徐々に変わると、最適な情報処理戦略も連続的に移り変わると想定されがちだった。今回の研究は、リソース制約の変化に応じて最適戦略が不連続に切り替わる(相転移する)ことを理論的に示した。ある閾値を境に急に別の戦略が最適になる、という現象が数理的に導かれた点が新しい。生物や機械がどのようにして情報処理方式を進化・切り替えるかを説明する枠組みとして注目される。

②生物進化からエッジAIの省エネ設計まで応用の射程が広い

この成果は、バクテリアの走化性から脊椎動物の知覚まで、さまざまなスケールの生体情報処理の進化を統一的に説明する土台になる可能性がある。同時に、限られたエネルギーで動作するエッジAIや自律ロボットの設計にも示唆を与える。制約条件を変えたときに滑らかに性能が変わるのではなく、段階的に別の設計が最適になり得ることを、あらかじめ理論的に見積もれる意味がある。応用フェーズは今後の課題だが、基礎理論から応用へ橋渡す成果として位置づけられる。

編集部からひとこと

生物の情報処理は「使えるリソース次第で戦略ごと切り替わる」——直感的には連続的に馴染んでいくイメージがありますが、閾値を境に別モードへ跳ぶという理論的枠組みは、生物進化にもエッジAIの省エネ設計にも共通する視点として面白いところです。実験や工学応用による裏付けが今後どう積み上がっていくか、続報を追いたい成果です。

プレスリリース原文を読む ↗

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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