株式会社TearExo|涙1滴で乳がんのリスクを調べる涙液リキッドバイオプシーを研究する神戸大学発企業

株式会社TearExo(ティアエクソ)

TearExo「涙液リキッドバイオプシー」を研究|研究領域=涙液で乳がんリスクを調べる検査/強み=自動分析で結果を短時間に/将来性=日常的なセルフモニタリングへ

企業紹介|TearExoとは?

涙1滴で、乳がんのリスクを調べる技術「涙液リキッドバイオプシー」。TearExo(ティアエクソ)は、その社会実装を目指す、神戸大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。独自技術「TearExo法」による乳がん検査の実用化を、企業との実証試験を通じて進めています。

キーワード「TearExo法」

「TearExo法」は、涙液に含まれる細胞外小胞を分析し、乳がんのリスクを評価する検査手法です。特徴は、血液を採らずに、目じりに試験紙を当てるだけで検体を採取できる点にあります。健康診断や人間ドックの現場で、涙を使った簡便な検査としての利用が見込まれています。

市場課題|乳がん検診には受診の負担と検体の課題がある

現状の乳がん検診の課題|現状は、検診の負担で受診が滞る/マンモグラフィは心理的な負担が大きい/血液検体は扱いにくく精度に課題

検診の心理的負担が受診を妨げる

乳がん検診は、多くの女性にとって心理的な負担が大きい検査であり続けてきました。標準的な検診のマンモグラフィ(X線で乳房を撮影する検査)は、乳房を圧迫するため痛みを伴い、放射線被ばくへの不安も伴います。この負担は、2年に1度の受診からも足を遠ざける一因となっており、早期発見の機会を逃しかねません。

血液検体は扱いにくく時間も課題

血液を使うリキッドバイオプシー(体液から病気の兆候を調べる検査)も、検体の扱いにくさと分析時間という課題を抱える手法です。血清にはタンパク質成分が多く、成分変動や着色が精度を乱すほか、分析に使う酵素免疫測定法(ELISA法)も4〜5時間を要します。このため、多くの人が受ける検診へは広げにくいといわれています。

他にも、忙しさによる受診の先送り、遠方の検査施設、自己負担となる検査費用、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • リキッドバイオプシー血液や涙、尿などの体液を採取し、含まれる成分から病気の兆候を調べる検査手法を指す。組織を切り取る生検に比べ、体への負担が小さい。

TearExoの強み|「涙液リキッドバイオプシー」を研究

TearExoが「涙液リキッドバイオプシー」を研究|今後は、涙液で検診の負担軽減が可能に/圧迫も被ばくも伴わない検査/扱いやすい検体と自動分析で迅速に

涙液なら痛みも被ばくもない

マンモグラフィは乳房を圧迫するため痛みを伴い、放射線被ばくへの不安も避けられません。

「TearExo法」は、画像撮影ではなく涙液の成分を調べることで、この課題に取り組む検査手法です。目じりにシルマー試験紙(ドライアイ検査で使う細長い試験紙)を数分当てるだけで、涙液を自己採取できます。採取した試験紙は細胞外小胞回収溶液に浸し、涙液に含まれる細胞外小胞を回収したうえで自動分析装置にかける流れです。乳房の圧迫も放射線被ばくも伴わないため、検査を受ける人の心理的な負担を軽くでき、受診のハードルを下げられます。

涙液と自動分析で扱いやすく迅速

血液を使う検査では、血清に多いタンパク質成分が精度を乱しやすく、酵素免疫測定法による分析にも時間がかかっていました。

「TearExo法」は、扱いやすい涙液を検体とし、独自の分子認識材料(特定の分子だけを選んで結合する新素材)で細胞外小胞を捉えて、これらの課題に取り組んでいます。涙液は血清よりタンパク質成分が少なく、成分の変動が小さい検体です。回収した細胞外小胞は自動分析装置にかけ、乳がん患者に見られる特徴の有無を調べる仕組みです。研究では、乳がん患者と健常者で涙液中の細胞外小胞に違いがあり、乳房全摘手術の前後での変化も確認されています。この手法により、酵素免疫測定法よりも短時間で分析を終えることができます。

FrontJournalの解説
  • 細胞外小胞細胞が体液中に放出する微小な粒子を指す。タンパク質や遺伝情報を含み、放出した細胞の状態を反映するため、病気の兆候を捉える手がかりとして注目される。

涙液検査の未来|日常的な健康管理へ拡大

涙液検査が変える検診の未来|涙液を使った検査が、健康管理を変えていく/企業向けに実証試験を開始/セミナーと法人検査で拡大/日常的な自己検査を目指す

阪急阪神不動産と実証を開始

TearExoは、2026年3月、阪急阪神不動産と共同で、企業における乳がん検診受診率向上施策の有効性を検証する実証試験を開始しました。涙液を使った簡便な検査を福利厚生の一環として取り入れることで、受診のハードルを下げられるかの検証が目的です。2026年8月には、ハウス食品グループ本社とも、採涙キットを用いた乳がんリスク評価サービスの実証事業を発表しています。いずれも、企業や日常の場で涙液検査を使う形を試す取り組みです。

教育啓発と法人検査で拡大

同社は、乳がんへの理解を広げる教育啓発セミナーと、法人向けの涙液検査を事業として展開しています。対象とするのは、福利厚生として検診機会を増やしたい企業や、健康経営に取り組む組織です。セミナーで乳がんと検査の仕組みを伝えたうえで、法人向けの涙液検査を導入する流れを想定しています。これにより、職場を通じて働く世代に受診のきっかけを届けることを目指しています。

日常的な自己検査の実現を目指す

神戸大学発のTearExoが目指すのは、涙1滴で日常的にセルフモニタリングできる社会の実現です。検診と検診の間は、自分で乳がんのリスクを確かめる手段が限られています。同社が想定するのは、涙液の成分から日頃の状態の変化を評価し、乳がんのリスクを継続して確かめる形です。同社は、リスクが高い結果が出た場合に、医療従事者などへの相談を勧めています。

会社概要|TearExoの事業内容・設立背景

神戸大学発ベンチャーとして始動

TearExoは、2022年4月に兵庫県神戸市で設立されました。創業の中心となったのは、神戸大学の竹内俊文名誉教授と、髙野恵里氏です。分子認識材料を使い、涙液の成分から病気のリスクを評価する研究の成果を、産業へ応用することを目的としています。代表取締役CEOには堀川諒氏が就任し、竹内氏が代表取締役CSO、髙野氏が取締役CTOを務めています。

受賞と公的支援を経て量産へ

同社の技術は、設立前から公的機関の支援を受けて育ってきました。2019年には竹内氏の研究チームがメドテックグランプリ神戸で最優秀賞を受賞し、2020年には同チームがJST START事業(大学発ベンチャーの事業化を支援する国のプログラム)に採択されました。設立後の2022年には、同社がNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究開発型スタートアップ支援事業に採択されています。2025年5月には、量産段階の資金調達として、高分子材料メーカーの綜研化学を引受先とする第三者割当増資(特定の相手に新株を割り当てて資金を調達する方法)を実施し、センシングチップの量産プロセスの開発を進めています。

約5,000万円をシード調達

これに先立つ2023年8月には、シード資金として約5,000万円を調達しました。第三者割当増資によるこのラウンドの資金は、研究開発人員の増強や資材費、特許取得経費などに充てるとされています。リード投資家の神戸大学キャピタルに加え、リバネスキャピタルなど複数の投資家が参加しました。

会社情報

会社名株式会社TearExo(ティアエクソ)
所在地兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 神戸大学BMO棟(本店)。大阪府大阪市北区中之島4丁目3-51 O-Nexus(大阪オフィス)
設立2022年4月21日
代表堀川諒(代表取締役CEO)。竹内俊文(代表取締役CSO・神戸大学名誉教授)。髙野恵里(取締役CTO)
調達2023年8月、第三者割当増資で約5,000万円(リード:神戸大学キャピタル)。2025年5月、綜研化学を引受先とする第三者割当増資を実施
事業分子認識材料を用いたリキッドバイオプシーの研究・開発・製造・販売
技術領域涙液リキッドバイオプシー、分子認識材料、乳がん検査
連携阪急阪神不動産と乳がん検診受診率向上の実証試験を実施(2026年3月開始)。ハウス食品グループ本社と採涙キットを用いた乳がんリスク評価サービスの実証事業を発表(2026年8月)。綜研化学とセンシングチップの量産プロセスを開発
採択メドテックグランプリ神戸 最優秀賞(2019年・設立前の研究チーム)。JST START事業採択(2020年・設立前の研究チーム)。NEDO研究開発型スタートアップ支援事業採択(2022年)。特許庁IPAS選定(2022年)。J-Startup KANSAI選定(2022年)
URLhttps://tearexo.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

乳がん検診は、多くの女性にとって足を運びにくい検査であり続けてきました。マンモグラフィの痛みや被ばくへの不安が、定期的な受診機会すら遠ざけてきました。涙液という身近な体液から乳がんのリスクを評価しようとする発想は、検査へのハードルを下げる可能性を秘めています。

TearExoが目指すのは、単なる新しい検査法の開発ではなく、日常のなかで健康を確かめる習慣そのものを変えることです。目じりに試験紙を当てるだけという手軽さは、忙しい毎日のなかで検査を受けるきっかけになり得ます。企業が福利厚生として涙液検査を取り入れる動きが広がれば、受診のきっかけそのものが増えていきます。

神戸大学から生まれた涙1滴の技術が、より多くの人が乳がんのリスクを知り、受診につなげる日が近づいているのかもしれません。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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