株式会社U-MAP|繊維状の窒化アルミニウム単結晶で電子部品の熱を逃がす名古屋大学発の企業

株式会社U-MAP(ユーマップ)

U-MAP|研究領域=繊維状の窒化アルミ単結晶/強み=少ない添加量で熱を逃がす/将来性=パワー半導体と光通信へ拡大

企業紹介|U-MAPとは?

パワー半導体やLEDの発熱を逃がす材料として、注目を集める「Thermalnite」。U-MAPは、この「Thermalnite」を繊維状(ファイバー状)の窒化アルミニウム単結晶として実用化した、名古屋大学発のディープテック企業です。電子部品メーカーへ、放熱材料として提供しています。

キーワード「Thermalnite」(サーマルナイト)

「Thermalnite」は、窒化アルミニウム(AlN)の単結晶(原子の並びがそろった結晶)を繊維状に育てた放熱フィラー(樹脂に混ぜる粉末)です。樹脂やセラミックスに混ぜて熱の通り道を形成し、従来の球状フィラーより少ない添加量で高い熱伝導率を得られる点が特徴です。用途は放熱シートや接着剤、セラミックス基板へ広がります。

市場課題|電子部品の発熱が性能の壁になる

現状の放熱材料の課題|半導体の発熱で性能が落ちる/80%以上の充填で硬くもろくなる

半導体の発熱で性能が落ちる

電子機器が高性能になるほど、性能を左右する要因のひとつが半導体の発熱です。素子の温度が上がると電気的な損失が増え、動作の不安定や寿命の低下を招きます。EV(電気自動車)やデータセンターのように電力密度の高い用途では、熱を逃がしきれないと性能を引き出しにくくなります。

球状フィラーは高充填が必要

従来の球状フィラーで高い熱伝導率を得るには、80%以上の充填が必要とされてきました。樹脂そのものは熱を伝えにくく、放熱部材の性能は混ぜる放熱フィラーの量に左右されるためです。フィラーの割合が増えるほど材料は硬くもろくなり、複雑な形状への加工がしにくくなります。

フィラー同士の接点では熱が伝わりにくく、練り込む工程の負担も生じます。他にも、放熱部品が大きく重くなる制約熱膨張差による接合部の劣化、放熱性能と絶縁性(電気を通さない性質)の両立、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 放熱フィラー樹脂やセラミックスに混ぜて熱の通り道を形成する粉末状の材料。樹脂は熱を伝えにくいため、放熱部材の性能はフィラーの種類と量でほぼ決まる。

U-MAPの強み|ファイバー状のAlN単結晶

U-MAPが「Thermalnite」を開発|繊維が絡み合い熱の通り道に/単結晶を少し混ぜて熱と強度を両立

繊維状の単結晶が熱を運ぶ

球状のフィラーでは、粒子同士が点で触れ合うため、熱の通り道が途切れやすくなります。

「Thermalnite」は、1本の繊維がそのまま熱の通り道になる放熱フィラーです。窒化アルミニウム(AlN)の単結晶を繊維状に成長させた材料で、絶縁性を保ったまま金属アルミニウムに近い熱伝導率を持ちます。繊維は樹脂の中で互いに絡み合い、端どうしが触れ合って熱の道をつなぎます。粒のように接点が1点で終わらないため、少ない量でも熱の経路は途切れません。結果として、樹脂に混ぜる量を抑えたまま熱を逃がせます。

少量で放熱と強度を両立

粉体を高い割合で練り込む方法では、材料の粘度(流れにくさ)が上がり、薄く塗り広げる工程が難しくなります。

同社は、少量を加えるだけで放熱性と機械強度を同時に高める使い方を確立しました。従来品へ数%を加えると、10W/m・K(熱の伝わりやすさを表す単位)を超える熱伝導率が得られると発表されています。セラミックスにも応用が進み、割れにくさが増します。材料に入った繊維が、広がろうとするひび割れを橋渡しし、力を吸収するためです。高強度タイプの窒化アルミニウム基板は、200W/m・K以上を保ったまま、破壊靭性が一般的なAlN基板の約2倍に達したといわれています。

FrontJournalの解説
  • 破壊靭性材料に入った微小なひびが広がりにくいかを示す指標。値が大きいほど欠けや割れに強く、薄い基板や熱の上げ下げを繰り返す部材で重視される。

放熱材料の未来|パワー半導体と光通信

繊維状AlN単結晶が変える未来|AlN放熱基板が量産段階へ/EVのパワーモジュールへ/放熱設計の自由度が広がる

AlN放熱基板が量産段階へ

「Thermalnite」を用いた窒化アルミニウムの放熱基板は、すでに量産の段階に入っています。2025年7月には、国内の基板メーカーから量産認定を取得したと発表されました。量産する標準品の熱伝導率は170W/m・Kで、200W/m・Kと230W/m・Kの製品も開発が進められています。用途は、レーザーダイオードのサブマウント(素子を載せて熱を逃がす台座)や光通信用トランシーバ(光信号を送受信する部品)、LED照明、熱電モジュール(温度差から発電する部品)に広がっています。

パワーモジュールへの展開

次に見込まれるのは、EVや鉄道に使われるパワーモジュールへの展開です。同社は2024年11月に岡本硝子と資本業務提携を結び、4.5インチの窒化アルミニウム基板を月産3万枚規模で生産できる体制を整えました。パワー半導体は電力密度が高く、基板には熱伝導率と機械強度の両立が求められます。高強度の複合セラミックスは、この要求に応える材料として開発が進んでいます。

放熱設計の自由度向上を目指す

同社が目指すのは、材料の側から放熱設計の自由度を広げることです。フィラーを少量にとどめられれば、樹脂の柔らかさや成形のしやすさを保ったまま熱を逃がせる設計が可能です。放熱シートや接着剤、封止材のように、これまで熱の逃げ道になりにくかった部材も対象になります。電子機器の小型化と高出力化を同時に支える材料として、用途の拡大を目指しています。

会社概要|U-MAPの事業と沿革

名古屋大学の結晶研究から創業

U-MAPは、2016年12月に愛知県名古屋市で設立されました。創業の中心となったのは、名古屋大学で結晶材料を研究してきたメンバーです。窒化アルミニウムの単結晶を繊維状に育てる合成技術を、放熱材料として産業へ応用することを目的としています。代表取締役は西谷健治氏が務め、名古屋大学とは「Thermalnite」の合成プロセスに関する素材探索技術の開発を共同で進めています。

事業会社との連携で量産化

同社は、事業会社との連携を軸に量産体制を整えてきました。2024年11月には、光学部品メーカーの岡本硝子と資本業務提携を結んでいます。量産化までに要した期間は、発表によれば3年です。材料メーカーや部品メーカーなど100社以上へ、サンプル販売や複合材料の試作を行ってきたといわれています。

シリーズBで約7億円を調達

資金調達では、ベンチャーキャピタルと事業会社の双方から出資を受けてきました。2022年12月には、量産販売の開始に向けたシリーズB(製品を量産・実証していく段階の資金調達)で、投資家に新株を引き受けてもらう増資と、中小企業庁の研究開発支援制度「Go-Tech事業」などの助成金をあわせ、約7億円を調達しました。増資の引受先は、リアルテックファンド、京都大学イノベーションキャピタル、中京油脂、愛知キャピタルと、セイコーエプソンとグローバル・ブレインが設立したEP-GB投資事業有限責任組合です。調達した資金は、量産体制の構築に充てられています。

会社情報

会社名株式会社U-MAP(U-MAP Co.,Ltd.)
所在地愛知県名古屋市千種区不老町 Tokai Open Innovation Complex(TOIC)601
設立2016年12月12日
代表西谷健治(代表取締役)
資本金1,000万円(公式サイト記載・2026年9月時点)
調達シリーズBで約7億円を調達(2022年12月・第三者割当増資と中小企業庁Go-Tech事業などの助成金の合計)。増資の引受先はリアルテックファンド、京都大学イノベーションキャピタル、中京油脂、愛知キャピタル、EP-GB投資事業有限責任組合(セイコーエプソンとグローバル・ブレインが設立)
事業放熱材料の開発・製造。繊維状(ファイバー状)窒化アルミニウム単結晶「Thermalnite」と、その複合材料・AlN基板の提供
技術領域窒化アルミニウム単結晶、放熱フィラー、高熱伝導複合材料、AlNセラミックス基板
連携岡本硝子と資本業務提携(2024年11月)。名古屋大学と共同で素材探索技術を開発
URLhttps://umap-corp.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

は、電子機器の性能を静かに縛ってきました。半導体そのものの進化に比べ、その熱を逃がす材料の進化が語られる機会は少なかったように思います。そこへ「粒を詰め込む」のではなく「繊維を絡ませる」という発想を持ち込んだ点に、U-MAPの面白さがあります。

同社が手がけるのは、単に熱を伝える粉ではなく、少ない量で経路を形成するという設計思想そのものです。フィラーを減らせるほど、材料は柔らかさや成形のしやすさを取り戻せます。光通信の基板からEVのパワーモジュールまで、応用先が一気に広がっているのは、その思想が効いている証しでしょう。

名古屋大学の結晶研究から生まれた繊維が、電子機器の設計の前提を書き換える日が来るかもしれません。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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