2026.08.25 理化学研究所・高エネルギー加速器研究機構 元発表:2026.08.19

理研・KEKら、アルゴン同位体で新魔法数N=32の弱まりを実証

ニュース紹介

「アルゴン同位体の高精度質量測定で新魔法数の強さを解明」

理化学研究所仁科加速器科学研究センターのマルコ・ローゼンブッシュ研究員、和田道治名誉研究員、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所の石山博恒教授、渡邉裕教授らの共同研究グループは、49Arと50Arの質量を高精度で測定し、新しい魔法数N=32の強さがカルシウムに比べてアルゴンで弱まる傾向を発見したと発表しました。実験は理研仁科加速器科学研究センターのRIビームファクトリー(RIBF)で行われ、超伝導RIビーム生成分離装置(BigRIPS)で生成した高速の放射性同位体(RI)ビームをヘリウムガスセルで停止・冷却し、RFカーペットで引き出したうえで、多重反射型飛行時間測定式質量測定装置(MRTOF-MS)でイオンを数百回往復させて飛行時間を測ることで質量を決定したとしています。結果として、これまで測定例のなかった50Arの質量を初めて測定し、49Arの測定精度を従来の約250倍に向上させたと報告しています。得られたデータからは、新魔法数N=32の強さがカルシウムで最も強く、陽子数が20から離れるにつれて弱まる傾向が観測されたとしています。研究グループは、原子核構造の理解が進むとともに、宇宙での中性子捕獲反応の起こりやすさを左右し、重元素合成過程に影響を与える知見になると説明しています。成果は米国物理学会誌『Physical Review Letters』オンライン版(2026年8月6日付)に掲載されました。

出典:理化学研究所 2026年8月19日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260819_2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

原子核の中で陽子や中性子の数が特定の値になると、原子核が特に安定になることが知られています。この値を魔法数と呼び、2・8・20・28・50・82・126が古くから知られてきました。

近年、中性子を多く含む原子核では、これまで魔法数ではなかったN=32で同じような安定化が見えることが報告されており、元素の種類(陽子数)によって強さが変わるかどうかが調べられています。

①新しい魔法数はどこまで通用するか

カルシウム52(陽子数20・中性子数32)では、N=32が新しい魔法数として強く現れることが示されていました。ただ、陽子数が20から離れた元素でも同じように安定化するのか、それとも弱まっていくのかは十分に分かっていませんでした

魔法数の強さが陽子数でどう変化するかが分かれば、原子核を作っている核力の性質を、より広い範囲で確かめられます。

②アルゴン同位体を高精度で測る

研究グループは、理研のRIビームファクトリーで作った放射性のアルゴン同位体をヘリウムガスで冷やし、多重反射型飛行時間測定式質量測定装置(MRTOF-MS)でイオンを数百回往復させて飛行時間から質量を求めました。

この方法で50Arを初めて測定し、49Arは従来の約250倍の精度で測ったとしています。得られた質量からは、N=32の強さがカルシウムで最も強く、陽子数が20から離れるほど弱まる傾向が観測されたと報告しています。

編集部からひとこと

魔法数は「元素ごとに一定」ではなく、陽子数によって強弱が変わる。そう言えるためには、対象になる同位体を一つ一つ精度よく測って質量を出す必要があります。今回はその積み上げの一つで、原子核物理学の教科書の値が更新される類の報告です。中性子星でどう重元素が作られるかという宇宙側の議論にも接続します。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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