2026.07.31 東北大学・東京科学大学・名古屋工業大学 元発表:2026.07.29

東北大ら、MOFに光を当てた30フェムト秒間の変化を捉える(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「光で新しい秩序が生まれ、物質状態が変わる過程を観測 -金属―有機構造体(MOF)が拓く非平衡材料科学の新展開-」

東北大学金属材料研究所の宮坂等教授、東北大学大学院理学研究科の岩井伸一郎教授、東京科学大学理学院化学系のサミラン・バヌ大学院生(研究当時)と石川忠彦助教、名古屋工業大学物理工学類の高橋聡教授らの研究グループは、金属―有機構造体(MOF)に光を照射した直後の電子状態の変化を追跡し、約30フェムト秒で光誘起状態が形成される過程を観測した。測定には6フェムト秒の超短パルス光を用いた時間分解反射分光を使用し、反射スペクトルが約30フェムト秒のあいだに急速に変化して新しい吸収成分が形成されることを確認した。理論解析と合わせて、結合秩序波を伴う過渡的な電子状態を経由して光誘起状態が形成される過程を提案し、光によって極性状態が生じる可能性を示した。成果は2026年7月22日にPhysical Review Lettersに掲載された。DOIは10.1103/x43y-61c1。

出典:東北大学 2026年7月29日 プレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2026/07/item20260729-04-mof.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

金属―有機構造体(MOF)は、金属イオンと有機分子を組み合わせて作る多孔質の結晶材料です。内部にすき間を持つ構造から、ガスの吸着・分離や触媒の担体として研究が進んできました。近年はこれに光応答性を組み合わせる方向が加わり、東北大学らは2023年にもMOF結晶で光照射による超高速の構造変化を発見したと発表しています。

①30フェムト秒という時間スケールの意味

30フェムト秒は1秒の1000兆分の30にあたる時間で、この間に光が進む距離は約9マイクロメートルです。原子が動くよりも短い時間帯にあたるため、この領域を捉えるには測定に使う光のパルス自体をさらに短くする必要があります。研究グループは6フェムト秒の超短パルス光を用いた時間分解反射分光でこの時間帯を追跡し、反射スペクトルに新しい吸収成分が形成される過程を確認しました。従来は結果として現れた状態を見ることが中心でしたが、今回は状態が生まれる途中経過に測定が届いています。

②光で機能を切り替える材料の設計に向けて

研究グループは理論解析と合わせて、結合秩序波を伴う過渡的な電子状態を経由して光誘起状態が形成されるという過程を提案し、光によって極性状態が生じる可能性を示しました。極性状態は強誘電性などの機能につながる性質で、光でこれを切り替えられれば、電極を接触させずに材料の性質を制御する道が開けます。MOFはガスセンサーや触媒としての用途が先行して研究されてきた材料で、そこに光応答性を組み込めれば、遠隔で選択性や活性を制御する使い方も想定されます。今回の成果は素材の設計指針にあたる段階で、デバイスとしての実装はこれからです。

編集部からひとこと

フェムト秒の話は日常の感覚から遠いのですが、要は「変化した後」ではなく「変化している最中」が見えるようになった、という成果です。材料開発では、結果だけ分かっていても再現や改良の手がかりが少ないという場面がよくあります。途中経過が分かると、どこをいじれば狙った状態に持ち込めるかが見えてきます。MOFは日本の研究層が厚い分野なので、基礎の積み上げが素直に効いてくる領域だと思います。

プレスリリース原文を読む ↗

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら