2026.08.19 科学技術振興機構(JST) 元発表:2026.08.19

京都大学、絶縁性フェリ磁性体で相転移の平均場臨界性を初実証

ニュース紹介

「遠くまで届く磁気の力が相転移を支配~絶縁性フェリ磁性体で『平均場臨界性』を初めて実証~」

京都大学 複合原子力科学研究所の南部雄亮特定教授らの国際共同研究グループは、メリライト型酸化物Eu2MnSi2O7において、絶縁性フェリ磁性体では初めて、長距離の磁気双極子-双極子相互作用が磁気相転移付近の温度変化を決定し、平均場理論に近い臨界現象を生み出すことを明らかにしました。研究グループは磁化測定と中性子粉末回折を用いて、約10.6ケルビン付近の転移温度における臨界指数β、γ、δを求め、いずれも平均場理論の予測値に近い値が得られたと報告しています。短距離の交換相互作用がフェリ磁性秩序そのものを安定化する一方、より遠くまで届く弱い双極子相互作用が臨界点近傍の普遍的な振る舞いを決めるという役割分担が示されました。研究成果は米国物理学会の国際学術誌「Physical Review Letters」に2026年8月12日(現地時間)付で掲載されました。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年8月19日 プレスリリース(掲載誌:Physical Review Letters/DOI: 10.1103/5ftk-7qyg)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260819-2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

物質を冷やしていくと、磁石のように整った磁性の状態にそろう温度があります。この切り替わりの点を「相転移」と呼び、温度に対する物理量のふるまいは特別な数値の組(臨界指数)で特徴づけられます。臨界指数は物質の細部によらず、相互作用の範囲や次元だけで決まる普遍的な値になることが知られています。

その代表的な理論の1つが「平均場理論」です。粒子1つが周囲全体からならされた磁場を感じるとみなす簡便な描像で、相互作用が遠くまで届くときに現実の物質でも成り立つと予想されてきました。

①「双極子相互作用」が相転移の主役になる仕組み

磁性体の中では、原子が持つ小さな磁石(スピン)が並んで秩序を作ります。並び方を決めるのは、隣り合った原子の間で強く働く交換相互作用と、離れた原子どうしにも小さく届く磁気双極子-双極子相互作用です。

研究グループは、絶縁体で交換相互作用が比較的弱いメリライト型酸化物Eu2MnSi2O7に着目しました。この物質では、遠くまで届く弱い双極子相互作用が相対的に効きやすくなります。実際の測定から、フェリ磁性の秩序そのものは交換相互作用が支え、相転移点のごく近くのふるまいは双極子相互作用が支配するという役割分担が示されました。

②平均場理論に近い臨界指数を得た

研究グループは、転移温度付近の磁化を精密に測り、温度・磁場依存性から臨界指数を求めました。得られた指数の組は、平均場理論が予測する値に近く、中性子粉末回折の解析結果とも整合していました。

これまで双極子相互作用による平均場臨界性は主に強磁性体で知られてきました。今回は、複数の磁性副格子を持つフェリ磁性体でも同じ普遍性が成り立つことを実験的に示した結果で、磁気相転移の普遍性の理解を広げるものと位置づけられています。

編集部からひとこと

今回の成果は基礎物理の実証であり、発表内容に具体的な応用製品への言及はありません。ただ、相転移点の近くのふるまいがどの相互作用で決まるかは、磁性材料の設計を考える上で共通の土台になる知見です。詳細な実験データや解析条件は、JSTの公式ページおよびPhysical Review Letters掲載論文をご参照ください。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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