2026.07.23 理化学研究所・東京大学 元発表:2026.07.21

理研・東大ら、ミトコンドリアのたんぱく質合成を終わらせる仕組みを解明(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「ミトコンドリア翻訳の終わりよければ全て良し」

理化学研究所 開拓研究所 岩崎RNAシステム生化学研究室の岩崎信太郎主任研究員、脇川大誠特別研究員ら、眞貝細胞記憶研究室の眞貝洋一主任研究員ら、東京大学大学院理学系研究科の伊藤弓弦准教授らの研究グループは、ミトコンドリア内でのたんぱく質合成(翻訳)の終結、リボソームの再利用・再開始、品質管理の過程を1コドン分解能で明らかにしたと発表した。終結因子mtRF1Lは4種類全ての終止コドン(AGA、AGG、UAA、UAG)を認識する万能型であり、mtRF1は非標準的な終止コドン(AGA、AGG)に特化し、フレームシフトによって生じた「フレーム外」翻訳の終結に働くことを示した。またリサイクリング因子mtRRFと開始因子mtIF3が連続した遺伝子の翻訳を支え、救出因子ICT1、mtRF-R、mtRES1が翻訳開始直後に停滞したリボソームを救出することを明らかにした。ヒトのエネルギー代謝機構の理解や、ミトコンドリア病、加齢に伴うエネルギー代謝機能不全の理解に貢献するとしている。研究成果は科学誌「Nature Communications」のオンライン版(7月21日付)に掲載された。

出典:理化学研究所 2026年7月21日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260721_3/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーをつくり出す「発電所」にあたる小器官です。ミトコンドリアは細胞本体とは別に独自のDNAを持っていて、その情報をもとに自前でたんぱく質を合成しています。この合成の作業を翻訳と呼び、リボソームという分子機械がDNAから写し取られた設計図(mRNA)を読み取りながらたんぱく質を組み立てます。

翻訳では「作り始め」だけでなく「作り終わり」も正確でなければなりません。終わり方を間違えると、不完全なたんぱく質ができたり、リボソームが途中で動けなくなったりします。今回の研究は、この「終わり方」を担う分子の役割分担を細かく明らかにしたものです。

①終止コドンを読み分ける2種類の終結因子

翻訳は、mRNA上の「ここで終わり」を示す終止コドンという合図で終わります。研究グループは、ミトコンドリアの2種類の終結因子が役割を分けていることを示しました。mtRF1Lは4種類すべての終止コドン(AGA、AGG、UAA、UAG)を認識する万能型で、通常の終結を担います。一方のmtRF1は、標準的でない終止コドン(AGA、AGG)に特化し、読み枠がずれてしまった「フレーム外」の翻訳を終わらせる働きを持っていました。合図の種類に応じて担当を分ける仕組みが見えてきたことになります。

②停滞したリボソームを救い出す仕組み

研究グループは、翻訳を終えたあとの後片付けや、うまくいかなかったときの品質管理の仕組みも明らかにしました。リサイクリング因子mtRRFと開始因子mtIF3は、複数の遺伝子が連なったmRNA上で次々と翻訳を進めるのを支えます。さらに救出因子のICT1、mtRF-R、mtRES1は、翻訳を始めた直後に動けなくなって止まってしまったリボソームを救い出す役割を担っていました。これらの過程を1コドン単位という細かい分解能でとらえた点が今回の特徴です。

編集部からひとこと

「終わりよければ全て良し」というタイトルどおり、たんぱく質づくりは終わり方まで正確でなければならない、という基礎生物学の面白さが伝わる成果でした。ミトコンドリアの翻訳異常は、ミトコンドリア病や加齢に伴う体調の変化と関わるとされ、その根っこにある分子の役割分担が細かく分かってきたことは、将来の病気の理解につながる土台になります。派手さはありませんが、生命の「発電所」がどう回っているかを一段深く見せてくれる研究だと感じました。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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