2026.08.04 理化学研究所 元発表:2026.08.03

理研、量子もつれの境界則をボーズ量子場まで拡張する理論を証明(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「極低温の量子もつれの広がり方に新しい統一理論」

理化学研究所量子コンピュータ研究センター量子複雑性解析理研白眉研究チームのキム・ドンフン基礎科学特別研究員と桑原知剛理研白眉研究チームリーダーは、量子もつれの「境界則」が成り立つ条件を広げる理論を示した。従来、境界則は「近くの粒子同士しか強く影響しないこと」と「エネルギーの大きさに限界があること」という2つの条件の下でのみ証明されており、長距離相互作用やエネルギーの上限を持たないボーズ量子場への適用は未解決の課題だった。研究チームは、これらの制限条件を外しても、より一般的な条件の下で境界則が成り立つことを理論的に証明した。対象としたのは、スカラー量子場の代表例であるφ4理論、冷却原子系の理論モデルであるボーズ・ハバード模型、および1次元ボーズ量子場である。あわせて、複雑な量子状態が比較的少ない情報量で効率よく近似できることも示唆された。成果は2026年7月27日付でNature Communicationsのオンライン版に掲載された。論文タイトルは「Entanglement area law in interacting bosons from the Bose-Hubbard model to φ4 theory and beyond」、DOIは10.1038/s41467-026-72404-w。今後はボーズ量子場に対する精度保証付き数値計算法の確立と、1次元から2次元・3次元への理論拡張が期待される。

出典:理化学研究所 2026年8月3日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260803_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

多数の粒子が絡み合った量子系をコンピューターで計算しようとすると、必要な情報量が粒子の数に対して急激に増えます。それでも実際に計算できる場合があるのは、自然界で現れる状態の量子もつれが、系を2つに分けたときの境界の大きさに応じた量にとどまるためです。これを境界則(面積則)と呼びます。テンソルネットワークのような手法が効率よく働く根拠にもなっており、量子多体系の数値計算を支える理論的な土台です。

①使える条件が広がったことの意味

これまで境界則が証明されていたのは、近くの粒子同士しか強く影響し合わないこと、そしてエネルギーの大きさに上限があること、という2つの条件を満たす場合でした。実際に扱いたい系はこの枠に収まらないことがあります。とくにボーズ粒子の系は1か所に多数の粒子が集まれるためエネルギーに上限がなく、証明の外側にありました。今回の研究はこの2つの制限を外し、より一般的な条件で境界則が成り立つことを示しています。対象にはφ4理論、ボーズ・ハバード模型、1次元ボーズ量子場が含まれます。

②計算できる保証を与える方向の成果

この種の理論が実務に効いてくるのは、数値計算の信頼性を通じてです。境界則が成り立つと分かっている系では、状態を少ない情報量で近似してよい理由が説明できます。逆に成り立つかどうか分からない系では、計算結果がどこまで正しいかを主張しにくくなります。研究チームは今後の展開として、ボーズ量子場に対する精度保証付きの数値計算法の確立と、1次元から2次元・3次元への理論拡張を挙げています。冷却原子を使った量子シミュレーションや素粒子物理の格子計算など、ボーズ粒子系を扱う分野は広く、計算の裏づけが増えることの影響は小さくありません。

編集部からひとこと

理論の証明という地味に見える成果ですが、意味するところは計算の保証です。量子多体系の計算は近似の連続で、どこまで信じてよいかが常に問題になります。境界則が成り立つ範囲が広がることは、その問いに答えられる系が増えることを意味します。今回は1次元が対象で、2次元・3次元は今後の課題とされています。量子コンピューター研究センターから理論の論文が出ている点も、実機開発と理論解析が並走している様子が見えて興味深いところでした。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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