Quantum Zero「ダイヤモンド量子センサ」を研究|東京科学大学発ベンチャーのサムネイル

株式会社Quantum Zero(クアンタムゼロ)

Quantum Zero「ダイヤモンド量子センサ」を研究|研究領域=ダイヤモンドで磁場や温度を測る/強み=室温のままで高い感度を保つ/将来性=電池や設備の検査へ応用見込み

企業紹介|株式会社Quantum Zeroとは?

これまで測れなかった変化を捉える計測技術として、注目を集める「ダイヤモンド量子センサ」。株式会社Quantum Zeroは、その社会実装を目指す、東京科学大学発の量子技術系ディープテック企業です。センサ装置の開発と量子技術の教育を、産業界や研究機関へ提供しています。

キーワード「ダイヤモンド量子センサ」

ダイヤモンド量子センサ」は、ダイヤモンドの結晶にある欠陥に閉じ込められた電子スピン(電子が持つ磁石の性質)を用いて、周囲の環境を読み取る計測技術です。特徴は、室温のまま、磁場や温度を高い感度で測れる点にあります。自動車や工場の設備、医療の検査といった現場で、内部を分解せずに状態を捉えられます。

市場課題|微弱な変化は捉えにくい

現状の磁気計測の課題|現状は、冷却装置が要り現場で測りにくい/設備の異常は予兆が見えにくい/微弱な磁場は冷却して測る

異常の予兆は掴みにくい

工場の設備や電池、人の体の内部で起きている変化は、外から見ただけでは把握しにくい状態です。こうした変化は、電流に伴う微弱な磁場や、わずかな温度の差として現れます。予兆を掴めないまま運転を続けると、故障や事故が起きてから対処することになり、損失が大きくなりかねません。

高い感度の計測は冷却が必要

微弱な磁場を高い感度で測る装置は、冷却装置を伴います。代表的なSQUID(超伝導量子干渉素子)は、超伝導の状態を保つために極低温まで冷やす仕組みを必要とするからです。冷却装置を抱えるぶん全体が大きくなり、高い感度の計測は設備の整った施設に限られがちです。

他にも、測るたびに基準を取り直す校正の手間、周囲の温度や振動で値がぶれる環境への弱さ、磁場と温度を別々の装置で測る計測の分断、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • SQUID超伝導量子干渉素子の略で、超伝導の輪に生じる干渉を利用して磁場を測る素子を指す。極めて弱い磁場まで捉えられる一方、超伝導の状態を保つため、装置に冷却の仕組みを伴う。

Quantum Zeroの強み|室温で高感度に測る

Quantum Zeroが「ダイヤモンド量子センサ」を開発|今後は、冷却せず対象のそばで計測が可能に/磁場で共鳴の周波数が変わる/室温のまま電池のそばで測れる

電子スピンで磁場を読む

従来の磁気センサは、磁場の計測に特化した構成が多く、磁場と温度を一つの素子でまとめて捉えるのは容易ではありませんでした。

同社が製品化を進めるのは、ダイヤモンドの結晶に含まれるNV中心(結晶中の窒素と空孔の対)の電子スピンで磁場を読み取る計測技術です。この欠陥に緑色のレーザー光を当てると赤い蛍光が返り、その強さは電子スピンの状態によって変わります。外部の磁場に応じて電子スピンのエネルギー差が動くため、当てるマイクロ波の周波数を変えながら蛍光が弱まる点を探すと、磁場の強さが求められます。一つの素子で捉えられるのは磁場だけではありません。温度や圧力も、共鳴の周波数がそれぞれ別の要因で動くことを利用して測れます。

冷却が不要で対象に近づける

センサと測りたい対象の距離が離れるほど、届く信号は弱まります。

NV中心は室温のまま電子スピンを操作できるため、センサ本体に冷却装置が要りません。同社は、この性質を活かして装置を小型にまとめ、対象のすぐ近くへ置ける構成の製品化を進めています。小型にまとまるぶん、測りたい機器の内部や生産ラインの上など、置き場所の自由度も高まります。素子であるダイヤモンドは硬く熱にも強いため、工場や車載のような厳しい環境でも動作させやすい構成です。同社は、感度と測定レンジ(測れる範囲の広さ)、空間分解能(区別できる細かさ)の両立を目指す計測技術として開発を進めています。

FrontJournalの解説
  • NV中心ダイヤモンドの結晶で、炭素原子が窒素に置き換わり、その隣が空孔になった欠陥を指す。閉じ込められた電子のスピンを光とマイクロ波で操作でき、室温でも量子の状態を保ちやすい。

ダイヤモンド量子センサの未来|産業への応用

室温で測る量子センサが変える未来|この技術が、産業の計測を広げていく/実機を使う量子の講義と実習が稼働/電池やモーターを分解せず点検/生体磁気の計測が各国で進む

実機で学ぶ教育の場が稼働

同社の量子センサは、技術を学ぶ場としてすでに使われています。同社が2023年度から担当しているのは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)における量子センサの教育事業です。この事業で行うのは、量子センサの実機であるテストベッド(試験用の装置一式)を使った講義と実習です。テストベッドは量子科学技術研究開発機構、東京科学大学、東北大学に置かれています。

電池やモーターを分解せず点検

短期に見込まれるのは、検査や点検への応用です。電流は必ず磁場を伴うため、電池の充電の状態や配線を流れる電流、モーターの動きは、外から磁場を測ることで推し量れます。装置を止めて分解する必要がなく、運転したまま状態を掴む使い方が見込まれます。同社が主な応用先に挙げるのは、自動車、医療、工場インフラです。

測れる対象の拡大を目指す

同社が掲げるビジョンは、「量子センサで世の中のすべての情報にアクセス可能にすること」です。医療の領域では、心臓や脳が発する生体磁気を、冷却の装置なしで体の近くから捉える研究が各国で進められています。同社の視野に入るのは、検査、防衛、エネルギー、モビリティといった分野です。測れる対象を広げ、人が捉えられる情報の範囲そのものを押し広げることを目指しています。

会社概要|Quantum Zeroの事業内容

東京科学大学の研究から創業

株式会社Quantum Zeroは、2022年12月に東京都で設立されました。創業したのは、東京科学大学(旧・東京工業大学)工学院電気電子系の博士課程に在籍していた藤崎伊久哉氏です。同氏は学部から大学院にかけてダイヤモンド量子センサの高感度化の研究に取り組み、その開発の知見をもとに在学中に創業しました。同社は、固体量子センサを研究する波多野・岩崎研究室から生まれた初のスタートアップです。

認定ベンチャー第1号に選定

2025年1月、同社は東京科学大学の認定ベンチャーの第1号として認定されました。大学や公的機関との連携は、その後も広がっています。2026年8月には「令和7年度TOKYO戦略的イノベーション促進事業」に採択され、同じ月にTECH HUB YOKOHAMA(横浜市の技術系スタートアップ支援拠点)の「成長加速化伴走支援プログラム」でも第3期スタートアップに選ばれました。

ATACから追加の出資を受ける

同社は、先端技術の事業化と投資を手がける株式会社先端技術共創機構(ATAC)から出資を受けています。2026年8月には追加の出資を実施し、あわせてATACの代表取締役である古澤利成氏が同社の取締役に就任しました。資本と経営の両面で支援を受ける体制を整え、製品化開発を進めています。

会社情報

会社名株式会社Quantum Zero(Quantum Zero Inc.)
所在地東京都文京区本郷6-25-14 宗文館ビル3階
設立2022年12月1日
代表代表取締役CEO:藤崎 伊久哉(博士(工学))。取締役:古澤 利成
資本金10,240,000円(2025年1月時点)
調達株式会社先端技術共創機構(ATAC)。2026年8月に追加出資
事業ダイヤモンド量子センサのハードウェア開発。量子技術の教育事業
技術領域ダイヤモンド量子センサ、NV中心、電子スピン、量子センシング、磁気計測
連携東京科学大学(認定ベンチャー第1号)。波多野・岩崎研究室
採択令和7年度TOKYO戦略的イノベーション促進事業(2026年8月)。TECH HUB YOKOHAMA 成長加速化伴走支援プログラム第3期(2026年8月)。内閣府SIP 量子センサ教育事業(2023年度から)
URLhttps://www.qzero.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

計測の歴史は、感度を上げるための工夫の積み重ねでした。弱い信号を捉えるほど装置は大がかりになり、冷却や遮蔽の設備を抱えて実験室から出にくくなります。Quantum Zeroが取り組む「ダイヤモンド量子センサ」は、その前提を組み替える試みだといえます。

面白いのは、主役が結晶の欠陥である点です。本来は不純物として避けられてきた窒素と空孔の組み合わせが、光とマイクロ波で操作できる量子の素子になります。単なる高感度センサではなく、室温で現場に持ち込める計測の入口という点に、この技術の価値の核心があります。

見えなかったものが測れるようになったとき、産業のどこが最初に変わるのか。今後の展開を注視したいところです。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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