2026.08.10 理化学研究所 元発表:2026.08.07

対称性が破れた量子状態、変換効率の理論限界を九大・理研らが証明

ニュース紹介

「対称性の破れを統一的に測る指標を確立」

九州大学の山口幸司 特任助教、田島裕康 准教授、理化学研究所 量子コンピュータ研究センターの三橋洋亮 基礎科学特別研究員、NTT株式会社 コンピュータ&データサイエンス研究所の設楽智洋 研究主任らの研究グループは、対称性が破れた量子状態を別の状態へ変換する問題について、量子幾何テンソルが変換効率の理論限界を定めることを証明し、最適な変換手順を構成した。発表では、超高精度な量子時計や量子ジャイロスコープなどの量子センサー技術や、量子熱機関を含むさまざまな物理過程への応用が挙げられている。原論文のDOIは 10.1103/qqf6-x85b。

出典:理化学研究所(九州大学・NTT との共同研究) 2026年8月7日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260807_4/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

物理では、対称性という言葉がよく出てきます。ある操作をしても見た目が変わらない性質のことで、たとえば完全な球はどう回しても同じに見えます。この対称性が失われた状態を、対称性が破れた状態と呼びます。磁石が特定の向きに揃うのも、その一例です。量子の世界では、こうして対称性が破れた状態そのものが資源として扱われます。時計やジャイロスコープのように、向きや時間の基準を保つ装置は、基準となる状態をどれだけ良い状態に保てるかで精度が決まるためです。ではその良さをどう測るのか、という問いがこの研究の出発点にあります。

①量子幾何テンソルが限界を決める

研究グループが示したのは、量子幾何テンソルという量が、状態変換の効率の理論限界を定めるという結果です。量子幾何テンソルは、量子状態がパラメータの変化に対してどれだけ変わるかを表す量で、状態どうしの近さを幾何学的に測る道具として使われてきました。今回はこれを、ある対称性の破れた状態を別の状態へ変換するときに、どこまで効率よく変換できるかという問題に結びつけています。限界が分かるだけでなく、その限界に到達する最適な変換手順まで構成した点が要点です。どこまでできるかと、どうすればそこに届くかが揃っている形になります。

②量子センサーの設計指針になる

発表で応用先として挙げられているのは、超高精度な量子時計や量子ジャイロスコープといった量子センサー技術です。これらの装置は、基準となる量子状態を作り、それを保ち、必要に応じて別の状態へ移しながら測定を続けます。その各段階でどれだけ資源が失われるかが精度に効いてきます。変換効率に理論的な上限があると分かれば、装置の性能がどこまで伸ばせるのか、いま何が足りないのかを見積もれるようになります。発表では量子熱機関を含むさまざまな物理過程への応用も挙げられており、特定の装置に限らない一般的な指標として位置づけられています。

編集部からひとこと

対称性の破れという言葉は物理の各分野に散らばっていて、扱う対象ごとに別々の測り方がされてきた印象があります。それを統一的に測る指標を置いたという点が、この研究の主張の中心だと読みました。理論限界を示す研究は、すぐ何かの製品になるわけではありません。ただ、上限が分かっていない状態で装置を改良し続けるのと、上限を知ったうえで残りを詰めるのとでは、開発の進め方がかなり変わります。九州大学・理研・NTTという組み合わせも、基礎理論が通信・計算の実務側と地続きであることを示しています。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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