2026.07.08
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科学技術振興機構(JST)
東京理科大が急冷不要の強磁性準結晶を実現、磁性研究に新たな試料(FrontJournal解説)
ニュース紹介
「世界初、超急冷を必要としない強磁性正20面体準結晶を実現~高品質試料の実現で準結晶磁性研究が新たな段階へ~」
東京理科大学 先進工学部マテリアル創成工学科の田村隆治教授らの共同研究グループは、機械学習を活用して候補物質を探索し、Au-Cu-Al-In-R(R=Gd、Tb、Dy:希土類元素)の5元系合金による3種類の新たな正20面体準結晶を、通常のアーク溶解と熱処理により作製することに成功しました。従来こうした準結晶の合成には急冷処理が必要とされてきましたが、今回は急冷を経ずに合成し、希土類元素の種類による磁気臨界挙動の違いを系統的に定量分析しています。
出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月8日 プレスリリース(掲載誌:Journal of the American Chemical Society/DOI: 10.1021/jacs.6c03748)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260708-3/index.html
FrontJournalの解説
準結晶とはどんな物質か
今回の研究テーマである「準結晶(じゅんけっしょう)」は、原子が規則的に並びながらも通常の結晶のような周期的な繰り返しを持たない、特殊な原子配列を持つ物質です。1984年にダニエル・シェヒトマン博士が発見し、この功績で2011年にノーベル化学賞を受賞したことでも知られています。準結晶の多くは非磁性(磁石の性質を持たない)ですが、強磁性(磁石として振る舞う性質)を示す準結晶は合成・研究の難度が高く、試料の質と量の確保が長年の課題でした。
①急冷処理が不要になったことの意味
準結晶は本来できにくい構造のため、従来の合成では溶融した金属を急速に冷やす「急冷」処理によって、通常の結晶ができる前に準結晶の状態を強制的に固定する手法が使われてきました。急冷法は試料が薄片状・微小になりやすく、磁気特性を精密に測定するための大きく良質な試料を得ることが難しいという制約がありました。今回の研究グループは、通常のアーク溶解と熱処理という比較的一般的な手法だけで正20面体準結晶を合成できることを示しており、より大きく均質な試料を得やすくなる可能性があります。
②機械学習による候補物質の探索
研究グループは、Au-Cu-Al-In-R(R=希土類元素)という5元系という多くの元素の組み合わせからなる合金系の中から、機械学習を用いて強磁性準結晶になりうる候補組成を探索しました。その結果、希土類元素としてGd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)を用いた3種類の新たな正20面体準結晶を実際に合成し、希土類元素の違いによって磁気的な振る舞い(磁気臨界挙動)がどう系統的に変化するかを定量的に分析しています。
編集部からひとこと
準結晶の強磁性研究はまだ基礎科学の段階にあり、今回の成果も応用や製品化を直接うたうものではありません。ただし、急冷という制約の大きい手法に頼らず良質な試料を得られる道が示されたことは、今後の準結晶磁性研究の土台を広げるものと考えられます。詳細な実験データ・論文情報はJST公式ページおよびJournal of the American Chemical Societyの掲載論文をご参照ください。