2026.08.10 理化学研究所 元発表:2026.08.08

ネコ813頭のゲノム解析、ヒト共通の遺伝性腫瘍バリアントを同定

ニュース紹介

「ネコにもヒトと共通する遺伝性腫瘍の可能性」

理化学研究所 生命医科学研究センターの池田凡子 特別研究員、桃沢幸秀 チームディレクターらは、東京大学大学院農学生命科学研究科の西村亮平 教授(研究当時)、富安博隆 准教授らと共同で、813頭のネコを対象に、マルチプレックス式ターゲットシークエンス法を用いて27種類の遺伝性腫瘍関連候補遺伝子を解析した。その結果、13個の病的バリアントを同定し、18頭から検出した。うち7頭ではリンパ腫・乳がん・骨がんなどが確認された。対象となった遺伝子にはBRCA2、TP53、ATM、MSH2、MSH6が含まれる。発表では、ネコのがんについて遺伝的背景が発症リスクや発症年齢・がん種に及ぼす影響が不明であったとされ、本成果はネコの精密がん医療の基盤となるほか、ヒトの遺伝性腫瘍の発症機序の理解や新しい治療法の開発にもつながることが期待されるとしている。原論文は『Scientific Reports』オンライン版、DOIは 10.1038/s41598-026-61718-w。

出典:理化学研究所(東京大学大学院農学生命科学研究科との共同研究) 2026年8月8日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260808_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

がんの一部は、生まれ持った遺伝子の変化が発症しやすさに関わっています。これを遺伝性腫瘍と呼びます。ヒトではBRCA1/BRCA2が乳がんや卵巣がんのリスクに関わることが広く知られ、検査結果にもとづいて検診の頻度を変えたり、予防的な処置を選んだりする医療が実際に行われています。同じ考え方を動物に当てはめられるかは、これまで十分に調べられてきませんでした。ネコは飼育頭数が多く、寿命が延びたぶんがんで亡くなる例も増えています。どのネコがどのがんになりやすいかを事前に知る手がかりがあれば、検診の設計が変わります。

①27遺伝子を813頭でまとめて調べる

今回の研究では、マルチプレックス式ターゲットシークエンス法という手法が使われました。ゲノム全体を読むのではなく、あらかじめ狙いを定めた領域だけを、多数の検体について同時に読む方法です。対象は遺伝性腫瘍に関わる候補遺伝子27種類で、813頭のネコを解析しました。その結果、13個の病的バリアント(病気につながると判断された遺伝子の変化)が同定され、18頭から検出されました。さらにそのうち7頭では、実際にリンパ腫・乳がん・骨がんなどが確認されています。狙いを絞ることで、多数の個体を現実的なコストで調べられる点がこの手法の利点です。

②ヒトで知られる遺伝子が並んでいる

同定された遺伝子には、BRCA2、TP53、ATM、MSH2、MSH6が含まれます。いずれもヒトのがん研究で長く調べられてきた遺伝子で、TP53は細胞の異常を検知して増殖を止める働き、MSH2とMSH6はDNAの複製ミスを修復する働きに関わります。ヒトと同じ遺伝子がネコでもがんに関わっているとすれば、二つの方向に意味があります。一つは獣医療側で、リスクの高い個体を早く見つける精密がん医療の基盤になること。もう一つはヒト側で、同じ仕組みを持つ動物での知見が、発症の仕組みの理解や治療法の開発に役立つ可能性です。発表でも、この両方が期待されるとされています。

編集部からひとこと

ペットのがんの話として読み始めましたが、ヒトの研究にも返ってくる構図が印象に残りました。ネコは実験のために集められた個体ではなく、家庭で暮らしている動物です。そこから813頭ぶんのデータが集まっていること自体、動物医療の記録が蓄積されてきた結果だと言えます。ヒトで確立した遺伝子検査の考え方が動物側へ広がり、その結果がまたヒトに戻る。どちらか一方の分野の話にならない点が、この研究の位置づけを分かりにくくもし、面白くもしています。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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