STマイクロエレクトロニクス、耐量子暗号対応のセキュア・モバイルチップ「ST54M」を発表
要約
半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクスは、耐量子コンピュータ暗号(PQC)処理のハードウェア回路を搭載したセキュア・モバイルチップ「ST54M」を発表しました。NFCコントローラ、セキュア・エレメントIC、eSIM機能を1つのシングルダイに集積し、PQCアルゴリズムのML-KEMとML-DSAをハードウェアで処理します。国際規格Common Criteria 2022を基にした欧州連合のICT製品向けサイバーセキュリティ認証制度EUCCに準拠する予定で、2026年7月にEMVCo認証取得と量産を目標としています。現在は顧客向けにサンプル提供中です。
発表のポイント
耐量子暗号(PQC)を処理するハードウェア回路を搭載
ST54Mは、米国NIST(国立標準技術研究所)が標準化したPQCアルゴリズムのML-KEM(鍵カプセル化)とML-DSA(デジタル署名)をハードウェアで処理する回路を搭載しています。既存のハイブリッド暗号アプローチから、完全な耐量子暗号への移行過渡期をサポートする設計です。サイドチャネル攻撃やフォールトインジェクション攻撃(故障注入攻撃)からの保護にも配慮されています。
NFC、セキュア・エレメント、eSIMをシングルダイに集積
NFCコントローラ、セキュアアプリケーション用のセキュア・エレメントIC、eSIM機能とNFC規格準拠機能を1つのシリコンダイに集積した最先端のシングルダイソリューションです。用途は非接触型決済、交通機関の電子チケット、入退出管理、デジタル身分証明書、運転免許証、デジタルカーキーなどを想定しています。強化されたRFフロントエンドにより、モバイルPOSやワイヤレス充電のユースケースにも対応します。
EUCC準拠・2026年7月にEMVCo認証取得と量産を目標
Common Criteria 2022を基にしたEU域内のICT製品向けサイバーセキュリティ認証制度「EUCC」に準拠する予定で、決済分野の国際認証EMVCoの取得は2026年7月を目標としています。現在は顧客向けにサンプル提供中で、量産開始も2026年7月を目標としています。顧客側の耐量子暗号対応製品を、業界の要求時期に向けて準備できる時間を確保する意図があります。
STマイクロエレクトロニクスについて
STマイクロエレクトロニクスは、約49,000名の従業員を擁する世界的な総合半導体メーカーです。マイクロコントローラ、パワーマネジメント、センサ、コネクテッド・セキュリティ製品などを、自動車、産業、コンシューマ、モバイル分野に幅広く提供しています。日本法人はSTマイクロエレクトロニクス株式会社(東京都港区)。
FrontJournalからひとこと
耐量子暗号は、将来の量子コンピュータによる公開鍵暗号の解読リスクに備える暗号方式です。NISTは2024年にML-KEMとML-DSAを含むPQC標準の初版を確定しており、ハードウェア実装を伴うチップは各社が競って開発している段階です。ST54MのようなNFC・SIM統合型の量子耐性チップは、スマートフォンや車載鍵、身分証明などの分野で、既存の暗号方式から段階的にPQCへ移行するための実用的な選択肢の一つとなります。認証取得と量産のスケジュール、他社チップとの実装差異、モバイル端末メーカーの採用動向が今後の焦点になります。
