2026.08.08
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東京大学・理化学研究所・日本電子・科学技術振興機構(JST)
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元発表:2026.08.06
東大・理研ら、原子流で休まず時を測る光格子時計へ1.2Hz分光を実証
ニュース紹介
「共同発表:原子を流しながら「休まず時を測る」光格子時計へ~連続する原子の流れから1.2ヘルツ幅の分光を実証~」
東京大学大学院工学系研究科の西田光輝 大学院生、竹内亮人 大学院生(研究当時)、香取秀俊 教授(東京大学、兼:理化学研究所光量子工学研究センター チームディレクター)らの研究グループは、日本電子株式会社と共同で、移動光格子を「原子のベルトコンベヤー」として使い、極低温ストロンチウム原子を連続的に供給しながら時計遷移を分光する新方式(縦励起)を実証した。原子の準備・時計遷移の励起・状態検出を流路上の異なる場所で同時に進められる構成で、1.2ヘルツ幅の高分解能スペクトル(フーリエ限界に近い)が得られた。測定に空白時間が生じない「ゼロデッドタイム動作」の実現に向けた基盤となる。成果は英科学誌「Nature Communications」オンライン版に2026年8月6日付(英国夏時間)で掲載された。
出典:科学技術振興機構(JST)・東京大学 共同発表 2026年8月6日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260806-3/index.html
FrontJournalの解説
この研究分野について
光格子時計は、レーザー光で作った微小な格子にストロンチウムなどの原子を捕まえ、その原子が特定の光を吸収する周波数(時計遷移)を基準に時間を測る装置です。これまでに開発された光格子時計は、GPSや基地局の時刻同期に使われているセシウム原子時計よりけた違いに高い精度を持つ一方、原理的に測定を続けるのが難しいという課題があります。原子を新しく準備している間は測定ができず、その空白時間(デッドタイム)にレーザー周波数の揺らぎを補正しきれない、というものです。
この空白を減らすため、複数の測定を交互に走らせる、原子の準備を高速化するなどの工夫が研究されてきましたが、「原子を止めて測る」という基本の形は変わっていませんでした。レーザー周波数を連続的に補正できるようになると、より短い測定時間で安定した精度が出せ、小型化や、時計を離れた場所で比較する運用の幅が広がると考えられています。
①原子を流しながら測る「縦励起」を導入した
研究グループは、移動光格子(原子を捕まえたまま動かせる光の格子)を「原子のベルトコンベヤー」のように使い、極低温ストロンチウム原子を連続して供給する仕組みを作りました。その流路の中で、原子の準備・時計遷移の励起・状態検出という3つの工程を異なる場所で同時に進める、「縦励起」と呼ばれる新しい分光方式を導入しています。原子を止めて測って捨てて、また入れて測る、という従来のやり方とは違い、流れの中で常に「今測れる原子」がある状態を作ります。
②フーリエ限界に近い1.2ヘルツ幅を得た
実証では、連続的に流れる原子から1.2ヘルツ幅の高分解能スペクトルが得られました。これは、測定時間から原理的に決まる分解能の限界(フーリエ限界)に近い値で、原子が流れていても分光の精度が損なわれていないことを示しています。測定の空白時間を無くす「ゼロデッドタイム動作」への基盤となる成果で、JSTは、実現後にはレーザー周波数の揺らぎを連続的に補正でき、短い測定時間での安定計測が可能になるとしています。光格子時計の小型化や、重力場などを測る高精度センシングへの応用が期待されます。共同研究先の日本電子株式会社は、真空装置の設計・製造で参加しました。
編集部からひとこと
光格子時計は、精度そのものは以前から高い水準に達していましたが、運用面では「止めて測る」時間があるために、全ての時刻で高精度に時間を刻み続けるのが難しいという構造的な弱点がありました。今回の実証は、その「止めない」ための方式を、実験室レベルで示したものです。原子時計を止めずに動かし続けられれば、レーザーの短時間の揺らぎまで補正しに行けるので、短い時間でも高い安定度が出せます。衛星や光通信、地下・海底の重力測定など、時刻を離れた場所と比べたり、現場に持ち出して使ったりする用途に届きやすくなる方向の一歩と読める発表でした。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
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