2026.07.08
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科学技術振興機構(JST)
東大・京大・阪大が1細胞の全タンパク質を1分子感度で解析する新手法(FrontJournal解説)
ニュース紹介
「1細胞の全たんぱく質発現パターンを分子感度で解析することに成功~従来法のわずか数十分の一の細胞数で、分化過程の全体像が明らかに~」
東京大学、京都大学アイセムス(iCeMS)、大阪大学の共同研究グループ(ラティファ・ビンティ・カマルザマン特任研究員、金水縁助教、谷口雄一教授ら)は、細胞内に存在するたんぱく質全体(プロテオーム)を、1細胞ごとに分子量別の発現プロファイルとして1分子感度で計測できる新手法「Single-cell PAGE-PISA法」を開発しました。従来のゲル電気泳動法に光シート顕微鏡技術を組み合わせることで実現し、細胞間の総たんぱく質量の解析、がん細胞株の識別、iPS細胞から心筋細胞への分化過程の追跡に応用しています。
出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月8日 プレスリリース(掲載誌:Nature Communications/DOI: 10.1038/s41467-026-74840-0)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260708/index.html
FrontJournalの解説
プロテオーム解析とは
今回のテーマである「プロテオーム」とは、細胞内に存在するたんぱく質全体のことです。DNA配列(ゲノム)が同じ細胞でも、実際にどのたんぱく質がどれだけ作られているかは細胞の種類や状態によって異なります。プロテオームを解析することで、遺伝子の情報が実際にどう働いているかをより直接的に知ることができます。ただし、従来の解析手法は多くの細胞をまとめて測定する必要があり、1つ1つの細胞ごとの違いを捉えることは技術的な難度が高いとされてきました。
①ゲル電気泳動と光シート顕微鏡の組み合わせ
研究グループは、ゲル電気泳動法(たんぱく質を分子量ごとに分離する伝統的な手法)に光シート顕微鏡(薄いシート状の光で試料を照らし高速に観察する技術)を組み合わせた「Single-cell PAGE-PISA法」を開発しました。これにより、1つの細胞に含まれるたんぱく質全体を、分子量別の発現プロファイルとして1分子感度(1個単位で検出できる精度)で計測できるようになったとされています。
②応用例:がん細胞の識別とiPS細胞の分化追跡
今回の手法は、細胞間の総たんぱく質量の解析、がん細胞株の識別に加え、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心筋細胞への分化過程の追跡に応用されています。iPS細胞がどのような過程を経て特定の細胞(今回は心筋細胞)へ変化していくかを、1細胞レベルのたんぱく質プロファイルで追えることは、再生医療や創薬研究における細胞の品質評価・分化制御の理解に役立ちうる技術基盤です。
編集部からひとこと
今回の成果は解析技術そのものの開発であり、特定の疾患治療や製品化への直接的な言及は発表内容にありません。1細胞レベルでのプロテオーム計測は、がん研究や再生医療分野で広く求められている基盤技術であり、今後どのような研究機関・企業がこの手法を活用していくか、編集部として続報を追っていきます。詳細な実験データ・論文情報はJST公式ページおよびNature Communications掲載論文をご参照ください。