2026.07.23 大阪大学・北海道大学・国立がん研究センター・JST 元発表:2026.07.17

阪大・北大ら、細胞内で温度を感知するたんぱく質を発見(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「細胞内の「新型温度センサー」を発見~天然変性たんぱく質が核内ストレス体の「るつぼ機能」を制御~」

大阪大学の上野剛志助教・廣瀬哲郎教授、国立がん研究センター研究所の足達俊吾分野長、北海道大学の野田展生教授らの研究グループは、細胞内で温度変化を感知するたんぱく質「PPP1R2」を発見した。PPP1R2は決まった立体構造を持たない「天然変性たんぱく質」で、高温になると酵素PP1から離れ、温度が下がると再び結合するという可逆的な性質を示した。この温度依存的なふるまいが、細胞が熱ストレスを受けたときに核内につくられる構造体「核内ストレス体(nSB)」のはたらきを制御していることを明らかにした。

出典:科学技術振興機構(JST) {DATE_JA} プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260717-2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

生き物の細胞は、周囲の温度が変わると内部で素早く反応し、自分を守るしくみを働かせます。その入り口となるのが、温度を感じ取る「温度センサー」の役割を持つ分子です。近年注目されているのが、はっきりした立体構造を持たない天然変性たんぱく質(決まった形をとらず、状況に応じて柔軟に形を変えるたんぱく質)です。こうした分子は、細胞の中で液体の粒のように集まったり散らばったりする「相分離」という現象を通じて、さまざまな生命活動のスイッチとして働くことが分かってきました。

研究者たちは、細胞が熱などのストレスを受けたときに何が起きているかを、分子レベルで正確に理解しようとしています。ストレス応答のしくみが分かれば、がんや神経の病気など、細胞のストレスが関わる病気の理解にもつながると期待されています。

①何を発見したのか

研究グループが見つけたのは、PPP1R2というたんぱく質が温度センサーとして働くという事実です。PPP1R2は熱を受けると相棒である酵素「PP1」から離れ、温度が下がると再び結合します。この結合・解離の切り替えが、細胞が熱ストレス時につくる核内ストレス体(nSB)という構造体の性質を左右していました。研究チームは、CLK1という酵素によるリン酸化(分子に目印をつける化学反応)が、この温度応答を制御する鍵であることも突き止めています。決まった形を持たないたんぱく質が、温度という物理的な変化を細胞のはたらきに翻訳している点が特徴です。

②なぜ注目されるのか

温度は、細胞にとって最も基本的な環境情報のひとつです。これまで動物の温度感覚は、細胞膜にあるイオンチャネル(TRPチャネルなど)が担うことが知られていましたが、細胞の核の中で温度を感じ取るしくみは十分に分かっていませんでした。今回の成果は、核内で温度に応じてたんぱく質の集合状態が変わるという新しい制御原理を示したものです。細胞のストレス応答は、がん細胞の生存や神経変性疾患とも関わるため、その入り口にあたる温度センサーの発見は、病気の理解や創薬研究の土台を広げる基礎知見として位置づけられます。

編集部からひとこと

「決まった形を持たないたんぱく質」が精密な温度センサーとして働くという発見は、生命が物理的な変化をうまく利用してきたことを改めて感じさせます。今回はあくまで細胞のしくみの解明であり、すぐに治療に使えるわけではありません。それでも、こうした基礎研究の積み重ねが、将来の医療や創薬の出発点になります。FrontJournalは、地道な基礎研究が持つ長期的な価値に引き続き注目していきます。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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