ニュース紹介
「量子もつれが決める「熱平衡らしさ」~取り出せる仕事に基づいて量子多体状態を分類~」
東京大学大学院工学系研究科の矢田季寛大学院生(研究当時、現・理化学研究所日本学術振興会特別研究員)、沙川貴大教授、同大学素粒子物理国際研究センターの吉岡信行准教授から成る研究グループは、量子多体系の状態がどのような条件で熱平衡状態と同じ性質を示すのか、すなわちその「熱平衡らしさ」が何によって決まるのかを、「局所操作と古典通信(LOCC)」で取り出せる仕事に基づいて理論的に明らかにしたと発表しました。量子多体系の典型的な状態は、系全体としては熱平衡状態とは大きく異なるにもかかわらず、各粒子を個別に操作・観測するだけでは熱平衡状態とほとんど見分けがつかないことが知られています。しかし、各粒子の測定結果を互いに伝え合い、その結果に応じた操作が可能となるLOCCの下でもこの同等性が保たれるかは明らかになっていませんでした。本研究では、LOCCによって量子状態から取り出せる仕事を定式化し、熱平衡状態と同じ性質を示すかどうかが、状態に含まれる多体量子もつれによって決まることを示しています。典型的な量子多体系の状態には強く複雑な多体量子もつれが存在するために、LOCCを用いても系の大きさに比例する仕事を取り出せないとしています。一方、局所操作だけでは熱平衡状態と見分けがつかない状態であっても、量子もつれが弱くその構造が比較的単純な場合には、古典通信を組み合わせることで系の大きさに比例する仕事を取り出せることも示しました。成果は2026年8月21日(米国東部夏時間)付で科学雑誌Physical Review Lettersのオンライン版に掲載されました。
出典:科学技術振興機構(JST)・東京大学 2026年8月24日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260824-2/index.html



