2026.08.25
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東京大学
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元発表:2026.08.24
東京大学、量子もつれが「熱平衡らしさ」を決めることを解明
ニュース紹介
「量子もつれが決める「熱平衡らしさ」~取り出せる仕事に基づいて量子多体状態を分類~」
東京大学大学院工学系研究科の矢田季寛大学院生(研究当時、現・理化学研究所日本学術振興会特別研究員)、沙川貴大教授、同大学素粒子物理国際研究センターの吉岡信行准教授から成る研究グループは、量子多体系の状態がどのような条件で熱平衡状態と同じ性質を示すのか、すなわちその「熱平衡らしさ」が何によって決まるのかを、「局所操作と古典通信(LOCC)」で取り出せる仕事に基づいて理論的に明らかにしたと発表しました。量子多体系の典型的な状態は、系全体としては熱平衡状態とは大きく異なるにもかかわらず、各粒子を個別に操作・観測するだけでは熱平衡状態とほとんど見分けがつかないことが知られています。しかし、各粒子の測定結果を互いに伝え合い、その結果に応じた操作が可能となるLOCCの下でもこの同等性が保たれるかは明らかになっていませんでした。本研究では、LOCCによって量子状態から取り出せる仕事を定式化し、熱平衡状態と同じ性質を示すかどうかが、状態に含まれる多体量子もつれによって決まることを示しています。典型的な量子多体系の状態には強く複雑な多体量子もつれが存在するために、LOCCを用いても系の大きさに比例する仕事を取り出せないとしています。一方、局所操作だけでは熱平衡状態と見分けがつかない状態であっても、量子もつれが弱くその構造が比較的単純な場合には、古典通信を組み合わせることで系の大きさに比例する仕事を取り出せることも示しました。成果は2026年8月21日(米国東部夏時間)付で科学雑誌Physical Review Lettersのオンライン版に掲載されました。
出典:科学技術振興機構(JST)・東京大学 2026年8月24日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260824-2/index.html
FrontJournalの解説
この研究分野について
熱機関は、熱の流れから仕事を取り出す装置です。エンジンや発電機がこれにあたります。ここに量子の性質を持ち込んだものが量子熱機関で、従来にない効率や機能が期待されています。
設計の前提になるのが、対象の量子状態から実際にどれだけ仕事を取り出せるかです。取り出せないのであれば、その状態は熱平衡(それ以上仕事を取り出せない状態)と実質的に同じ扱いになります。
①見分けがつかない、が本当かは未確認だった
量子多体系の典型的な状態は、全体としては熱平衡状態と大きく異なります。ところが、各粒子を個別に操作・観測するだけでは、熱平衡状態とほとんど見分けがつかないことが知られていました。
では、各粒子の測定結果を互いに伝え合って操作した場合はどうか。この「局所操作と古典通信(LOCC)」の条件でも同等性が保たれるかは、明らかになっていませんでした。
②もつれの強さが取り出せる量を決める
研究グループは、LOCCで取り出せる仕事を定式化し、熱平衡状態と同じ性質を示すかどうかが多体量子もつれによって決まることを示しました。
典型的な状態はもつれが強く複雑なため、LOCCを使っても系の大きさに比例する仕事は取り出せません。逆に、もつれが弱く構造が単純な場合は、古典通信を組み合わせることで系の大きさに比例する仕事を取り出せるとしています。
編集部からひとこと
量子技術の議論は計算機に集まりがちですが、エネルギーを扱う側にも研究の蓄積があります。今回は「どの状態なら仕事を取り出せるか」を、もつれの強さという測れる量で切り分けています。量子熱機関を設計する際に、対象の状態を選ぶ基準が理論の側から示されたことになります。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
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