2026.07.28
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北海道大学・科学技術振興機構(JST)
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元発表:2026.07.24
北海道大、ドーパミンが「恐れの克服→報酬追求」を切り替える仕組みを解明(FrontJournal解説)
ニュース紹介
「恐れを克服して報酬へ向かうには?~ドーパミンが嫌悪回避と報酬獲得を制御するメカニズムを解明~」
北海道大学大学院薬学研究院の木村生准教授らの研究グループは、独自の行動課題をマウスに実施し、嫌悪刺激に対する線条体尾側ドーパミンの応答が経験の反復に伴って徐々に減少していくプロセスこそが、脅威への適応(慣れ)を引き起こす決定的な要因であることを明らかにしました。さらに、この線条体尾側ドーパミンの脅威への適応が完了して初めて、報酬を求める行動が促進されることを解明しました。
研究成果は、恐怖を乗り越えて前向きな行動へ転換する際の脳内メカニズムを明らかにするものであり、これまで知られていなかった新たなドーパミンの機能的役割を示す重要な知見であるとされています。論文は国際学術誌『Communications Biology』(2026年7月24日オンライン掲載、DOI:10.1038/s42003-026-10485-5)に掲載されました。
出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月24日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260724/index.html
FrontJournalの解説
この研究分野について
脳内で神経細胞どうしが情報をやり取りするために使われる化学物質を神経伝達物質と呼び、その代表的な一つがドーパミンです。ドーパミンはこれまで、報酬を予測したときや、期待より良い結果が得られたときに強く放出されることが知られており、学習・意思決定・依存症・パーキンソン病など幅広い脳機能や疾患に関わることが分かってきました。
一方で、ドーパミンを放出する神経細胞は脳内で均一ではなく、投射先となる線条体(大脳基底核の入口)の部位ごとに異なる機能を担っていることが近年の研究で示されつつあります。とくに線条体の後方部分に投射する「線条体尾側ドーパミン」は、報酬より恐怖や嫌悪などのネガティブな刺激に応答するという、従来のドーパミン像とは異なる働きが注目されてきました。
①「恐怖に慣れる」プロセスをドーパミンが決めていた
今回の研究では、マウスに嫌悪刺激を伴う独自の行動課題を繰り返し与え、線条体尾側ドーパミンの応答を計測しました。その結果、嫌悪刺激に対するドーパミン応答は、経験を重ねるほど徐々に減少していき、この応答の減少そのものが、マウスが脅威に「慣れる」=適応を成立させる決定的な要因であることが示されました。
これは、線条体尾側ドーパミンが単に「危険が来た」と警告する信号を出すだけでなく、その信号が経験とともに小さくなること自体が、行動の切り替えを可能にするスイッチのように働いていることを示唆する結果です。恐怖を乗り越える過程が「反応を止める」のではなく「反応が段階的に小さくなる」ことで進むという、動的な仕組みを可視化した点に意義があります。
②適応が完了して初めて、報酬追求行動が動き出す
研究グループはさらに、線条体尾側ドーパミンの脅威への適応が完了して初めて、マウスが報酬を求める行動を積極的に取るようになることを見いだしました。恐怖の信号が減衰することが前提条件となって、報酬追求のスイッチが入るという、二つの動機づけの間の順序関係が明らかになったかたちです。
プレスリリースでは、本成果はこれまで知られていなかった新たなドーパミンの機能的役割を示すとし、恐怖を乗り越えて前向きな行動へ転換する際の脳内メカニズムを明らかにするものと位置づけています。将来的には、不安症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、恐怖体験からの回復が難しい病態を理解し、支援するための基礎的な手がかりになることが期待されます。
編集部からひとこと
本研究はマウスを用いた基礎神経科学の成果であり、ヒトの臨床応用に直接つながる段階ではありません。ただし、「恐怖を克服してから報酬を追いに行く」という日常的にも観察される心の切り替えを、線条体尾側ドーパミンという具体的な神経回路のレベルで説明した点は、行動変容や意思決定の理解に新しい足場を与えるものと言えます。詳細な実験条件や解析方法は、JSTの公式ページおよび原著論文をご参照ください。
本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。
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