FrontJournalの解説
この研究分野について
第2級アミンは、医薬品や農薬の合成中間体として広く用いられる重要な化合物です。工業的にはニトリル(-C≡N基を持つ化合物)を水素化して合成しますが、従来のプロセスでは貴金属触媒や高圧の水素、副反応の抑制など、コスト・環境の両面で課題がありました。安価な非貴金属で、大気圧水素という穏やかな条件で選択的にアミンを得られる触媒の開発は、原料化学の脱貴金属化・省エネ化のテーマとして注目されています。
①貴金属に頼らない「Ni-Wナノ合金」触媒
研究グループは、ニッケル(Ni)とタングステン(W)からなる新規ナノ粒子触媒を開発しました。ニッケルは貴金属に比べて安価で入手しやすい非貴金属で、タングステンとの合金化により触媒としての性能を引き出しています。安価な原料で構成される点が、実装コスト面での大きな利点です。
②大気圧水素で第2級アミンを選択的に合成
開発した固体触媒は、大気圧の水素という穏やかな条件下で、ニトリルから第2級アミンへの選択的な水素化反応を効率よく促進しました。高圧設備を必要とせず、副生成物の生成を抑えて目的物を得られる点は、実用プロセスへの適用に向けた重要な特徴です。論文タイトルは「Highly Efficient and Stable Ni–W Nanoalloy Catalyst for Selective Hydrogenation of Nitriles to Secondary Amines」で、触媒の安定性についても報告されています。
③医薬品・農薬合成の低コスト化・低環境負荷化へ
第2級アミンは、医薬品や農薬の合成中間体として不可欠な化合物です。安価な非貴金属触媒で穏やかな条件下でも高効率に合成できれば、医薬品や農薬の原料合成プロセスの低コスト化・低環境負荷化に寄与すると期待されます。研究グループは「環境に調和した合成プロセスの構築に期待」と位置づけています。
編集部からひとこと
「貴金属を使わない触媒」は、多くの研究者が長年取り組んできたテーマです。今回の成果は、Ni-W合金という組み合わせで、大気圧水素・選択性・安定性という3点を同時に扱えている点が特徴です。実用化には、実プロセス条件下での寿命、スケールアップ時の再現性、対応できるニトリル基質の広さなどが焦点になりそうです。なお本研究は、科学研究費補助金、JST戦略的創造研究推進事業さきがけ、JST次世代研究者挑戦的研究プログラムなどの支援を受けています。