3.洋上風力発電の推進のために
国がGX(グリーントランスフォーメーション)を強力に後押し
化石燃料中心の社会から脱却し、クリーンエネルギーへの転換を促して経済成長と産業競争力の強化を目指す変革がGX(グリーントランスフォーメーション)です。GXに欠かせない革新的な次世代技術の開発を裏側で強力にサポートしているのが、国の補助金やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の存在です。
洋上風力や次世代太陽電池は、商業化までに莫大な初期投資と長い年月が必要です。民間企業単体では背負いきれない、開発初期の巨大なリスクが横たわっているのが現実です。実際、コスト上昇などを理由に風力発電事業から撤退するケースは少なくありません。
そこへ、NEDOが主導する「次世代浮体式洋上風力システムの実証研究」といった国家プロジェクトや公的資金が投入されることで、社会を大きく変える技術への挑戦が可能になっています。
人材育成と、困難なメンテナンスの省力化がカギ
2026年7月10日、風車世界大手のベスタス(デンマーク)が風車の主要部品を組み立てる拠点を北九州市へ設立すると福岡県が発表しました。国内サプライチェーンの整備が着々と進んでいます。
一方で、現場には深刻な「人材不足」と「過酷な保守作業」という壁が立ちはだかります。そのような中で、面白い動きを見せているのが地方の中小企業です。全国の風車540基の定期点検やサポートを手がける有限会社イー・ウィンド(長崎県五島市)は、もともとは建設会社でした。それが2008年に大胆に業態転換。全国で風力発電所の稼働が増え、定期点検やメンテナンスの依頼が急増している風をとらえ、人材育成プログラムを整備し事業を拡大しています。
また、人の力だけに頼る現場の限界を突破しようとしているのが、国内の先進企業とスタートアップによる技術革新です。
KDDIやNTTなどの通信事業者は、ドローンを用いて洋上風車のブレード(羽根)の遠隔自動点検に乗り出します。従来は膨大な時間と人手がかかっていた点検作業を大幅に短縮し、安全性と風車の稼働率が向上しました。
洋上風力の成功に欠かせない環境への影響評価と漁業関係者との合意
洋上風力プロジェクトの成功には、資金と技術と人材、さらに環境への影響評価と関係者との合意形成が不可欠です。
特に地域の漁業者にとって、海洋へ巨大な建造物を設置することは、生活基盤や漁場に対して予測のつかない影響を及ぼす懸念があります。
プロジェクトの成功のためには、関係者の立場を理解したうえでの誠実な話し合い、客観的な環境への影響評価を経た合意形成が欠かせません。
開発と環境保護を両立できる専門家が必須
こうした背景を受け、北海道大学は、洋上風力発電に従事する社会人を対象とした人材育成プログラムを2026年10月に開講。約2カ月で生物多様性の知識や技術を学び、開発と環境保護を両立できる人材を目指しています。
洋上風力は、単に風車を建てれば成立するものではありません。設備を建設する技術だけでなく、長期にわたって運用を支える人材、地域との合意形成を担う人材、環境への影響を評価する人材など、さまざまな専門家が協力することで初めて実装に向けて前進する巨大なプロジェクトです。