車載電池のCO2を減らす低炭素バッテリーセルを研究する Verkor(フランス発)

車載電池のCO2を減らす「低炭素バッテリーセル」を研究【Verkor|フランス発】

EVへの切り替えが進む一方で、電池を製造する段階のCO2をどう減らすかが自動車産業の課題になりました。この課題に挑むのが、フランスのヴェルコール(Verkor)です。工場で使う電力と熱を低炭素の供給源でまかない、製造時のCO2を抑えた「低炭素バッテリーセル」を量産しています。2020年にグルノーブルで創業し、2025年12月にはダンケルク近郊のブールブールで最初のギガファクトリーを開所しました。創業からの累計調達額は30億ユーロ超(約5,550億円)にのぼります。

車載電池のCO2の課題

Verkorの紹介と、電池の製造時にCO2が発生し、欧州ではその申告が義務になったことを示す図

電池の製造でCO2が発生

EVは走行中にCO2を排出しませんが、電池を製造する段階ではCO2が発生します。排出は材料の採掘・精製と、セル(電池の最小単位)の製造という工程に分かれ、大量の電力を使うセルの製造では、工場が使う電源の種類で排出量が変わります。製造時のCO2が大きいままでは、EVへ切り替えても脱炭素の効果があらわれるまでに時間が必要です。

製造時のCO2の申告が義務

欧州では、EV用の電池について、一生分のCO2(カーボンフットプリント)の申告が義務になりました。EU電池規則(規則2023/1542)にもとづき、2025年2月18日から、メーカーは第三者の検証を経た数値を公開します。算定と検証の体制がそろわない事業者にとっては、欧州市場で電池を販売しにくくなります

FrontJournalの解説
  • カーボンフットプリント製品が原材料の採掘から廃棄までの一生のあいだに出すCO2の合計量。走行中の排出だけを見る比較と違い、製造や廃棄の段階も同じ土俵に載せる。
  • EU電池規則EUが2023年に定めた電池の規則(2023/1542)。EV用電池では2025年2月18日からカーボンフットプリントの申告が義務となり、2027年からは電池ごとの情報をQRコードで開示する仕組みが加わる。

Verkorが「低炭素バッテリーセル」を研究

Verkorが低炭素バッテリーセルを研究する仕組みを示す図。低炭素電力と近隣工場の排熱を使ってセルを製造する

課題解決に挑むVerkor

Verkorは、製造時のCO2を抑えた「低炭素バッテリーセル」を研究するフランスの企業です。2020年にグルノーブルで創業し、研究拠点のVerkor Innovation Centreと、ダンケルク近郊ブールブールの量産工場という二拠点で事業を進めています。創業の出発点は、2030年までに南欧だけで約100〜170GWhのセルが必要になるという需要の見通しで、欧州の電池産業を育てる公的機関EIT InnoEnergyの支援を受けて事業を始めました。

低炭素電力で製造しCO2減

Verkorは工場で使う電力を低炭素電源でまかない、セルの製造時のCO2を抑えます。ブールブールの工場は、原子力を中心とするフランスの電力を使い、これにPPA(電力購入契約)と敷地内の太陽光発電を組み合わせています。セルの製造は電力を多く使う工程のため、電源の切り替えが排出量に直接効きます。同社は2032年までに、材料の採掘も含めたセルの一生分の排出を電池1kWhあたり約30kg(CO2換算)とし、世界の業界平均より約70%低い水準になると見込んでいます。

排熱の再利用で燃料を節約

同社は、近隣の工場から出る排熱を回収し、製造に必要な蒸気として利用します。セルの製造では、電極を乾燥させる工程などで熱が必要です。この熱を自前の燃焼設備でまかなうと燃料の消費とCO2が増えますが、地域の熱回収網から蒸気を受け取れば、その分を減らせます。低炭素の電力と熱がそろう場所を立地の段階で選んだ点が、同社の設計の特徴です。

FrontJournalの解説
  • バッテリーセル電池の最小単位。これを何十個も束ねて配線と冷却の部品を加えたものがEV1台分の電池パックになる。セルの性能とCO2が、パック全体の性能とCO2を左右する。
  • PPA(電力購入契約)発電事業者と需要家が長期の価格で電力を売買する契約。市場から買う場合と違い、どの発電所の電力かを特定できるため、太陽光や風力の電力を使ったと示せる。

低炭素バッテリーセルの未来

低炭素バッテリーセルの未来を示す図。EVへの搭載が始まり、欧州域内での生産体制を目指し、30億ユーロ超を調達した

CO2の少ないEVが可能に

製造時のCO2を抑えたセルが広がれば、EV1台あたりの製造時のCO2が減ります。Verkorは2025年12月11日にブールブール(フランス北部・ダンケルク近郊)のギガファクトリーを開所し、初期の生産能力は年間約16GWhです。最初の供給先はアルピーヌ(ルノー・グループの車ブランド)のEV「A390」で、2026年からの供給を予定しています。欧州を走るEVの一部が、製造時のCO2を抑えた電池を積むことになります。

欧州の電池の内製化を目指す

Verkorは欧州で使うEV用電池を、欧州で製造することを目指し、生産能力を2030年に年間約50GWhへ引き上げる目標を掲げました。IEAによると、2025年に生産されたEV用電池の約77%はアジアで生産されました。欧州にあるセル工場も、その生産能力の多くをアジア系のメーカーが保有しているとされます。域内で電池を調達できるようになれば、製造時のCO2を欧州の基準で管理しながらEVを供給できます。

30億ユーロ超の資金を調達

Verkorは2020年の創業以降、累計で30億ユーロ超(約5,550億円)を調達しました。2024年5月には、工場の建設に充てる約13億ユーロ(約2,400億円)のグリーン融資がまとまりました。この融資には、欧州投資銀行(EIB)のInvestEU枠の直接融資や、フランス政府の保証つき融資が含まれます。資金と供給先の両方がそろったことで、「低炭素バッテリーセル」の量産を続ける見通しが立ちました。

FrontJournalの解説
  • GWh(ギガワットアワー)電池がためられる電気の量を表す単位。1GWhは100万kWhにあたり、工場の生産能力を示すときは「年間に何GWh分のセルを作れるか」で表す。
  • ギガファクトリー年間GWh規模で電池セルを量産する大型工場。試作を担う研究拠点と違い、同じ品質のセルを大量に作り続ける設備と人員を備える。

まとめ

電池の製造にともなうCO2は、EVの脱炭素の効果を左右する要素です。Verkorは低炭素の電力と排熱の回収を組み合わせ、2025年12月にギガファクトリーを開所しました。累計30億ユーロ超の資金と、アルピーヌという供給先も確保しています。日本にも車載電池のメーカーがあり、製造時のCO2をどう管理するかという同じ論点を持ちます。FrontJournal編集部は、「低炭素バッテリーセル」がEVの標準に加わっていくことに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ユーロの円換算は1ユーロ=約185円で概算しています。2032年の排出量と2030年の生産能力は同社が示す目標・見込みの値です。
主な出典:Verkor 公式(ニュースリリース/Green Financing Framework)、欧州委員会 EU電池規則(2023/1542)、IEA Global EV Outlook 2026。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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