大学発スタートアップ必見!サイエンスコミュニケーションでVC資金調達を成功させる3つのコツ

大学発スタートアップ必見!サイエンスコミュニケーションでVC資金調達を成功させる3つのコツ

大学発のスタートアップ企業が扱うのは、専門性の高い技術です。社会実装まで時間がかかるため、資金調達は難所になりやすいと言われています。

「技術の価値をどう伝えるか」「社会実装の道筋をどう示すか」「技術とビジネスを繋ぐ人材をどう確保するか」。こうした課題を抱える企業は多いでしょう。

事業の拡大にともない、説明する相手も広がります。VC(ベンチャーキャピタル)、経営人材、メディア、ユーザー。背景知識の異なる相手へ、順に伝えていく必要があります。

この記事では、資金調達に役立つサイエンスコミュニケーションの手法を3つ紹介します。

なぜ資金調達にサイエンスコミュニケーションが有効なのか

サイエンスコミュニケーションは、社会や一般市民へ科学技術を伝え、社会課題の解決を目指す活動です。科学コミュニケーション、科学技術コミュニケーションとも呼ばれます。

文部科学省は、次のように定義しています。

科学のおもしろさや科学技術をめぐる課題を人々へ伝え、ともに考え、意識を高めることを目指した活動

VCの判断基準と重なる

この分野では、科学技術を正確に、かつ分かりやすく伝える手法が20年以上にわたり研究されてきました。その過程で蓄積されたのは、社会実装の進め方、多様なステークホルダーとの連携、専門知を専門外へ伝える工夫です。

サイエンスコミュニケーションの蓄積は、VCが投資判断で重視する点と重なります。重視されるのは「技術を理解できるか」「事業化の可能性があるか」の2点です。だからこそ、その知見が資金調達を後押しします

POINT①|専門知識をビジネス言語へ翻訳する

創業・シード期は、ピッチ(事業内容を伝え、行動を促す説明)でVCの理解を得る段階です。ここでは、受け手の理解度に合わせて言葉を調整することが、投資判断を引き出す力になります

対話で解釈のズレを探す

サイエンスコミュニケーションの基本は、双方向の対話です。対話によって、伝え手の意図が受け手にどう届いたかを確認できます。着目点は次の2つです。

  • 専門用語や業界内の常識に寄っていないか一般に知られた言葉へ置き換える
  • 一般的な言葉が意図どおりに届いているか同じ言葉でも、受け取り方は人によって変わる

ピッチ前に「壁打ち」で検証する

判断の方法は「壁打ち」です。社内の非研究職メンバーや、専門分野の異なる知人に技術を説明してみましょう。そのうえで「この技術は何を可能にするのか」を、相手の言葉で言い直してもらいます。返ってきた言葉と自分の意図との差が、翻訳すべき箇所です

翻訳の例

翻訳前(技術視点)

「〇〇の遺伝子組み換え効率を従来比200%向上させた」

翻訳後(VC/ビジネス視点)

「スクリーニング回数が減ることで、〇〇病の創薬期間を半減し、年間〇〇億円の製造コストを削減する」

翻訳前が述べているのは、技術の到達点までです。翻訳後は、そこに「開発期間」と「コスト」を加えています。この2つがVCの評価軸です

POINT①まとめ
  • 言葉の一般的な意味と専門的な意味を区別する
  • 企業側とVCの解釈が重なる範囲を探す
  • 伝えたい内容をビジネス向けに翻訳する

POINT②|ステークホルダーを巻き込む

シリーズA・B期になると、事業拡大に関わるステークホルダーが増えていきます。その範囲は、経営人材、メディア、行政、ユーザーとなる市民まで。サイエンスコミュニケーションが重視するのは、関係者を整理し、適切なタイミングで巻き込むことです。

連携が実現性の裏づけになる

VCは技術に加えて、その技術が社会へ届くまでの道筋を評価します。確認するのは次の3点です。

  • 誰が使うのか初期ユーザー、導入先、想定顧客
  • 誰が承認するのか規制当局、業界団体、認証機関
  • 誰が製造するのか量産を担う製造委託先、共同開発先

ここに具体名と着手時期を添えると、社会実装までの工程を自社で描けていると伝わります。規制当局との事前相談の予定、量産を担う製造委託先の候補、実証実験に協力する自治体や医療機関。こうした連携先が、事業計画の実現性を示す材料になります

着手時期まで示す

着手時期を添えてはじめて、計画は構想から工程へ変わります。社会実装後の拡大まで含めて関係者を洗い出し、どのフェーズで巻き込むかを整理しましょう。ビジネスビジョンの解像度が上がります。

POINT②まとめ
  • 事業拡大で関与するステークホルダーを洗い出す
  • 資金調達後のビジョンを示す
  • 適切なタイミングで巻き込む

POINT③|サイエンスコミュニケーターと連携する

資金調達では、技術の仕組みやデータに加えて、成長シナリオが要ります。示すのは「なぜこの技術が今の市場で必要なのか」「資金投入後、どのマイルストーンで事業が拡大するのか」の2点です。

専門性が高いほど、研究者自身によるビジネス言語への翻訳は難度が上がります。

キュレーターが伴走する

研究技術を幅広い層へ広めるプロセスは、サイエンスコミュニケーターの専門領域です。専門外の投資家へ伝える場面でも、その知見が生きます

たとえばREADYFOR株式会社では、キュレーターが研究者に伴走します。同社の鈴木康浩キュレーターがまず取り組むのは、生命科学の知識を活かした研究内容の理解です。そのうえで、開始前にメディア、患者会、関連分野の研究者といった発信経路を整理していきます。

学術的な知見を「市場と社会の言語」へ翻訳する専門家との連携は、自社のビジョンを投資家へ届ける有力な手段です

POINT③まとめ
  • 技術を「市場の課題解決」に紐づけた成長シナリオを示す
  • サイエンスコミュニケーターと連携する

具体例|膵臓がん研究の資金調達

専門知の翻訳が資金調達に結びついた例を、1つ紹介します。東北大学大学院医学系研究科の古川徹教授が、2021年にクラウドファンディングで行った膵臓がん研究の資金調達です。

実行者古川徹(東北大学大学院医学系研究科 病態病理学分野 教授)
目標金額1,500万円
支援総額2,005万5,000円(達成率133.7%)
支援者数1,002人
募集期間2021年7月2日〜9月30日

専門知を4つの手順で翻訳

研究の中身は「超早期・早期膵臓がん50症例のエクソーム解析による診断バイオマーカーの探索」です。これを次の4手順で翻訳しています。

  • 課題から入る「膵臓がんは発見が遅れる」「治療の効き方に個人差がある」から説明を始める
  • 既知のものに例えるバイオマーカーを、前立腺がん検査のPSAになぞらえる
  • 画像で見せる化学療法が効いた組織と効かなかった組織の病理画像を並べる
  • 工程を分解する塩基配列を解析する流れを図解し、資金の使途を具体化する

このプロジェクトには、患者の治療に向き合う医師から多くの応援が集まりました。READYFORは、研究段階で背景にある想いを発信したことが「研究のファンづくり」に繋がったと述べています。

資金の出し手は個人の支援者であり、VCとは対象が異なります。ただし「専門外の相手へ、価値を判断できる形で届ける」構造は、ピッチと同じです。上の4手順は、VC向けの説明にも応用できます。

まとめ|サイエンスコミュニケーションで資金調達を加速させる

本記事では、大学発スタートアップの資金調達に役立つサイエンスコミュニケーションの手法を3つ紹介しました。

  • ① 専門知識をビジネス言語へ翻訳する
  • ② ステークホルダーを巻き込む
  • ③ サイエンスコミュニケーターと連携する

大学発スタートアップが研究開発に費やすのは、長い時間と多大な費用です。だからこそ、技術の到達点に加えて、その技術が解決する市場課題まで示すことが、投資家の判断材料になります

研究成果を社会へ実装する過程で、サイエンスコミュニケーションの考え方と専門人材との連携を取り入れてみてください。

出典

  • 文部科学省『サイエンスコミュニケーションとは?』
    https://www.mext.go.jp/kids/find/kagaku/mext_0005.html
  • 奥本素子、種村剛 編/池田貴子、川本思心、小林良彦、原健一 著『サイエンスコミュニケーション講座から学ぶ 科学が伝わる技法 共感を生む双方向の対話、情報発信、アウトリーチ、研究資金獲得に活きるヒント』羊土社、2026年3月
  • 科学技術振興機構 科学コミュニケーションセンター『科学コミュニケーション案内』2015年3月31日発行
  • READYFOR『早期発見と個別治療最適化で、膵臓がんで亡くなる患者さんを減らしたい』東北大学大学院医学系研究科 古川徹
    https://readyfor.jp/projects/tohoku-PDAC
  • READYFOR株式会社『医療分野の研究者と社会の架け橋になる。資金調達とコミュニケーションを支え、研究を加速する一助を担うキュレーターの仕事』
    https://blog.readyfor.jp/n/n6574cce5d1a1

この記事の作者

たに氏|理系ライター

植物・バイオを専攻後、現在は化学系技術職として現場に立つ「書ける技術職員」。理系テーマを中心に、技術を事業や社会の言葉に翻訳する記事・コンテンツを企画・執筆。

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