大学発スタートアップの採用事情 求められる人材・職種・応募前に見るべきポイント

大学発スタートアップの採用事情|求められる人材・職種・応募前に見るべきポイント

大学発スタートアップは、大学や研究機関で生まれた研究成果をもとに、新しい事業をつくる企業です。再生医療、創薬、AI、ロボティクス、宇宙、素材、半導体、エネルギーなど、研究開発と社会実装の距離が近い領域で、多くの企業が生まれています。

経済産業省の「令和6年度大学発ベンチャー実態等調査」によると、2024年10月時点の大学発ベンチャー数は5,074社となり、過去最高を更新しています。
出典:経済産業省「令和6年度大学発ベンチャー実態等調査」

一方で、大学発スタートアップは研究成果があるだけでは成長できません。技術を製品やサービスに変えるには、研究開発だけでなく、事業開発、営業、薬事、品質保証、知財、製造、資金調達、採用、管理部門など、多様な人材が必要になります。

この記事では、大学発スタートアップの採用事情、求められる職種、評価されやすい経験、応募前に確認すべきポイントを解説します。

1. 大学発スタートアップの採用が注目される背景

大学発スタートアップが増えている背景には、研究成果を社会実装しようとする動きの広がりがあります。

大学や研究機関には、医療、素材、AI、ロボティクス、環境、宇宙など、社会課題の解決につながる研究成果が多くあります。しかし、研究成果を事業にするには、論文や実証実験だけでは不十分です。

顧客に使われる製品へ変えるには、試作品の開発、顧客課題の検証、量産・製造プロセスの整備、品質保証、規制対応、知財戦略、資金調達などを進める必要があります。

そのため、大学発スタートアップでは、研究者だけでなく、企業で実務経験を積んだ人材への需要も生まれています。

2. 大学発スタートアップで採用されやすい職種

大学発スタートアップの採用職種マップ|研究開発・エンジニア・事業開発・薬事品質・コーポレート

大学発スタートアップの採用職種は、企業の技術領域や事業フェーズによって大きく異なります。

たとえば、創薬・再生医療系では研究開発、薬事、品質保証、臨床開発などが重要になりやすく、AI・ロボティクス系ではソフトウェア、機械、制御、データサイエンスなどの職種が必要になることがあります。素材・エネルギー系では、研究開発に加えて、生産技術、製造、品質管理、事業開発が重視されるケースもあります。

ここでは、大学発スタートアップで比較的募集されやすい職種を、領域ごとの違いを踏まえて整理します。

研究開発職

研究開発職は、大学発スタートアップの中核になりやすい職種です。大学や研究機関で生まれた技術をもとに、再現性、性能、応用可能性、実用化への課題を検証します。評価されやすい経験は、大きく次の3つです。

  • 研究を設計する力研究テーマの設計、仮説設定、実験計画など
  • 技術を検証する力実験条件の改善、評価手法の構築、再現性の向上など
  • 成果を外部に伝える力論文、特許、学会発表、共同研究など

ただし、論文数だけで評価されるわけではありません。企業では、「その研究が何を可能にしたのか」「事業上どの課題に使えるのか」まで説明できることが重要です。

エンジニア職

エンジニア職は、すべての大学発スタートアップで必ず募集されるわけではありません。AI、ロボティクス、宇宙、半導体、医療機器、ソフトウェアなど、技術の実装やシステム化が重要な領域で採用ニーズが出やすい職種です。評価されやすい経験は、大きく次の3つです。

  • 研究成果を実装する力研究コードのプロダクト化、ソフトウェア開発、システム設計など
  • 実環境で検証する力実機検証、フィールドテスト、センサー・制御・画像処理など
  • 運用・改善まで見据える力MLOps、クラウド、品質改善、技術負債の解消など

一方で、創薬、バイオ、素材などの企業では、一般的なソフトウェアエンジニアよりも、研究開発、解析、装置開発、生産技術などの職種が中心になる場合もあります。応募時には、企業の技術領域と募集職種の必須要件を確認することが重要です。

事業開発・BizDev

大学発スタートアップでは、技術はあっても市場がまだ明確でないことがあります。そのため、顧客課題を見つけ、技術の用途を設計し、PoCや共同開発へつなげる事業開発人材が必要になる場合があります。評価されやすい経験は、大きく次の3つです。

  • 顧客課題を見つける力顧客ヒアリング、業界理解、課題整理など
  • 技術を用途へつなげる力PoC設計、共同開発、技術要件への変換など
  • 社外を動かす力法人営業、アライアンス、導入提案、大企業との折衝など

大学発スタートアップのBizDevは、完成した商品を売る営業とは少し違います。顧客と一緒に「この技術をどこに使えるか」を探す仕事に近いです。

薬事・品質保証・規制対応

医療機器、再生医療、創薬、食品、素材、エネルギーなどの領域では、規制対応や品質保証の経験が重要になることがあります。研究成果が優れていても、安全性や品質の要件を満たさなければ社会実装はできません。評価されやすい経験は、大きく次の3つです。

  • 規制を理解する力薬機法、GMP、GCP、GLP、ISOなど
  • 品質の仕組みをつくる力QMS構築、文書管理、監査対応など
  • 研究開発と実装をつなぐ力研究部門・製造部門との連携、当局対応、申請資料作成など

大学発スタートアップでは、規制や品質の仕組みをゼロから整える場面もあります。大企業で制度を運用した経験だけでなく、小さな組織に合わせて必要な仕組みを設計できる力が求められます。

コーポレート・管理部門

大学発スタートアップでは、資金調達、補助金、知財、契約、採用、人事制度、経理、法務なども重要です。特に研究開発型の企業では、売上が立つ前から資金調達や共同研究契約を進める必要があります。評価されやすい経験は、大きく次の3つです。

  • 資金と契約を支える力資金調達、補助金、共同研究契約、投資家対応など
  • 知財・法務を整える力特許管理、ライセンス契約、契約審査など
  • 組織づくりを支える力採用、人事制度、経理、労務、管理体制づくりなど

大学発スタートアップのコーポレート職は、単なる事務処理ではありません。研究開発と事業化を支える基盤をつくる役割です。

3. 大学発スタートアップが採用で見ているポイント

大学発スタートアップの採用で見られる3つのポイント|事業課題への接続・不確実性への対応・役割を広げる力

大学発スタートアップの採用では、専門スキルだけでなく、事業化に向けた姿勢も見られます。特に重要なのは、次の3点です。

研究や技術を事業課題に接続できるか

大学発スタートアップでは、技術の独自性が重要です。しかし採用では、技術を理解しているだけでなく、その技術がどの課題を解決するのかを考えられる人が評価されます。

たとえば、材料研究であれば、性能だけでなく、量産性、コスト、耐久性、顧客用途まで考えられるかが見られます。AIであれば、モデル精度だけでなく、データ品質、運用環境、導入先の業務フローまで考えられるかが重要です。

不確実な状況で動けるか

大学発スタートアップでは、事業の正解が最初から決まっていないことが多くあります。顧客が誰なのか、どの用途が有望なのか、技術がどこまで実用化できるのかを、試行錯誤しながら確かめていきます。

そのため、情報が少ない中で仮説を立てた経験、計画通りに進まない状況で修正した経験、顧客や共同研究先と調整した経験、失敗から次の打ち手につなげた経験などが評価されます。完成された環境で成果を出した経験だけでなく、曖昧な状況で前に進めた経験が重要です。

役割を広げられるか

大学発スタートアップでは、職種の境界が明確でないことがあります。研究開発職が顧客ヒアリングに参加したり、事業開発職が技術資料を読み込み、研究者と議論したりする場面もあります。

管理部門でも、採用、補助金、契約、投資家対応などを横断して担当することがあります。そのため、「自分の専門外だから関わらない」という姿勢は合いにくいです。専門性を持ちながら、周辺領域にも関われる人が評価されやすくなります。

4. 経験別に評価されやすいポイント

大学発スタートアップでは、さまざまなバックグラウンドの人材が活躍できます。ただし、経験の見せ方は転職元や職種によって変わります。

アカデミア・博士・ポスドク出身者

アカデミア出身者は、研究テーマそのものよりも、研究を進める力を伝えることが重要です。評価されやすい経験は、大きく次の3つです。

  • 研究を前に進める力仮説設定、実験設計、データ解析、プロトコル標準化など
  • 周囲を巻き込む力共同研究、学生指導、研究費申請、研究室内の標準化など
  • 成果を伝える力論文執筆、学会発表、査読対応、技術資料作成など

すべてを並べる必要はありません。応募先の職種や事業フェーズに近い経験を選び、「どの課題に対して、どのように行動し、何が変わったか」まで書くことが重要です。ポスドクや博士課程の経験は、企業経験の代替ではなく、独自の職務経験として評価されます。重要なのは、論文数ではなく、自ら課題を設定し、どのように成果を出したかを伝えることです。

大企業出身者

大企業出身者の経験が評価されやすいのは、大学発スタートアップが研究成果を製品や事業へつなげる段階です。評価されやすい経験は、職種によって異なります。

  • 研究開発・生産技術出身者試作から量産、製造条件の改善、品質基準の設計など
  • 薬事・品質保証出身者規制対応、当局対応、QMS構築、監査対応など
  • 営業・事業開発出身者顧客開拓、PoC設計、共同開発、販売チャネルづくりなど
  • 管理部門出身者契約、知財、資金調達、採用、人事制度づくりなど

ただし、大企業のルールをそのまま持ち込むだけでは評価されにくいです。限られた人員・予算・時間の中で、何を優先すべきかを考えられることが重要です。

スタートアップ出身者

スタートアップ経験者は、スピード感や役割の広さへの適応力が評価されます。ただし、大学発スタートアップでは、通常のWebサービス系スタートアップとは時間軸が異なることがあります。DeepTech領域では、研究開発や規制対応に時間がかかるため、短期的なKPIだけで判断できない場面もあります。評価されやすい経験は、大きく次の3つです。

  • 事業を立ち上げる力事業立ち上げ、顧客開拓、プロダクト開発など
  • 組織をつくる力採用、組織づくり、オペレーション構築など
  • 不確実性に対応する力PoC推進、資金調達支援、方針転換への対応など

スピード感だけでなく、長期の研究開発を支える粘り強さも求められます。

5. 採用フェーズごとに求められる人材は変わる

大学発スタートアップのフェーズ別に求められる人材|創業初期・PoC共同研究・商用化量産化

大学発スタートアップでは、企業フェーズによって採用ニーズが大きく変わります。

創業初期

創業初期は、研究成果をもとに事業仮説をつくる段階です。この時期は、創業者や研究者に近い距離で動ける人材が求められます。研究開発の中核を担える人、技術の用途探索ができる人、最初の顧客候補を探せる人、補助金や資金調達を支援できる人などが必要になることがあります。制度や分業は整っていないため、自分で仕事を定義する力が必要です。

PoC・共同研究フェーズ

PoCや共同研究が進む段階では、技術を顧客課題に合わせて検証する力が必要になります。この時期は、研究開発と事業開発の橋渡しができる人材が重要です。顧客課題を整理できる人、技術要件を定義できる人、共同研究やPoCを推進できる人、研究者と顧客の間に立てる人などが求められやすくなります。単に技術を説明するだけでなく、顧客が使える形に落とし込む力が求められます。

商用化・量産化フェーズ

商用化や量産化が見えてくると、採用ニーズは一気に広がります。研究開発だけでなく、品質保証、製造、営業、カスタマーサクセス、管理部門などが必要になります。この段階では、量産化・生産技術、品質保証・規制対応、法人営業・事業開発、サプライチェーン構築、採用・人事・経理・法務などの経験が評価されやすくなります。大企業や成熟企業での経験も活かしやすいフェーズです。

6. 書類選考で見られやすいポイント

大学発スタートアップの書類選考では、職務経歴書の書き方も重要です。

通過しにくいのは、研究テーマだけを書いている、担当業務を羅列している、会社名や肩書きに頼っている、成果の再現性が見えないといった書き方です。

一方で、通過しやすい書き方は、どの課題に取り組んだか、自分の役割は何か、どのように仮説を立てて行動したか、結果として何が変わったかが伝わるものです。

志望動機は職務経歴書に必ず詳しく書く必要はありません。ただし、自己PRや職務要約の中で、応募先の技術領域や事業フェーズと自分の経験がどう接続するかを一文で示せると、採用側に伝わりやすくなります。大学発スタートアップでは、「何をしてきたか」だけでなく、「その経験を入社後にどう再現できるか」が見られます。

7. 応募前に確認したいポイント

大学発スタートアップへ応募する前には、企業の現在地を確認しましょう。同じ大学発スタートアップでも、研究段階の企業と商用化段階の企業では、働き方や求められる役割が大きく異なります。確認したいポイントは次のとおりです。

  • 技術は研究段階か、PoC段階か、商用化段階か
  • 顧客や導入先はあるか
  • 共同研究先や提携先はどこか
  • 規制対応や品質保証が必要な領域か
  • 入社後に期待される役割は明確か
  • 兼務や役割変更がどの程度あるか

特に面接では、「入社後6ヶ月で期待される成果」を確認することが重要です。求人票に書かれている職種名だけでは、実際の役割がわからないこともあります。

8. 大学発スタートアップに向いている人・向いていない人

大学発スタートアップには、向いている人と向いていない人がいます。

向いている人

  • 技術や研究成果の社会実装に関心がある
  • 不確実な状況でも仮説を立てて動ける
  • 自分の専門外の領域にも関われる
  • 研究者、顧客、事業側の間に立てる
  • 長期の技術開発に粘り強く向き合える

向いていない人

  • 担当範囲が明確でないと動きにくい
  • 完成された制度や分業を前提にしたい
  • 短期間で成果が見えないと不安になる
  • 研究や技術への関心が薄い
  • 前職のルールをそのまま持ち込みたい

大学発スタートアップでは、専門性と柔軟性の両方が求められます。

よくある質問

Q. 研究者でなくても大学発スタートアップへ転職できますか?

募集している職種で要件を満たしていれば、研究者でなくても応募できます。大学発スタートアップでは、研究開発職だけでなく、事業開発、営業、薬事、品質保証、知財、コーポレートなどの職種を募集している場合があります。ただし、企業や職種によって必須要件は大きく異なります。応募前に、募集要項の必須スキル、歓迎要件、技術理解の必要度を確認しましょう。技術の専門家である必要はない職種でも、技術や研究成果を理解しようとする姿勢は求められます。

Q. 博士号がないと採用されにくいですか?

職種によります。研究開発職では博士号や専門研究の経験が評価されることがあります。一方で、事業開発、営業、コーポレート、品質保証、薬事、PMなどでは、博士号よりも実務経験が重視されることもあります。重要なのは、応募職種で求められる役割に対して、自分の経験がどう活かせるかを説明できることです。

Q. 大企業出身者は大学発スタートアップで評価されますか?

評価される場面は多くあります。特に、量産化、品質保証、規制対応、事業開発、法人営業、知財、法務、人事、財務などは、大企業で経験を積みやすい領域です。ただし、大企業の制度をそのまま持ち込むのではなく、スタートアップの規模やフェーズに合わせて柔軟に動けることが重要です。

Q. アカデミア出身でも企業経験がないと不利ですか?

一概には言えません。ポスドク、特任研究員、博士課程での研究活動も、仮説検証、実験設計、データ解析、共同研究、研究費申請などの経験として評価されます。企業経験の有無よりも、研究を通じてどのように課題を設定し、成果につなげたかを説明できることが重要です。

Q. 応募前に何を準備すべきですか?

まず、応募先の技術と事業フェーズを理解しましょう。そのうえで、自分の経験を「どの課題に取り組んだか」「自分は何を判断し、どう動いたか」「その経験を応募先でどう活かせるか」の3点で整理すると、書類や面接で伝えやすくなります。大学発スタートアップでは、経験の肩書きよりも、課題解決のプロセスが見られます。

まとめ

大学発スタートアップは、研究成果を社会実装する担い手として増えています。一方で、研究成果があるだけでは事業は成立しません。研究開発、事業開発、営業、薬事、品質保証、知財、製造、コーポレートなど、多様な人材が必要になります。

  • 採用で見られるのは専門性だけではない=技術を事業課題へ接続できるか、不確実な状況で動けるか、専門外の人と協働できるか
  • 会社名や大学名だけで判断せず、企業のフェーズ・技術の現在地・期待される役割を確認する
  • 経験は「何をしたか」ではなく「どの課題に向き合い、どう解決し、入社後にどう再現できるか」で伝える

大学発スタートアップへの転職では、専門性と柔軟性の両方を、自分の経験に沿って示すことが重要です。

この記事の作者

ショクレキ代行

ショクレキでは、ヒアリングをもとに職務経歴書を一緒に作成するサービスを提供しています。「大学発スタートアップへの転職を考えているが書類をどう書けばいいかわからない」「書類選考が通らない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

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