熊本大学発スタートアップ10選|地域産業と研究力をつなぐ新産業

熊本大学発スタートアップ10選|地域産業と研究力をつなぐ新産業

熊本大学発スタートアップは、計測センサー、インフラ点検ロボット、マグネシウム合金、AI、医療機器、創薬、検査など、工場や社会インフラ、医療の現場に近い領域に広がっています。

熊本大学は、大学発の企業に「熊本大学発ベンチャー」などの認定や称号を与えており、紹介する10社にも、こうした認定や称号を受けた企業が含まれます。

大学発スタートアップの面白さは、単に大学名が付いていることではありません。研究室や研究者、学生、卒業生、大学周辺の支援機関が持つ知見が、医療、ものづくり、AI、環境、教育、社会インフラの課題と結びつき、事業として社会へ出ていくところにあります。

この記事では、熊本大学発ベンチャー一覧や大学ニュース、各社公式サイトなどで熊本大学との関係を確認しやすい企業の中から、注目したい10社を紹介します。

熊本大学発スタートアップを見るポイント

1つ目は、配管の減肉を測るセンサーやインフラ点検ロボット、マグネシウム合金など、工場や社会インフラ、輸送機器の現場に近い計測・ロボット・素材の企業があることです。

2つ目は、核酸医薬や遺伝性の腎臓病の治療薬、尿検査、体に貼るエコー、てんかん発作の予知など、医学・薬学の研究成果を医薬品や医療機器、検査へつなげる企業が多いことです。

3つ目は、大学の教員が研究成果をもとに創業した企業に加え、学生が在学中に創業した企業もあり、創業の形が幅広いことです。

熊本大学発スタートアップ カオスマップ(領域別スタートアップ一覧)

熊本大学発スタートアップ10選

ここからは、領域別に10社を紹介します。

資金調達、提携、製品リリースなどの最新情報は、各社の公式発表もあわせて確認してください。

計測・ロボット・素材

1. CAST|配管の減肉を付けたまま測るセンサー

CAST(キャスト)は、2019年9月に熊本市で設立された熊本大学発のセンサー企業です。

工場の配管は腐食や摩耗で内側から薄くなり、定期点検の合間に進む減肉は、漏えいや火災といった事故の原因になります。

同社の「ULTRACK」は、ゾルゲルスプレー法で作る耐熱・薄型の超音波センサーを配管に取り付けたまま、肉厚を決めた間隔で自動的に測るシステムです。製油所や化学プラント、発電所などへ提供しています。

企業ページ株式会社CAST

2. 大和インフラロボティクス|トンネルをロボット、橋をAIで点検する

大和インフラロボティクスは、2024年8月にIRISA株式会社として設立され、2025年11月に現在の社名へ改めた熊本大学発のロボット企業です。

橋やトンネルの点検は、足場の設置や交通規制、多くの人員の配置が必要になることがあり、手間と費用がかかる作業です。

同社の点検ロボット「SASORI」は、GPSが届かないトンネル内でも自律走行し、撮影した映像をAIが解析して、ひび割れや腐食などの損傷を現場で判定します。橋梁点検AIソフトウェア「HASHITARO」(橋太郎)も開発しています。

企業ページ株式会社大和インフラロボティクス

3. MG Port|熊本大学のマグネシウム合金の実用化を進める

MG Port(エムジーポート)は、熊本大学が開発してきた新しいマグネシウム合金の実用化を進めるため、2021年3月に設立された企業です。

市販のマグネシウム合金は高温で発火しやすく、熱伝導率もアルミニウム系合金の1/2〜2/3程度にとどまるため、航空機や熱を逃がす部材には使いにくい素材でした。

同社は、熊本大学との知的財産権に関する合意のもとで、発火温度が約1,050℃の不燃合金や、熱伝導率が120W/m・Kの高熱伝導合金などを対象に、用途の開拓と素材企業とのネットワーキングを進めています。

企業ページ株式会社MG Port

AI・医療機器

4. もみじAI|企業ごとの課題に合わせてAIシステムを開発する

もみじAIは、熊本大学に在学中の学生2人が2024年11月に設立し、2025年2月に熊本大学から「熊本大学発ベンチャー」の称号を授与されたAI企業です。

地方局を中心とした放送現場では、広告会社から届く「CM進行表」と自局で作る「放送運行表」を手作業で突合しており、熊本放送では関連業務に月150時間以上の工数がかかっていました。

同社は、AI-OCRと独自の突合ロジックで帳票の突合を自動で行うシステムを、2025年10月から熊本放送と共同で開発しています。DXシステム開発、AIシステム開発、AI PoCを、企業ごとの課題に合わせたオーダーメイドで手がけます。

企業ページ株式会社もみじAI

5. クアドリティクス|心拍の揺らぎでてんかん発作の予知を目指す

クアドリティクスは、臨床医学・情報学・電子工学の研究者が2012年に始めた研究をもとに、2018年2月に京都大学・熊本大学発のベンチャーとして設立された医療機器企業です。共同創業者でCTOの山川俊貴氏は、熊本大学大学院先導機構の准教授です。

てんかんの患者のうち、薬で発作を完全には抑えられない人は約3割とされ、発作がいつ起こるか分からない状態が続きます。

同社は、ウェアラブル心電計で測った心拍変動をスマートフォンのアプリで解析し、発作の兆候を知らせるプログラム医療機器を、薬事承認に向けて開発しています。この開発品は2023年3月、厚生労働省の「プログラム医療機器に係る優先的な審査等」の対象品目に指定されました。

企業ページクアドリティクス株式会社

6. サーモンテック|体に貼るエコープローブを開発する

サーモンテックは、熊本大学で超音波を研究してきた田邉将之氏と、企業経営の経験を持つ山本千晴氏が2022年3月に共同で設立し、同じ月に熊本大学発ベンチャーの認定を受けた医療機器企業です。

エコー(超音波診断装置)の検査では、プローブを手で持って体に押し当てる必要があり、長時間の撮影が困難です。

同社は、ゾルゲル複合圧電体を使う薄く柔軟なエコープローブを開発しています。心電図の電極パッドのように体に貼ったままにでき、手で押し当てずに長時間の撮影に対応できるよう設計されています。2025年3月にはNOK株式会社とウェアラブルエコーセンサの共同研究を始め、両社で研究開発用の試作機の提供を開始しました。

企業ページ株式会社サーモンテック

創薬・検査・バイオ

7. StapleBio|mRNAの立体構造を変える核酸医薬を開発する

StapleBio(ステープルバイオ)は、熊本大学大学院の勝田陽介准教授らが開発した「Staple核酸」を中核技術に、2021年11月に設立された熊本大学発のベンチャー企業です。

核酸医薬には、標的のmRNAとよく似た配列を持つ別のmRNAにも結合して副作用を起こす恐れや、体内の酵素で分解されやすいといった課題があります。

Staple核酸は、標的のmRNA上の離れた2か所に結合してrG4構造を形づくり、タンパク質の合成を抑えたり増やしたりします。配列が合うことと立体構造ができることの両方が効果の条件で、同社は希少疾患などを対象とした医薬品の研究開発を進めています。

企業ページ株式会社StapleBio

8. Uromics|自宅で採った尿の成分を精密に測る

Uromics(ユーロミクス)は、2025年4月に熊本市で設立された熊本大学発のスタートアップです。代表取締役の永芳友氏は熊本大学大学院生命科学研究部の特任講師で、修飾ヌクレオシドの研究を続けてきました。

体の状態を詳しく調べる検査の多くは医療機関での採血を前提としており、通院が難しい人ほど検査を受ける機会が減る恐れがあります。

同社は、尿に含まれる修飾ヌクレオシドをLC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)で測り、結果をスマートフォンのアプリで知らせる尿検査システムを開発しています。実用化すれば、利用者は自宅で少量の尿を採って返送するだけで検査を受けられるようになります。

企業ページ株式会社Uromics

9. GALTS Pharma|遺伝性の腎臓病の治療薬を開発する

GALTS Pharma(ガルツファルマ)は、熊本大学でアルポート症候群の研究を続けてきた甲斐広文氏が2023年8月に設立し、2025年4月に熊本大学から「熊本大学発ベンチャー企業」の称号を受けた創薬企業です。

アルポート症候群は若いうちに末期腎不全へ進みやすい遺伝性の病気で、既存の薬だけでは進行を止めることは困難です。

同社は、Nrf2とKeap1の結合を妨げる低分子化合物「GP-051」を、飲み薬の候補として開発しています。2025年度には、GP-051を治験へ進めるための日本医療研究開発機構(AMED)の事業に、研究開発連携企業として参画しています。

企業ページ株式会社GALTS Pharma

10. C-HASプラス|線虫の一生から素材の健康効果を数値にする

C-HASプラス(シーハスプラス)は、2019年4月に株式会社くまもとファーマとして熊本市で設立され、2022年4月に現在の社名へ変更した熊本大学発のバイオ企業です。

健康食品や化粧品の素材が健康寿命に与える影響をマウスで確かめるには、マウスの寿命が約3年あるため、年単位の時間と飼育の費用がかかります。

同社の評価システム「C-HAS」は、寿命が約20日の線虫を一定の間隔で撮影し、活発に動ける期間を画像から自動で判定して、健康寿命として数値にします。この評価と素材の探索を、食品・化粧品・医薬品を開発する企業へ提供しています。

企業ページ株式会社C-HASプラス

熊本大学発スタートアップに多い注目領域

この記事で紹介した10社では、CASTや大和インフラロボティクス、MG Portのような計測・ロボット・素材系、StapleBio、GALTS Pharma、Uromics、C-HASプラスのような創薬・検査・バイオ系、クアドリティクスやサーモンテックのような医療機器系、もみじAIのようなAI系が並びます。

まとめ

熊本大学発スタートアップには、配管のセンサーやインフラ点検ロボット、マグネシウム合金から、核酸医薬や治療薬、尿検査、医療機器、AIまで、大学の研究成果を産業や医療の現場へつなげる企業が並んでいます。教員の研究から生まれた企業に加え、学生が在学中に創業した企業もあり、熊本大学から生まれた企業の技術が、工場や医療、地域の業務の現場へ広がり始めています。

この記事の作者

ショクレキ代行

ショクレキでは、ヒアリングをもとに職務経歴書を一緒に作成するサービスを提供しています。「大学発スタートアップに応募したいが、研究経験をどう書けばいいかわからない」「書類選考が通らない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

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