地熱で24時間発電する次世代地熱発電を研究する Fervo Energy(米国発)

地熱で24時間発電する「次世代地熱発電」を研究【Fervo Energy|米国発】

生成AIやデータセンターの普及にともない、天候に左右されない脱炭素電源の確保が課題になっています。この課題に挑むのが、米国のファーボ・エナジー(Fervo Energy)です。同社は石油・ガスの掘削で実用化された水平掘削(井戸を横方向へ延ばす技術)を、地熱発電に応用しました。2026年5月には、新規株式公開で約19億ドル(約2,850億円)を調達しています。

地熱発電の課題

Fervo Energyの紹介と、地熱発電の適地が火山地帯に集中し、井戸の掘削費が高いという課題を示す図

発電の適地が火山地帯に集中

地熱発電の適地は、火山やプレートの境目に近い地域に集中しています。地下の熱水がたまる地域が少ないためで、米国で地熱が総発電量に占める割合は2025年時点で約0.4%です。この条件のままでは、地熱発電を増やせる地域が限られます。

掘削費が高く投資負担が大きい

掘削費は発電所の建設費の約3割から6割程度を占めます。高温の岩盤は数千メートルの深さにあり、深く掘るほど費用がかさむためです。費用が高い状況では、発電所の建設に踏み切れる事業者が絞られます。

FrontJournalの解説
  • 地熱発電地下の熱で生じた蒸気や熱水の力でタービンを回し、電気を得る発電方式。燃料の燃焼をともなわないため、発電時にCO2をほとんど出さない。
  • 熱水がたまる地域地下の亀裂に高温の水が自然に蓄えられている場所。火山やプレートの境目の近くに多く、従来の地熱発電はこの地形を前提としてきた。

Fervo Energyが「次世代地熱発電」を研究

次世代地熱発電の研究を示す図。水平掘削で発電の適地が広がり、光ファイバーの計測で掘削費が下がる

課題解決に挑むFervo Energy

Fervo Energyは、地下の高温の岩盤から熱を取り出す次世代地熱発電を手がけています。2017年にティム・ラティマー氏とジャック・ノーベック氏が創業し、本社はテキサス州ヒューストンにあります。

水平掘削で発電の適地が拡大

水平掘削により、熱水が乏しい地域でも高温の岩盤から熱を取り出せます。従来の地熱発電は、地下に自然にたまった熱水を井戸でくみ上げてきました。同社は水平掘削で井戸を横方向へ延ばし、そこから岩盤を加圧して亀裂を広げます。この亀裂に水を送って熱を回収する方式は、増進地熱システム(EGS)と呼ばれています。

光ファイバーで掘削費を低減

井戸に通した光ファイバーが、地下の状態を知る手がかりになります。同社は光ファイバーの計測とデータ解析で、亀裂の形を随時把握します。この積み重ねで、掘削日数は初号井の約70日から21日へ短縮しました。最初の4本の井戸では、掘削費が約940万ドル(約14億円)から約480万ドル(約7億円)へ下がりました。

FrontJournalの解説
  • 水平掘削垂直に掘り下げた井戸を、目的の地層に沿って水平方向へ掘り進める技術。石油・ガスの分野で普及し、1本の井戸が地層に接する長さを伸ばせる。
  • 増進地熱システム(EGS)高温の岩盤に人工的な亀裂を形成し、そこへ水を送って熱を回収する方式。熱水が乏しい地域でも地熱発電を成り立たせる。

次世代地熱発電の未来

次世代地熱発電の未来を示す図。天候に左右されず連続運転し、ユタ州の発電所が送電の開始を控え、新規株式公開で資金を集めた

24時間の脱炭素電力が可能に

次世代地熱発電は、昼夜を問わず一定の出力で運転する方式です。太陽光や風力の発電量は、日照や風の強さに応じて変わります。地下の熱は天候の影響を受けにくいため、連続した運転に向いています。ネバダ州の実証設備「Project Red」は、12か月以上にわたり出力を保ったまま運転しました。

データセンターの脱炭素を目指す

Fervo Energyは、電力を多く使うデータセンターへの供給を見据えています。発電所「Cape Station」はユタ州ビーバー郡にあり、2026年後半に送電を始める計画です。同社は第1期の約100メガワットを電力会社の南カリフォルニア・エジソンなどへ供給し、2027年初頭の稼働を見込みます。電力購入契約(PPA)で販売先が決まっているため、電力会社を通じて脱炭素電源がデータセンターへ届く道筋がつきます。

上場で約2,850億円を調達

Fervo Energyは2026年5月に新規株式公開で約19億ドル(約2,850億円)を調達しました。2025年12月にはシリーズEで約4.62億ドル(約693億円)を集め、Googleも投資家として参加しています。2026年3月には、Cape Stationの第1期に約4.21億ドル(約632億円)の融資がまとまりました。資金の裏づけにより、次世代地熱発電は実証の段階から発電事業へ移り始めています。

FrontJournalの解説
  • メガワット(MW)発電できる電力の大きさを表す単位。1メガワットは1,000キロワットにあたる。
  • 電力購入契約(PPA)発電事業者と電力の買い手が、期間と価格を決めて結ぶ売買契約。発電所の建設前に収入の見通しが立ち、資金を集めやすくなる。

まとめ

地熱発電は長く適地の制約を受けてきましたが、Fervo Energyは水平掘削でその範囲を広げています。掘削日数の短縮で費用を下げ、商用規模の発電所が送電の開始を控える段階に入りました。電力需要の拡大と脱炭素の両立という課題は、日本にも共通します。日本の地熱資源量は約2,347万キロワットで、世界第3位です。FrontJournal編集部は、次世代地熱発電が安定した脱炭素電源の選択肢に加わることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Fervo Energy 公式(Technology/ニュースリリース)、Canary Media、米エネルギー情報局(EIA)。

この記事の作者

FrontJournal編集部

ディープテックを、ビジネスパーソンの視点でわかりやすく紹介するメディアです。

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら