モルフォ|「イメージングAI」を研究

株式会社モルフォ(Morpho, Inc.)

モルフォ「イメージングAI」を研究|研究領域=画像処理とAIを組み合わせる技術/強み=少ない演算資源で高速に処理する/将来性=携帯端末から車載や3D計測へ広がる

企業紹介|株式会社モルフォとは?

暗い場所や動きのある場面でも鮮明な画像を得る技術として、注目を集める「イメージングAI」。株式会社モルフォは、その「イメージングAI」の社会実装を目指す、東京大学発の画像処理系ディープテック企業です。手ブレ補正や超解像などの画像処理ソフトウェアと、推論エンジン「SoftNeuro」を、スマートフォンや車載機器のメーカーへ提供しています。

キーワード「イメージングAI」

「イメージングAI」は、デジタル画像処理とディープラーニングを組み合わせて、画像を補正したり認識したりする技術です。特徴は、演算資源(計算に使えるCPUやメモリの余力)の限られたエッジデバイスの上でも動かせる点にあります。スマートフォンの夜景撮影や車載カメラの物体認識で、撮影したその場で処理を完結できます。

市場課題|小型カメラとエッジAIの制約

現状のカメラ画像の課題|現状は、端末の制約で画質と速度が落ちる/小型カメラは暗所で画質低下/端末上のAI実行は負荷が重い

小型カメラは暗所で画質が落ちる

スマートフォンや車載カメラのような小型のカメラは、暗い場所で画質が落ちやすくなります。イメージセンサー(光を電気信号に変える半導体部品)が小さいほど取り込める光が少なく、露光を延ばせば手ブレ、感度を上げればノイズが増えるからです。画質が撮影条件に左右され、夜間の記録のように明るさを選べない用途ほど扱いにくくなります。

端末上でのAI実行は負荷が重い

学習済みのディープラーニングモデルを端末で動かすには、大きな負荷がかかります。端末ではクラウド(インターネット越しの大型の計算機)のように演算資源も電力も使えず、さらにモデルは学習に使ったフレームワークごとに形式が異なるためです。最適化の手間が増えるほど、認識技術を製品へ載せる期間は延びやすくなります。

他にも、端末が薄くなるほど厳しいレンズの厚みの制約、逆光や街灯の下で生じる明暗差への対応、メーカーごとに異なるイメージセンサーへの合わせ込み、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • エッジデバイススマートフォンや車載機器のように、利用者の手元でデータを処理する機器。通信を介さずに処理できる一方、演算資源と電力に制約がある。
  • ディープラーニング多層のニューラルネットワークに大量のデータを学習させ、特徴を自動的に見つけ出す機械学習の手法。画像認識の精度を大きく引き上げた。
  • フレームワークAIの学習に使うソフトウェアの土台。どれを使うかによって、学習済みモデルの保存形式や実行の作法が変わる。

モルフォの強み|イメージングAI

モルフォが「イメージングAI」を開発|今後は、端末の中だけで画質の改善が可能に/複数枚合成で暗所の画質を補う/推論エンジンで実行を高速化

複数枚合成で暗所の画質を補う

1枚の露光で明るさを稼ぐ方法では、明るさと手ブレのどちらかを諦めることになります。

同社が積み上げてきたのは、複数枚の画像の重ね合わせによる画像処理です。静止画向けの「PhotoSolid」と動画向けの「MovieSolid」は、位置のずれを画素の単位で合わせて合成し、手ブレとノイズを抑えます。同じ考え方は、複数枚の情報から解像度を引き上げる超解像の「Morpho Super-Zoom」にも共通です。近年はディープラーニングを重ね、ブレやボケを取り除く「Deep Deblur」も提供しています。

推論エンジンで実行を高速化

従来は、搭載する機器の演算装置ごとに、実行の手順を人手で書き直す必要がありました。

同社が開発した「SoftNeuro」は、学習の成果をさまざまな機器の上で高速に実行する推論エンジンです。同じ計算でも、得意な順序やまとめ方は演算装置ごとに違います。「SoftNeuro」は搭載先を見極め、その機器で最も速い計算の並べ方を選び直す仕組みです。学習と実行を切り分けられるため、認識技術を機種ごとに作り直す負担が小さくなります。同社はこの推論エンジンと画像処理を組み合わせ、端末の上で完結する処理を各社の製品へ届けています。

FrontJournalの解説
  • 超解像解像度の低い画像から、細部を推定して解像度の高い画像を作り出す処理。複数枚の情報や学習済みモデルを手がかりに用いる。
  • 推論エンジン学習済みモデルを実際の機器で動かすためのソフトウェア。同じモデルでも、計算の並べ方によって処理速度が変わる。

イメージングAIの未来|車載と3D計測へ

画像を読み解くAIが変える未来|携帯端末から車載や3D計測へ広がる/携帯端末の写真を鮮明に保つ/車載カメラの認識を高める/現実空間を3Dで再現する

スマートフォンの写真を支える

同社の画像処理は、スマートフォンのカメラで使われています。手ブレ補正やノイズ除去、超解像、ダイナミックレンジ補正まで、場面ごとに製品がそろっています。スマートデバイス向けの累計ライセンス数は、2021年1月末時点で35億件を超えました。利用者から見れば、シャッターを押すだけで夜景も動く被写体も写ります。

車載カメラの認識を高める

次に広がっているのは、車載カメラの映像を読み解く用途です。同社は車載向けに「Morpho Automotive Suite」を用意し、顧客の要望に応じたAIの調整や追加開発も行います。明暗差の大きいトンネルの出入口や夜間の走行では、認識にかける前に画像を整えることが精度を左右します。イメージセンサーを手がけるソニーセミコンダクタソリューションズとは、2024年9月に資本業務提携を結びました。

現実空間の3D化を目指す

その先に見据えているのは、カメラの映像による現実空間の立体再現です。従来の3D計測には高価な専用機材が必要で、現場では導入の負担が大きいといわれています。2026年6月には、複数の画像から立体形状を復元するフォトグラメトリの技術を用いた「Morpho Photogrammetry Toolkit」を発表しました。画像を「見る」処理から「測る」処理へと、「イメージングAI」の守備範囲を広げることを目指します。

FrontJournalの解説
  • ダイナミックレンジ補正明るい部分と暗い部分が同時に写る場面で、白飛びや黒つぶれを抑えて階調を残す処理。逆光やトンネルの出入口で効果が大きい。
  • フォトグラメトリ角度を変えて撮影した複数の画像から、被写体の立体形状を復元する技術。専用の計測機器を使わずに3Dのデータを作れる。

会社概要|モルフォの事業内容・設立背景

東京大学の研究から創業

株式会社モルフォは、2004年5月に東京都港区南青山で設立されました。創業したのは、東京大学でコンピュータビジョンとコンピュータグラフィックスを研究していた技術者たちです。設立から数か月後には文京区本郷へ移り、東京大学エッジキャピタルの運営するファンドから出資を受けました。現在は代表取締役社長の平賀督基氏が率いています。

大手企業との提携を重ねる

同社は事業会社との提携を重ねてきました。2007年10月にNTTドコモ、2015年12月にデンソーと資本業務提携を結びました。2017年11月にはみらかホールディングスと資本提携し、応用先は携帯端末から車載、医療の周辺へ広がっています。2019年6月にはクアルコムと、モバイルカメラの機能強化で技術提携しました。近年はイメージセンサーを手がけるソニーセミコンダクタソリューションズとも組み、センサーと画像処理を一体で開発しています。

上場後は事業収入で開発

東京証券取引所マザーズ市場への上場は、2011年7月でした。現在はグロース市場に区分されています。収益を支えるのは、出荷台数に応じたロイヤリティ収入や、移植・保守のサポート収入、開発収入などです。研究開発と人材への投資を続け、車載モビリティやDXの領域へ事業の拡大を図ります。

会社情報

会社名株式会社モルフォ(Morpho, Inc.)。
所在地〒101-0054 東京都千代田区神田錦町2-2-1 KANDA SQUARE 11階 WeWork内。
設立2004年5月26日に東京都港区南青山で設立。2004年9月に文京区本郷へ移転。
代表代表取締役社長 平賀督基。
上場東京証券取引所グロース市場(証券コード3653)。2011年7月にマザーズ市場へ上場。
投資家東京大学エッジキャピタル(2004年9月に運営ファンドが出資)、NOKIA Growth Partners(2007年12月)など。
連携NTTドコモ(2007年10月)、デンソー(2015年12月)、みらかホールディングス(2017年11月)、クアルコム(2019年6月)、ソニーセミコンダクタソリューションズ(2024年9月)。
関係会社Top Data Science Ltd.(フィンランド)。2018年に子会社化し、2025年3月に持分の大半を譲渡。
技術領域「イメージングAI」。手ブレ補正「PhotoSolid」「MovieSolid」、超解像「Morpho Super-Zoom」、鮮鋭化「Deep Deblur」、推論エンジン「SoftNeuro」、車載向け「Morpho Automotive Suite」、3D復元「Morpho Photogrammetry Toolkit」。
URLhttps://www.morphoinc.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

カメラの性能は、長らくレンズとセンサーの大きさで決まってきました。手のひらに収まる端末では、その両方に厚みの制約がかかります。計算で光を補う発想が、スマートフォンのカメラを実用の水準へ押し上げました。

興味深いのは、同社が完成した製品ではなく、その中で動く技術を事業にした点です。画像を鮮明にする処理も、AIを動かす仕組みも、利用者の目には触れません。完成品の流行に左右されず、同じ技術を各社へ供給できます。見えない部分を担う立場が、20年を超えて開発を続けられた理由にも見えます。

画像を整える技術が、空間を測る技術へ踏み出しています。カメラが記録の道具から計測の道具へ変わるとき、その中心で何が動くのか。今後の展開に注目します。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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