株式会社JDSC(ジェイディーエスシー)|「アルゴリズムモジュール」を研究

株式会社JDSC(ジェイディーエスシー)

JDSC「アルゴリズムモジュール」を研究|研究領域=需要予測の計算を部品化する/強み=業種を越えて再利用できる/将来性=製造と物流の自律化を支える

企業紹介|株式会社JDSCとは?

在庫や発注の量を計算で決められる技術として、注目を集める「アルゴリズムモジュール」。株式会社JDSCは、その「アルゴリズムモジュール」の社会実装を目指す、東京大学発のAI系ディープテック企業です。需要予測や在庫最適化のシステムを、製造・物流・エネルギー等の企業へ提供しています。

キーワード「アルゴリズムモジュール」

「アルゴリズムモジュール」は、需要予測や資源の配分といった計算を、ひとまとまりの部品にしたソフトウェアです。案件ごとにAIを一から作る従来の進め方では、開発の時間と費用がかさみます。同社は業種を越えて共通する計算を部品として持ち、顧客のデータに合わせて調整して提供しています。

市場課題|基幹産業に残るAI実装の壁

現状の産業AIの課題|現状は、経験頼みでAIの活用が進みにくい/経験則の予測で在庫が偏る/実証で終わり現場に定着しにくい

経験則の需要予測で在庫が偏る

小売や製造の現場で需要予測を担ってきたのは、担当者の経験と勘です。天候や催事によって売れ行きが動くため、過去の伝票を並べるだけでは先を読みにくくなります。予測が外れるたびに在庫の過不足が生じ、値引きや欠品による損失が積み上がります。

実証で終わり現場に定着しにくい

AIの導入は、実証の段階で止まりやすくなっています。試作したモデルの精度が高くても、現場ではデータの形式や日々の運用が部署ごとに異なるため、そのままでは業務へ組み込みにくいからです。検証の費用だけが重なり、効果を確かめる前に取り組みが途切れます。

部門ごとに分かれて蓄積されたデータは、形式をそろえるだけでも手間です。他にも、稼働後も精度を保つための継続的な調整、社内でAIを扱える人材の採用の難しさ、委託先との役割分担の複雑さ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 需要予測商品や資源がいつどれだけ必要になるかを、過去の実績や外部の要因から推定すること。在庫量や生産量を決める土台となる。
  • 実証新しい技術が現場で使えるかを、限られた範囲で試して確かめる取り組み。本格導入の前段に置かれ、精度や運用の負担を検証する。

JDSCの強み|アルゴリズムの部品化

JDSCが「アルゴリズムモジュール」を開発|今後は、部品の再利用で早い実装が可能に/需要予測AIで在庫を最適化/課題設定から運用まで一貫

需要予測AIで在庫を最適化

需要予測のシステムは業種ごとに一から作り込むことが多く、導入までに時間と費用がかかります。

同社は、需要予測や在庫の配分といった計算を「アルゴリズムモジュール」として持ち、ライセンスの形で提供しています。中核にあるのが、独自開発の需要予測システム「demand insight」です。過去の販売実績に天候や催事などの外部要因を組み合わせ、商品ごとの売れ方を推定します。2025年10月には、サプライチェーン計画のソフトウェアを手がけるRELEX Solutions(フィンランドの企業)と提携しました。RELEXの基盤に日本の物流や商習慣を反映する拡張機能を、共同で開発しています。

課題設定から運用まで一貫

AIの実証と、その後の運用は別の作業です。分析を担う組織と現場を動かす組織が分かれていると、実証で得た成果は業務に定着しにくくなります。

同社は、課題の定義からモデルの開発、現場での運用までを一つの体制で担います。アカデミックパートナーには東京大学の松尾豊教授と越塚登教授が就き、研究の知見を事業へ取り込む体制です。製薬会社の営業向けの「frontconnect」やマーケティング向けの「response insight」など、業種別のサービスも運用しています。開発と現場の運用をまとめて動かすため、2026年2月にはフィジカルAIの事業開発を担う「Physical AIビジネス開発室」を新設しました。

FrontJournalの解説
  • サプライチェーン原材料の調達から生産、輸送、販売までを結んだ一連の流れ。どこか一点で在庫や納期が乱れると、全体の効率が落ちる。
  • アカデミックパートナー企業の技術開発に助言や監修で関わる研究者。大学の研究成果を事業へ持ち込む窓口となり、技術の妥当性を担保する役割を持つ。
  • フィジカルAI映像やセンサーの情報をもとに、ロボットなど物理的な機械を動かすAI。画面の中で完結せず、現実の作業を担う点が特徴である。

産業AIの未来|見守りから自律化へ

部品化されたAIが変える未来|見守りから現場の自律化へ広がる/電力データで高齢者を見守る/清掃ロボットをビルで実証/製造と物流の自律化を目指す

電力データで高齢者を見守る

高齢者の見守りでは、同社の技術がすでに使われています。照明や家電の使い方は生活のリズムに沿って変わるため、電力データからは外出の回数や睡眠、活動量の推定が可能です。同社は、そこからフレイル(加齢によって心身の働きが低下した状態)の兆しを検知する技術の特許を保有しています。2020年8月からの半年間、三重県東員町で合同会社ネコリコや東京大学の越塚登研究室らと実証実験を行い、2023年4月からは中部電力の「eフレイルナビ」へこの技術を提供しています。

清掃ロボットをビルで実証

建物の管理では、ロボットによる清掃の実用化が始まっています。清掃の現場は人手の確保が難しく、機械が担う範囲の拡大が課題です。同社は日鉄興和不動産およびソフトバンクロボティクスと連携し、スイスのLoki Robotics社が開発した清掃ロボット「Loki」の実証を2026年8月に始めました。同社の役割は、実証全体のリードと、運用の設計や他施設への横展開の支援です。

製造と物流の自律化を目指す

同社が目指すのは、製造や物流の現場を機械が自律して動かす状態です。2026年3月には、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの「フィジカル AI 開発支援プログラム」に採択されました。開発の中心にあるのは、映像と言語から動作を導くVLAと呼ばれるロボット基盤モデルです。仮想空間での事前検証と自律制御のアルゴリズム開発を組み合わせ、人手の確保が難しい作業から街づくりやインフラまで対象を広げることを目指しています。

FrontJournalの解説
  • ロボット基盤モデル多様な作業のデータをまとめて学習し、複数のロボットや作業に応用できるAIモデル。作業ごとに一から学習させる手間を減らす。
  • 自律制御機械が周囲の状況を読み取り、人の操作を待たずに次の動作を決める仕組み。想定外の配置や障害物への対応が課題となる。

会社概要|JDSCの事業内容・設立背景

東京大学の知見から創業

株式会社JDSCの始まりは、2013年に設立された一般社団法人日本データサイエンス研究所です。2018年7月に株式会社日本データサイエンス研究所として法人を設立し、2020年11月に現在の社名へ変更しました。代表取締役CEOの加藤エルテス聡志氏は、東京大学の卒業後に事業会社やコンサルティング会社を経て創業しました。同社は東京大学発のAI企業として、加藤氏と代表取締役COOの佐藤飛鳥氏による二人代表制で経営しています。

上場と連携で事業を拡大

2021年12月、同社は東京証券取引所マザーズ(現・グロース市場)へ上場しました。創業期には、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)等から出資を受けています。事業会社との連携も広がり、2025年10月にはRELEX Solutionsと提携しました。2026年7月には日本ロジスティクスシステム協会へ加盟しました。

ライセンスと開発の両輪

事業の中心は、「アルゴリズムモジュール」のライセンス提供と、ITシステムの開発・運用です。データサイエンスの顧問業務も手がけ、製造、物流、不動産、エネルギー、金融等の分野で取引しています。従業員は244名(2026年8月時点)で、本社は東京都文京区、営業所は大阪市です。

会社情報

会社名株式会社JDSC(Japan Data Science Consortium Co. Ltd.)
所在地東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル16階。大阪営業所:大阪府大阪市北区梅田2-3-123 ノイゲート大阪10階。
設立2018年7月23日。前身の一般社団法人日本データサイエンス研究所は2013年設立。2020年11月に現社名へ変更。
代表代表取締役CEO 加藤 エルテス 聡志。代表取締役COO 佐藤 飛鳥。
上場東京証券取引所マザーズ(現・グロース市場)へ2021年12月に上場。証券コード4418。
投資家創業期の出資者は東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)等。
連携RELEX Solutions(2025年10月に提携。需要予測と在庫最適化)。中部電力(自治体向け「eフレイルナビ」へフレイル検知AI技術を提供)。日鉄興和不動産・ソフトバンクロボティクス(清掃ロボット「Loki」の実証)。
技術領域アルゴリズムモジュールの開発とライセンス提供。需要予測「demand insight」、マーケティング最適化「response insight」、製薬会社の営業向け「frontconnect」。電力データ解析によるフレイル検知AI技術(同社特許)。フィジカルAI・ロボット基盤モデル。
採択アマゾン ウェブ サービス ジャパン「フィジカル AI 開発支援プログラム」採択(2026年3月)。
アカデミックパートナー東京大学 松尾豊教授、越塚登教授。
URLhttps://jdsc.ai/

編集後記|FrontJournal編集部より

AIの話題は、モデルの新しさに集まりがちです。産業の現場で効くかどうかを決めるのは、予測を発注や配車といった日々の判断へ結び付けられるかという一点です。JDSCは、その一点に向き合って計算を部品にする形へたどり着きました。

高齢者を見守る技術と清掃ロボットの技術は、一見すると遠く離れています。それでも現実のデータから次の行動を決めるという仕組みは同じです。産業をまたいで使える判断の部品を積み上げている点に、この会社の面白さがあります。

画面の中にいたAIが、街や工場の動きを支える日常へ近づいています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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