クライメートテック企業で働くには?|採用事情・年収・転職ルートを解説

クライメートテック企業で働くには?|採用事情・年収・転職ルートを解説

「クライメートテック企業に興味があるが、どんな企業があり、自分のバックグラウンドで通用するのかわからない」という声を聞くことがあります。

クライメートテックは、脱炭素SaaSのようなソフトウェア企業から、再生可能エネルギー・CCUS・次世代素材のようなインフラ・ディープテック企業まで含む非常に幅広い領域です。同じクライメートテックでも求める人材や事業リスクは大きく異なります。

「環境に良い会社」という括り方では転職先の適否を判断しにくい領域であり、誰がお金を払うのか・どう収益化しているのか・商業化まで何年かかるのかを軸に企業を選ぶことが、転職判断の出発点になります。

1. クライメートテック企業とは?タイプを理解することが転職の出発点

クライメートテック企業のタイプ別分類:再生可能エネルギー型/脱炭素SaaS型/次世代素材型/CCUS型/資源循環型

同じクライメートテック企業でも、領域によって仕事の性質・収益モデル・リスクが大きく異なります。まず自分が関わりたい仕事がどの領域に近いかを整理することが重要です。

再生可能エネルギー型

太陽光・風力・蓄電池・エネルギーマネジメントを扱う企業群です。レノバ(再生可能エネルギー発電所の開発・運営を手がける上場企業)、自然電力(太陽光・風力・蓄電池事業を国内外で展開)などが代表例です。このタイプは比較的事業モデルが確立しており、BtoB・インフラ色が強い傾向があります。エネルギー業界の規制・電力市場の仕組みへの理解が求められるポジションが多いです。

脱炭素SaaS・排出量管理型

企業のCO2排出量(GHG)の可視化・削減・報告を支援するクラウドサービスを提供する企業群です。国内例には、アスエネ、zeroboard、ENECHANGEがあります。アスエネは排出量管理サービスとカーボンクレジット取引所、zeroboardはGHG排出量の算定・可視化ツールを展開しています。ENECHANGEは、電力切り替えやエネルギーデータ活用のSaaSを提供する上場企業です。SaaS営業・BtoBマーケティング・ソフトウェアエンジニアの需要が高く、クライメートテックの中では比較的参入しやすい領域です。

次世代素材・バイオマテリアル型

石油由来素材を代替する新素材を開発・量産する企業群です。Spiber(微生物発酵によるタンパク質素材「Brewed Protein™」を開発・量産)、JEPLAN(使用済み衣料品などからポリエステルを化学的に再生する資源循環技術を開発)などが代表例です。化学・素材メーカー出身のプロセスエンジニア・研究員の需要が高く、量産化・コスト競争力が事業の根幹になります。

カーボンリサイクル・CCUS型

CO2の回収・利用・貯留(Carbon Capture, Utilization and Storage)技術を開発する企業群です。国内では技術開発・実証段階の企業が多く、NEDOや環境省・経産省の補助金を活用しながら研究開発を進めているケースが多いです。技術難易度が高く、商業化まで5年〜15年かかるケースもある領域です。

資源循環・サーキュラーエコノミー型

リサイクル・廃棄物処理・資源の循環利用を事業化する企業群です。廃棄物の回収・選別・再生のサプライチェーン全体を設計する企業も含まれます。製造業・物流・小売業との接点が大きく、既存産業との協業が事業の根幹になります。

2. 採用事情|どんな人材が求められているか

クライメートテックの中でも、脱炭素SaaSは他の領域と比べて転職難易度や求められるスキルが大きく異なります。アスエネ・zeroboard・booost technologiesなどの脱炭素SaaS企業では、SaaS営業・カスタマーサクセス・ソフトウェアエンジニア・マーケターなどの経験をそのまま活かせるケースがあります。

一方でCCUSや次世代素材などのディープテック領域では、化学・エネルギー・材料工学などの専門知識が求められるケースが多く、採用要件も大きく異なります。自分の経験がどの領域に近いかを確認した上で応募先を絞ることが重要です。

技術職

クライメートテック企業の技術職は、領域によって求めるスキルが大きく異なります。

  • エネルギーエンジニア電力系統・再エネ発電・蓄電池・エネルギーマネジメントの設計・開発を担当します。電力・エネルギー業界での実務経験が評価されます。
  • 化学プロセスエンジニア素材合成・発酵プロセス・CO2回収プロセスのスケールアップ・量産化を担当します。化学・素材メーカー出身者が多く転職しています。
  • LCA(ライフサイクルアセスメント)担当製品・サービスのCO2排出量をサプライチェーン全体で算定・評価する専門職です。GHG算定の規制・基準への理解が必要になります。
  • データサイエンティスト・ソフトウェアエンジニア脱炭素SaaS・排出量管理ツールの開発・データ基盤構築を担当します。クライメートテックの中では比較的参入しやすいポジションです。

ビジネス職・管理部門

  • 事業開発・パートナーシップ担当大手製造業・商社・金融機関との協業・導入推進を担当します。顧客の脱炭素戦略を理解した上で自社サービスをどう位置づけるかの設計力が求められます。
  • カーボンクレジット担当J-クレジット・国際カーボンクレジットの調達・販売・プロジェクト開発を担当します。カーボンマーケットの仕組みへの専門知識が希少人材の条件になります。
  • GXコンサルタント顧客企業の脱炭素戦略・ESG対応・サプライチェーン排出量削減を支援します。コンサル・製造業出身者が評価されやすいポジションです。
  • 経営企画・財務資金調達・補助金獲得・投資家対応・事業計画の構造化を担当します。公的資金の獲得経験が特に評価されることがあります。
クライメートテック企業の採用担当者が面接で問う視点:なぜその領域か・なぜその企業か・社会実装の見通し

面接では「環境問題に興味がある」だけでは弱いと感じられることがあります。「なぜその領域なのか」「どの産業の脱炭素化に関わりたいのか」「なぜその企業なのか」に加え、その技術やサービスがなぜ社会実装されると考えるのかを説明できることが求められるケースがあります。技術的・事業的な観点から応募理由を説明できることが、書類・面接通過に直結します。

3. 年収・待遇の実態

以下は求人票や転職市場で見られる目安です。企業フェーズ・事業領域・職種によって大きく変動するため、あくまで参考値として確認してください。

職種・役割年収レンジの目安
エンジニア(若手〜中堅)450万〜1,000万円
事業開発・パートナーシップ担当600万〜1,200万円
GXコンサルタント600万〜1,500万円
経営企画・財務700万〜1,500万円

脱炭素SaaS型はSaaS企業に近い水準になるケースがあり、カーボンリサイクル・CCUS型のような技術開発中心の企業では製造業・研究機関に近い水準になる傾向があります。

ストックオプションを設定している企業も多いですが、商業化・上場のタイムラインは領域によって5年〜15年の幅があり、確実なリターンとして計算しにくい点は事前に理解しておく必要があります。

クライメートテック企業では、補助金・受託開発・官公庁案件が主な収益源になっている企業も多く、商業サービスが軌道に乗るまでの期間は固定給水準が企業フェーズに大きく依存します。同じ「クライメートテック企業」でも、上場済みのレノバと、実証段階のCCUS系スタートアップでは収益安定性が全く異なります。

4. 入社前に確認したいこと

クライメートテック企業への転職判断チェックポイント:顧客・補助金依存度・規制・競争優位・商業化フェーズ

クライメートテック企業への転職を判断する際、特に以下の点を面接・情報収集の段階で確認しておくことが重要です。他の領域より「補助金依存」「政策変更リスク」「顧客不在」のリスクが顕在化しやすい領域であるため、入社前チェックが転職の成否を左右します。

誰がお金を払うのか

補助金・政府受託が主な収益源なのか、民間企業が顧客として対価を払っているのかを確認してください。顧客が存在しない段階の企業と、継続的な収益が立っている企業では事業の安定性が根本的に異なります。

補助金依存度はどの程度か

NEDO・環境省・経産省などの補助金で研究開発費の大半を賄っている企業では、補助金期間終了後の収益化が課題になるケースがあります。補助金がなくなった後もビジネスが成り立つ構造かどうかを確認してください。

規制が追い風になっているか

その事業は法規制や開示義務によって市場拡大が期待されているのか、それとも企業の自主的な取り組みに依存しているのかを確認してください。例えば排出量開示やサプライチェーン管理の領域では、各国の開示制度や規制強化が市場拡大の背景になっています。一方で任意市場の場合は、景気や企業の投資判断によって需要が変動することがあります。

脱炭素価値以外の競争優位があるか

「環境に良い」だけでは顧客は購買を決定しません。価格・性能・規制対応・ブランドのいずれかで競合に対して優位性があるかを確認してください。「サステナブルだから買う」は大企業の調達基準が変わらない限り成立しないケースがあります。

商業化フェーズはどこか

研究段階・実証段階・商業化段階のどこにいるかで、入社後の業務と組織のキャッシュ状況が大きく変わります。特にCCUS・次世代素材型では商業化まで10年以上かかるケースもあります。

政策変更リスクへの耐性はあるか

クライメートテックは政府の脱炭素政策・補助金制度・規制変更に大きく影響される領域です。政策が変わったとき、補助金がなくなったときに事業が存続できる収益構造かどうかを確認してください。

ビジネス職に期待される役割は何か

「事業開発」という肩書きでも「大手製造業への導入営業」「補助金申請・管理」「カーボンクレジットの調達・販売」「ESGコンサルティング」では全く異なる仕事になります。入社後最初の6ヶ月で何をやってほしいかを具体的に確認してください。

5. クライメートテック企業で働くメリット・注意点

メリット

  • 社会課題解決に当事者として関われる気候変動対策という長期的・グローバルな課題に、事業の当事者として関われます。研究職・ビジネス職問わず、自分の仕事が脱炭素化の実現に直結する環境があります。
  • エネルギー・化学・金融・ITを横断した経験が積めるクライメートテックは産業を横断する領域です。エネルギー・化学・金融・IT・政策の知識を組み合わせた経験は、GX人材として市場価値が高まります。
  • GX市場の拡大が追い風になっている国内外の脱炭素政策・ESG開示規制の強化を背景に、脱炭素SaaS・カーボンクレジット・エネルギー管理の領域ではビジネス人材への需要が継続的に増えています。

注意点

  • 補助金依存リスクがある事業収益の多くを政府補助金に依存している企業では、政策変更・補助金終了が経営に直結するリスクがあります。入社前に自前の収益構造を確認することが重要です。
  • 技術より顧客獲得が難しいケースもある「環境に良い技術」が完成しても、顧客がコスト・性能・規制の観点で採用しないケースがあります。技術開発より市場開拓が難しいフェーズの企業も多い領域です。
  • 商業化リスクと政策変更リスクが同時に存在するCCUS・次世代素材など技術難易度が高い領域では、商業化に至らないリスクと政策転換リスクの両方が同時に存在します。入社前に企業のランウェイと収益化の見通しを把握しておくことが重要です。

6. どうやって入るか|転職・就職のルート

GX・環境・エネルギーに強い転職エージェント経由

JACリクルートメント・リクルートエージェント・dodaはGX・エネルギー・環境領域の求人を持っています。脱炭素SaaS・再エネ・素材系の非公開求人はエージェント経由で流通するケースが多いです。

各社の採用ページへの直接応募

アスエネ・zeroboard・レノバ・JEPLANはそれぞれ採用ページを持っています。特定の企業に絞って入りたい場合は採用ページを定期的に確認してください。

クライメートテック系VCのポートフォリオ経由

Beyond Next Ventures・DNX Ventures・DBJキャピタルなど、クライメートテック投資に注力するVCのポートフォリオ企業一覧から採用情報を確認するアプローチが有効です。

GXコミュニティ・スタートアップイベント経由

脱炭素・GX関連のカンファレンス・勉強会(GXリーグ関連イベント等)への参加を通じた人脈形成からリファラル採用につながるケースがあります。

7. 求められるスキル・経験

技術職

必須

  • エネルギー・化学・電池・機械・データ解析のいずれかの専門性(実務経験2〜3年以上が目安)
  • 応募先の技術領域(再エネ・素材・CCUS等)への基本的な理解

あると強い

  • 再エネ発電・電力系統・蓄電池の設計・開発経験
  • 化学プロセス・発酵プロセスのスケールアップ経験
  • GHG算定・LCAの実務経験
  • データ分析・SaaS開発(Python・SQL等)の経験

ビジネス職

必須

  • 「なぜその領域の脱炭素化に関わりたいのか」を自分の言葉で説明できること
  • BtoBの営業・事業開発・コンサルティング・プロジェクトマネジメントのいずれかの経験

あると強い

  • エネルギー・化学・製造業・金融のいずれかの業界経験
  • カーボンクレジット・ESG・GHG算定の実務知識
  • 官公庁・補助金申請への関与経験
  • 大手製造業・商社との交渉・アライアンス推進の経験

よくある質問

Q. 文系でも転職できますか?

事業開発・GXコンサルタント・カーボンクレジット担当・経営企画では文系出身者の転職実例があります。コンサル・商社・金融出身者はGXコンサルティングや事業開発で評価されやすいです。応募先の技術領域への基本的な理解は入社後に求められます。

Q. エネルギー業界経験は必要ですか?

再生可能エネルギー型では電力市場・規制への理解が実質的に求められることが多いです。脱炭素SaaS型ではSaaS営業・エンジニアの経験が優先されるケースがあります。応募先の領域と自分の経験の接点を確認してください。

Q. 大手メーカーや商社から転職する人は多いですか?

多いです。化学・素材メーカー出身者がCCUS企業へ、商社・コンサル出身者がGXコンサルタント・事業開発へ転職するケースが多い傾向があります。製造業での現場経験・顧客知識は脱炭素SaaS企業でも評価されやすいです。

Q. スタートアップと上場企業の違いはどう考えればよいですか?

レノバのような上場企業は収益安定性が高く組織が整っている傾向があります。未上場スタートアップは裁量が大きい反面、事業リスク・補助金依存のリスクが高いケースがあります。事業フェーズとランウェイを確認した上で選択してください。

Q. 年収は大手メーカーや商社より下がりますか?

企業と職種によります。脱炭素SaaS型ではSaaS企業に近い水準になるケースがありますが、実証段階のスタートアップでは大手を下回るケースも多いです。ストックオプションの実現タイムラインも含めてトータルで判断してください。

Q. クライメートテックは補助金頼みの業界ですか?

領域によります。脱炭素SaaS・再エネ型は民間顧客が主な収益源で補助金依存度は低い傾向があります。CCUS・次世代素材型は補助金依存が高いケースが多く、商業化の見通しを入社前に確認することが特に重要です。

Q. クライメートテックはブームで終わりませんか?

ESG開示・排出量算定・エネルギー転換は規制強化によって推進されている側面があります。ただしすべての企業が成長するわけではなく、顧客基盤・収益モデル・商業化の見通しを確認することが重要です。

Q. クライメートテック企業を選ぶ際に何を見ればよいですか?

顧客が実際に対価を払っているか・規制や市場環境の変化に支えられているか・補助金がなくても成立する事業かを確認してください。社会的意義と事業性の両方を見て判断することが重要です。

まとめ

  • クライメートテックは脱炭素SaaSからCCUS・次世代素材まで幅広く、脱炭素SaaS型はSaaS人材が参入しやすい一方、CCUS・素材型は化学・エネルギーの専門性が求められる
  • 誰がお金を払うのか・補助金依存度・規制の追い風があるか・脱炭素以外の競争優位・商業化フェーズは入社前に必ず確認すべき項目
  • 面接では「環境問題への関心」より「なぜその領域か・なぜその企業か・その技術がなぜ社会実装されると考えるか」の事業的な説明が求められることが多い

クライメートテックへの転職判断は「環境に良い会社か」ではなく、誰が顧客か・どう収益化するか・商業化まで何年かかるか・自分はどの役割で価値を出すかを理解したうえで行うことが重要です。「脱炭素」という言葉ではなく、その企業がどの産業のどの課題を解決しようとしているのかを起点に判断することが現実的な順序です。

この記事の作者

ショクレキ代行

ショクレキでは、ヒアリングをもとに職務経歴書を一緒に作成するサービスを提供しています。「クライメートテック企業への転職を考えているが書類をどう書けばいいかわからない」「書類選考が通らない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

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