2026.08.12 九州大学・大阪大学・量子科学技術研究開発機構(QST) 元発表:2026.08.03

九大・阪大ら、レーザーで陽子を60MeVまで加速する原理を実証

ニュース紹介

「光を制御し、イオンを波に乗せる新たな加速原理を実証」

九州大学大学院総合理工学研究院の諫山翔伍助教、量子科学技術研究開発機構(QST)関西光量子科学研究所の福田祐仁上席研究員、大阪大学大学院工学研究科の蔵満康浩教授らの研究グループは、高強度レーザーをフォーム標的に照射し、フォームの密度を利用してレーザー光とともに進むプラズマの波の速さを制御することで、イオンを波に乗せて加速することに成功したと発表しました。実験では、QST関西研の高強度レーザー J-KAREN-P を厚さ100マイクロメートルのスポンジ状フォーム標的に照射し、陽子を最大60MeVまで加速したとしています。レーザー前面に電子が集まって強い電場が形成され、陽子はこの電場に捕まってレーザーとともに進むプラズマの波に乗るように加速されます。研究グループはこの加速機構を「Bow-wake加速」と呼んでいます。今後、この機構を多段式に発展させることで、コンパクトな装置による高エネルギーイオン生成への展開が期待されるとしています。成果は国際科学誌 Communications Physics に2026年8月3日に掲載されました。

出典:九州大学 2026年8月3日 プレスリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/67068/26_0803_04.pdf

FrontJournalの解説

この研究分野について

粒子加速器は、陽子やイオンを高い速度まで加速する装置です。基礎物理の研究に加え、がんの粒子線治療や材料の検査など、産業や医療の現場でも使われています。

従来の加速器は、長い加速管や大きなリングの中で粒子を少しずつ加速するため、高いエネルギーを得ようとすると装置が大型化するという課題があります。これに対し、レーザーでプラズマの中に強い電場をつくり、その波に粒子を乗せて加速するレーザー加速が、装置を小型にする手法として研究されています。

①重い陽子は波に乗りにくかった

プラズマの中をレーザーが進むと、船が水面に残す航跡のような波(航跡場)ができます。この波には強い電場が生じ、うまく乗った粒子を加速できます。ただし電子は軽いため波に捕まりやすい一方、陽子やイオンは電子に比べて非常に重く、同じ電場を受けてもすぐには動きません。

波が速く進みすぎる場合、イオンは波に追いつけず加速領域に捕捉されないと発表では説明されています。研究グループは、プラズマの密度を高めて波の位相速度を下げ、ほぼ静止している陽子でも捕まえられる条件をつくる方法を選びました。

②スポンジ状の標的で波の速度を落とす

実験では、通常のガス標的より高い密度のプラズマをつくれるフォーム標的(厚さ100マイクロメートルのスポンジ状の材料)に高強度レーザーを照射しました。密度を上げるとレーザーとともに進む波の速度が下がり、重い陽子も波の先端に捕まりやすくなります。

その結果、陽子を最大60MeVまで加速したと報告されています。研究グループはこの機構をBow-wake加速と呼び、多段式に発展させることでコンパクトな装置による高エネルギーイオン生成につながるとしています。

編集部からひとこと

加速器の小型化は、粒子線治療の装置を病院に置けるかどうかにも関わるテーマです。今回の発表は、標的の密度という制御しやすいパラメータで波の速さを調整するという道筋を示しています。実験室レベルの成果であり、多段式への発展はこれからの課題として示されています。

プレスリリース原文を読む ↗

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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