2026.07.31 東京大学・科学技術振興機構(JST) 元発表:2026.07.31

東大ら、浮揚ナノ粒子で量子加速度センシングの感度を2桁向上(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「浮揚ナノ粒子による量子加速度センシングを実現~量子力学的な揺らぎによる限界を打ち破る動的な手法を開発~」

東京大学大学院理学系研究科の神庭光善特任研究員、小田部荘達特任助教、相川清隆准教授、大学院工学系研究科の沙川貴大教授、布能謙講師らの研究グループは、真空中に浮揚した直径300ナノメートルのナノ粒子をレーザーで捕捉し、量子基底状態付近まで冷却したうえで、ナノ粒子を捕捉する光ポテンシャルの強度を動的に制御することにより、量子力学的な揺らぎ(ゼロ点振動)に由来する感度の制約を打ち破り、加速度検出感度を従来比で約2桁向上させることに成功した。ダークマターの直接探査やニュートリノの測定、高周波重力波検出など次世代の量子センシングへの応用や、巨視的スケールでの量子力学と重力の関係性の探求に道を開く成果となる。研究論文は米科学誌『Physical Review Letters』に2026年7月28日付で掲載された。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月31日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260731/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

この研究は浮揚光学(浮揚した粒子を光で操作する技術)量子センシングの交差領域にあります。真空中に光の力で吊り下げたナノ粒子は、外界からの摩擦をほとんど受けずに振動できるため、微小な力や加速度を測るセンサーとして注目されています。ただし、粒子の運動が量子基底状態に近づくほど、量子力学が定める「ゼロ点振動」と呼ばれる揺らぎが無視できなくなり、感度に原理的な限界を課します。研究グループは、粒子を捕まえるレーザーの強さを時間的に変化させることで、この揺らぎの一部を情報として引き出す動的な手法を組み合わせ、限界を突破しました。

①量子センサは既に「第2の量子革命」の主戦場

量子センシングは、量子重ね合わせや量子もつれといった量子力学の効果を測定プローブそのものに使い、磁場・電場・時間・加速度・重力などの微小変化を極限感度で捉える技術群です。冷却原子干渉計を用いた量子重力センサは既に、地下空洞や地下水脈を地上から可視化する非破壊センシングとして社会実装が進んでおり、慣性航法・防衛・資源探査・医療画像などが応用先として広がっています。今回の浮揚ナノ粒子方式は、これに続く新しい流派として位置付けられます。

②「動的な手法」で量子限界を書き換えた点

これまでの浮揚粒子センサでは、粒子を「静かに」冷却して量子基底状態に近づけること自体が到達目標でした。今回の研究では、静止状態を保つのではなく、粒子を捕まえるレーザー光の強度をタイミングよく変えることで、量子的な揺らぎの寄与を測定の中で相対的に小さくする戦略を採用しています。感度が従来の約2桁向上したことで、これまで熱雑音や量子雑音に埋もれていた微弱な力を検出できる可能性が広がり、ダークマターやニュートリノ、高周波重力波といった素粒子物理・宇宙物理の未解決課題に、卓上サイズの実験装置で挑む道筋が見えてきます。

編集部からひとこと

浮揚ナノ粒子は、慣性航法向けの量子加速度計や基礎物理実験の場として、ここ数年で研究が急速に進んでいる領域です。今回のように「量子の揺らぎ」を静的な制約として受け入れるのではなく、動的な操作で回避する発想は、他の量子センサ全般にも応用余地があるとFrontJournal編集部は注目しています。

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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