2026.07.31 京都大学・科学技術振興機構(JST) 元発表:2026.07.30

京大ら、豊富な元素カリウムで有機合成を開発 リチウム依存の低減へ(FrontJournal解説)

ニュース紹介

「豊富な元素資源カリウムを活用した新しい有機合成法を開発~有機カリウムを用いる元素戦略型物質製造~」

京都大学大学院理学研究科の依光英樹教授、黒木尭特定准教授、張紫薇博士後期課程3年らの研究グループは、入手容易なアルキンから有機カリウム化合物を発生させ、有用な有機ホウ素化合物を効率よく合成する新手法を確立した。従来、有機カリウム化合物は反応性が高く制御が難しいため実用的な合成への利用は困難とされてきたが、研究グループは反応性の高い有機カリウム種をその場で発生させて活用する条件を見いだした。リチウムを用いる手法では入手困難であった有用物質の効率的合成にも成功しており、戦略元素であるリチウムへの依存を低減する元素戦略型の物質製造技術として、医薬品・機能性材料・電子材料などの分野への応用が期待される。成果は米国の国際学術誌『Chem』に2026年7月30日付でオンライン掲載された。

出典:科学技術振興機構(JST) 2026年7月30日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20260730-2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

この研究は元素戦略(限られた資源に依存しない物質製造)有機金属化学の交差領域にあります。医薬品や機能性材料の合成では、有機リチウム試薬が炭素と炭素をつなぐ強力な道具として長年使われてきました。ところが、リチウムは車載電池を中心に需要が急拡大し、政府の重要鉱物指針でも供給リスクが指摘される戦略資源となっています。研究グループは、リチウムの代わりに地殻に豊富に存在するカリウムを使えないかという問いに取り組み、扱いが難しい有機カリウム化合物を反応の場で発生させて利用する道筋を示しました。

①リチウムの需要は「2040年までに急増」と国が警告

経済産業省の資料は、蓄電池・モーター・半導体などの生産拡大に伴い、2040年までにリチウムの需要が急増する見通しを示しています。供給の多くを特定国に依存する構造も指摘されており、輸出管理措置などで供給が不安定化する可能性がリスクとして挙げられています。カリウムは地殻中の存在量が桁違いに多く、代替が可能であれば産業のサプライチェーン強靭化に直接効くテーマとなります。

②「その場で発生させて使う」で扱いの難しさを回避

有機カリウム化合物は反応性が高すぎて実用的な合成に組み込みにくい、というのが長年の壁でした。今回の研究では、入手が容易なアルキン(三重結合を持つ有機化合物)から有機カリウム種をその場で発生させ、そのまま有機ホウ素化合物の合成に流し込みます。有機ホウ素化合物は医薬品分子や電子材料の骨格をつくる中間体として広く使われており、リチウム試薬では合成しにくかった構造にもアプローチできる点が、実務的な意義といえます。

編集部からひとこと

特定国依存の重要鉱物を、扱いにくいがどこにでもある資源に置き換える研究は、地味に見えて社会実装の効き目が大きい領域です。医薬品や電子材料の合成ルート自体が、供給リスクの低いカリウム系で組み直せるようになれば、産業側の設計自由度も広がります。FrontJournal編集部としては、追随研究や試薬メーカーの動きに注目したいと考えています。

プレスリリース原文を読む ↗

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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