リジェネフロ株式会社|iPS細胞からネフロン前駆細胞を作製し腎疾患の治療薬と細胞療法を開発する京都大学発ディープテック

リジェネフロ株式会社(Rege Nephro)

リジェネフロ「ネフロン前駆細胞」を研究|研究領域=腎臓のもとになる細胞をiPSから作製/強み=発生の順路をたどり効率よく作製/将来性=治療の対象を肝臓や膵臓へも(培養皿の解説つき)

企業紹介|リジェネフロとは?

透析以外の選択肢を腎臓病にもたらす細胞として、注目を集める「ネフロン前駆細胞」。リジェネフロは、その「ネフロン前駆細胞」の社会実装を目指す、京都大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。腎疾患の治療薬「RN-014」と細胞療法「RN-032」を、治療の選択肢が限られてきた腎臓病の現場へ届けようとしています。

キーワード「ネフロン前駆細胞」

ネフロン前駆細胞」は、腎臓で尿を生成する最小単位であるネフロンのもとになる細胞です。特徴は、ヒトiPS細胞(体のさまざまな細胞に育つ万能細胞)から高い効率で分化誘導できる点にあります。発見したのは京都大学iPS細胞研究所の長船健二教授らの研究グループで、患者へ移植する細胞にも、薬の候補を試す疾患モデルにも使えます。

市場課題|腎臓病の治療の選択肢

現状の腎臓病治療の課題|現状は、機能を補う治療で根治が難しい/毎年4万人が新たに透析へ/動物実験ではヒトを再現しにくい(透析装置の解説つき)

透析は機能を補うが回復しない

慢性腎臓病が進んで末期腎不全に至ると、腎機能は戻りにくく、透析か腎臓移植が必要です。日本では毎年約4万人が新たに透析へ入り、透析中の人は34万人以上で、その医療費は年間約1.6兆円とされます。透析は失われた働きを機械で補う方法で、腎機能を回復させる手立ては限られます。

動物実験ではヒトを再現しにくい

遺伝性の腎疾患では、動物実験の結果がヒトに当てはまりにくく、根治薬を見つけにくい状況です。患者数が最も多い常染色体顕性多発性嚢胞腎では、腎臓に嚢胞(液体のたまった袋)ができ、70歳までに約半数が末期腎不全に至るとされます。基礎研究はマウスやラットで数多く行われましたが、生物種で遺伝的な背景が異なるため、ヒトの細胞で効き方を確かめる場が必要です。

他にも、進行を遅らせるにとどまる薬物治療、患者ごとに異なる進行の速さ、移植用腎臓の不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 末期腎不全腎機能が大きく低下し、透析療法か腎臓移植がなければ生命を保てない状態。慢性腎臓病の最終段階。
  • 常染色体顕性多発性嚢胞腎親から子へ受け継がれる遺伝性の腎疾患で、患者数が最も多い。腎臓に嚢胞ができ、腎機能が低下する。

リジェネフロの強み|分化誘導技術

リジェネフロが「ネフロン前駆細胞」を開発|今後は、細胞の働きで腎機能の改善が可能に/腎臓の被膜の下へ細胞を移植/ヒトの疾患モデルで薬の候補を探索(腎臓の被膜・投与デバイス・ウェルプレートの解説つき)

ネフロン前駆細胞で腎機能を改善

iPS細胞から腎臓の細胞へ導く経路は複雑で、目的の細胞を高い効率でそろえることが難しい状況でした。

同社が開発したのは、ヒトiPS細胞から中間中胚葉を経てネフロン前駆細胞へ導く分化誘導法です。体内で腎臓ができあがる発生過程を順にたどるため、高い効率で目的の細胞へ到達します。薬としての効き方は、細胞が分泌する栄養因子(細胞の修復を助ける物質)が周囲の細胞に作用するパラクライン効果によるものと同定されています。細胞は専用のデバイスで腎臓と被膜(腎臓を包む膜)のあいだへ送り込まれ、複数の腎疾患マウスモデルで効果が示されました。分化誘導法は特許出願中です。

ヒト病態モデルで薬を探索

動物モデルでは、ヒトの遺伝的な背景に由来する病態を再現しにくいという課題がありました。

分化誘導の技術は、病態を試験管内に再現する疾患モデルにも生かされています。長船教授の研究グループは、原因遺伝子PKD1に変異を持つヒトiPS細胞を分化誘導し、嚢胞ができる様子を試験管内へ再現しました。ヒトの細胞でできた疾患モデルがあれば、動物では拾いにくい効き方も確かめられます。この使い方には製薬企業も加わり、ロシュとは新規治療薬の探索で、富士フイルムとはヒト腎チップ(腎臓の働きを再現する小型の実験装置)の開発で、それぞれ契約を結んでいます。

FrontJournalの解説
  • 分化誘導iPS細胞などの幹細胞を、目的の種類の細胞へ育てる操作。発生を再現する順序と効率が品質を左右する。
  • 中間中胚葉発生の途中に現れる、腎臓のもとになる細胞の集まり。iPS細胞から腎細胞へ至る経路の中継点。
  • パラクライン効果細胞が分泌した物質が、近くの別の細胞へ作用すること。移植した細胞が組織に置き換わらなくても効果が生じる。

ネフロン前駆細胞の未来|創薬と細胞療法

腎臓を支えるネフロン前駆細胞が変える未来|創薬と細胞療法が、治療の選択肢を広げる/嚢胞の増大を抑える薬が候補/多発性嚢胞腎で臨床試験が進行/細胞療法で腎臓の再生を目指す(嚢胞の解説つき)

既存薬から嚢胞腎の候補を同定

病態モデルからは、すでに治療薬の候補が見つかっています。開発品「RN-014」は、PKD1に変異を持つ疾患モデルへ多数の化合物をあてるスクリーニングから同定された、低分子(飲み薬にしやすい小さな分子)の治療薬です。その正体はタミバロテンで、急性前骨髄球性白血病(血液のがんの一種)の治療薬として承認されてきた薬です。すでに人へ使われているため、治験は第一相ではなく前期第二相から始められています。

前期第二相のデータ解析が進行

「RN-014」は臨床試験の段階にあります。2025年6月には厚生労働省から、2026年4月には米国FDA(食品医薬品局)から、それぞれ希少疾病用医薬品の指定を受けました。いずれも患者数の少ない病気の薬を後押しする制度で、販売の承認とは別です。2026年6月時点で前期第二相臨床試験は最後の被験者の観察を終え、データの解析の段階です。

細胞療法で腎臓の再生を目指す

細胞そのものを薬にする「RN-032」では、慢性腎臓病への細胞療法の実現を目指しています。動物試験で有効性を確かめ、2026年6月時点では非臨床試験の開始に向けたプロセス開発を完了しました。製造量を増やす手法は日機装との共同開発で、大量培養システムも設置済みです。2025年9月には、AMED(日本医療研究開発機構)の創薬ベンチャーエコシステム強化事業へ「ヒトiPS細胞由来ネフロン前駆細胞を用いた慢性腎臓病に対する細胞療法の開発」が採択されています。

FrontJournalの解説
  • スクリーニング多数の候補物質をふるいにかけ、目的の作用を示すものを絞り込む工程。創薬の出発点である。
  • 前期第二相少数の患者を対象に、有効性と適した用量を探る臨床試験の段階。既承認薬の転用ではここから始められる。
  • 非臨床試験人へ投与する前に、細胞や動物で安全性と有効性を確かめる試験を指す。細胞療法では製造工程の確立も伴う。

会社概要|リジェネフロの事業内容

京都大学の研究成果から創業

リジェネフロは、2019年9月に京都市で設立されました。創設者は京都大学iPS細胞研究所の長船健二教授で、現在は取締役最高科学顧問です。代表取締役CEOは森中紹文氏です。同社は、腎臓を中心に肝臓や膵臓の難治性疾患についても治療の選択肢を広げることを掲げています。本社は京都大学医薬系総合研究棟にあり、米国パロアルトにも拠点があります。

製薬企業との共同研究が拡大

連携は国内外の製薬企業や研究機関へ広がります。アストラゼネカとは京都大学iPS細胞研究所を交え、腎臓を構成する別の細胞(尿管芽と腎間質前駆細胞)の分化誘導技術を用い、腎臓の組織を試験管内に再現する共同研究を進めてきました。2025年3月にはロシュと共同研究契約を結び、同月に米国Syros社からタミバロテンの資産を取得しました。2026年7月にはAMEDの再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラムへ参画しています。2026年8月には、京都府の「産学公の森」推進事業にも採択済みです。

総額17億円の調達を完了

2026年7月、J-KISS型新株予約権による総額17億円の調達を完了しました。J-KISSは、株価を後の調達時に決める、初期のスタートアップ向けの調達方式です。台湾のTaiAn Technologiesも参画しています。資金は「RN-014」の価値最大化と「RN-032」の非臨床試験体制の拡充などに充てるとしています。

会社情報

会社名リジェネフロ株式会社(Rege Nephro Co., Ltd.)
所在地京都府京都市左京区吉田下阿達町46-29 京都大学 医薬系総合研究棟。米国カリフォルニア州パロアルトにも拠点。
設立2019年9月20日
代表森中 紹文(代表取締役CEO)
資本金22億7,609万3,400円(資本準備金を含む)
事業内容腎疾患治療薬の研究開発・生産・販売
主な開発品「RN-014」=多発性嚢胞腎の低分子治療薬(前期第二相のデータ解析中)。「RN-032」=慢性腎臓病への細胞療法(非臨床試験へ向けたプロセス開発が完了)。いずれも2026年6月時点。
調達総額17億円(2026年7月・J-KISS型新株予約権)
投資家TaiAn Technologies(台湾)ほか
連携ロシュ(2025年3月・疾患モデル)。富士フイルム(2025年4月・ヒト腎チップ)。アストラゼネカと京都大学iPS細胞研究所(腎臓組織の作製)。日機装(製造量の拡大手法)。
技術領域ネフロン前駆細胞、iPS細胞の分化誘導、細胞療法、疾患モデル、再生医療
採択AMED 創薬ベンチャーエコシステム強化事業(2025年9月)。AMED 再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラムへ参画(2026年7月)。京都府 産学公の森推進事業(2026年8月)。
URLhttps://www.regenephro.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

同じ細胞が、薬にも、薬を探す道具にもなる。リジェネフロで特徴的なのは、この二重性です。ネフロン前駆細胞は移植する治療の主役であり、同時にiPS細胞由来の疾患モデルとして、化合物の効き方を確かめる側にも回ります。

速く進んでいるのは、細胞を移す側ではなく細胞で薬を探す側でした。再生医療という言葉が連想させるのは前者ですが、臨床試験へ先に届いたのは既存薬を見つけ直した後者です。効果を生むのは細胞が出す物質の働きかけだ、という慎重な説明にも姿勢が表れています。

透析以外の選択肢が乏しいといわれてきた領域に、二本の道が引かれつつあります。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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