株式会社ユーグレナ(euglena)|「微細藻類の大量培養」を研究

株式会社ユーグレナ(euglena)

ユーグレナ「微細藻類の大量培養」を研究|研究領域=水槽で微細藻類を大量に培養する/強み=藻類を安定して増やし収穫できる/将来性=食品から燃料まで用途を広げる

企業紹介|株式会社ユーグレナとは?

食料と燃料の原料を新たに生み出す技術として、注目を集める「微細藻類の大量培養」。株式会社ユーグレナは、その「微細藻類の大量培養」に取り組む、東京大学発のバイオテクノロジー系ディープテック企業です。石垣島で培養した「石垣島ユーグレナ」を使う食品や化粧品と、廃食油などから製造するバイオ燃料「サステオ」を、消費者や運輸・航空の現場へ提供しています。

キーワード「微細藻類の大量培養」

「微細藻類の大量培養」は、微細藻類(顕微鏡でしか見えない小さな藻類)を屋外の水槽で増やし、原料として収穫する生産方法です。特徴は、光と二酸化炭素と水から短期間で増殖し、食品にも燃料にも使える点にあります。飲料やサプリメントの原料から自動車や航空機の燃料まで、同じ藻類から幅広い用途へ広げられます。

市場課題|食料と燃料の原料が不足しやすい

現状の原料調達の課題|現状は、農地と水の制約で増産が難しい/人口増で食料の生産が逼迫/燃料用の作物が食料と競合しやすい

人口増で食料の生産が逼迫

世界の人口が増えるほど、食料の生産に欠かせない農地と水の確保は難しくなります。牛肉には飼料と牧草地、大豆には大量の農業用水が必要です。気候変動で収穫量が振れる年も重なるため、栄養が行き渡りにくい地域では不足が長く続きやすくなるといわれています。

燃料用の作物が食料と競合

輸送に使う燃料を植物由来へ切り替える動きは、原料が食料と重なるという別の課題を伴います。トウモロコシやパーム油を燃料へ回すと減るのは、食用や飼料に向かう量です。航空機や船舶は電動化が進みにくく、液体燃料の需要が当面残るため、食料と競合しにくい原料の確保が課題となっています。

他にも、天候に左右されやすい生産の不安定さ、微細藻類を安定して増やす培養技術の確立、収穫した藻類から油脂を取り出す工程の費用、製品ごとに求められる品質の管理、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • パーム油アブラヤシの果実から採る植物油。食品や洗剤に広く使われ、燃料へ回すと食用や飼料に向かう量が減る。
  • バイオ燃料植物や藻類、廃食油など生物由来の原料から製造する燃料。燃焼時の二酸化炭素は原料が吸収した分と見なされる考え方をとる。

ユーグレナの強み|微細藻類の屋外大量培養

ユーグレナが「微細藻類の大量培養」を開発|今後は、屋外培養で食と燃料の両立が可能に/屋外の水槽で安定して増殖/藻類の油脂を燃料へ転用

屋外の水槽で安定して増殖

微細藻類は栄養価が高く、屋外の水槽ではバクテリアや動物性プランクトンの餌になりやすい性質があります。そのため培養槽の中で数が伸びにくく、量産は長く難しい課題でした。

同社が確立したのは、微細藻類ユーグレナだけが増えやすい水質を整え、屋外で大量に培養する方法です。無菌の設備を保つ考え方から、他の生物が近づきにくい培養条件を選ぶ方針へ切り替えたことが転換点になりました。大阪府立大学の中野長久教授らの協力を得て研究を重ね、2005年12月に沖縄県石垣島で屋外大量培養に成功しています。現在も石垣島の拠点で「石垣島ユーグレナ」を培養し、ビタミンやミネラル、アミノ酸など59種類の栄養素を含む原料として供給しています。

藻類の油脂を燃料へ転用

植物油を原料とする燃料は、収穫量が天候と作付面積に左右されます。原料を増やす速度にも限りがありました。

同社は、廃食油と微細藻類の油脂を原料に、次世代バイオディーゼル燃料とバイオジェット燃料を製造しています。バイオ燃料「サステオ」は2020年に車両向け、2021年に航空機向けの供給を始め、バスや配送車、フェリー、旅客機まで用途が広がりました。横浜市鶴見区にはバイオ燃料製造実証プラントを建設し、2018年10月の完成から2024年1月まで運転して製造の工程を確かめています。現在の重点は、食料と競合しにくい藻類由来の油脂の比率を高める技術開発です。

FrontJournalの解説
  • 屋外大量培養屋外に置いた水槽で微生物や藻類を大規模に増やす方法。設備費を抑えられる一方、外部からの捕食や汚染を受けやすい。
  • 廃食油飲食店や家庭で調理に使った後に回収される食用油。食用としての役割を終えた資源のため、燃料へ回しても食料と競合しにくい。
  • バイオジェット燃料植物や藻類、廃食油などから製造する航空機用の燃料。既存のジェットエンジンや給油設備をそのまま使える点が特徴とされる。

微細藻類の未来|食と燃料の両面へ広がる

持続可能な大量培養が変える未来|食品から燃料まで用途が広がる/食品や化粧品で日常に浸透/航空と船舶へ用途が拡大/栄養と燃料の両立を目指す

食品や化粧品で日常に浸透

「石垣島ユーグレナ」は、飲料やサプリメント、化粧品の原料として売り場に並んでいます。自社ブランド「からだにユーグレナ」に加え、他社製品向けの原料販売や受託製造も同社の事業です。微細藻類ユーグレナだけが持つ成分「パラミロン」は、β-グルカン(酵母やオーツ麦にも含まれる多糖類)の一種で、食物繊維に近い性質を併せ持つとされています。石垣島では「ヤエヤマクロレラ」などの原料も培養し、食品や化粧品の材料として供給しています。

航空と船舶へ用途が拡大

バイオ燃料「サステオ」の用途は、陸上の車両から船舶や航空機へ広がっています。廃食油を原料とする燃料は、既存のエンジンや給油設備をそのまま使える点が強みとされています。マレーシアでは、同国の国営石油会社ペトロナスおよびEniliveと組み、持続可能な航空燃料(SAF)と次世代バイオディーゼル燃料を製造する商業プラントの建設が始まりました。同社も出資しており、プラントは2028年下半期の稼働開始を予定しています。

栄養と燃料の両立を目指す

同社が目指すのは、微細藻類の生産を通じて栄養と燃料の両方を支える仕組みです。バングラデシュでは「ユーグレナGENKIプログラム」として、ユーグレナ入りのクッキーを子どもたちへ無償で配っています。1食分のクッキー6枚で補えるのは、不足しやすいビタミンAや鉄分などの1日分の量です。2016年からは血液検査や身体測定で効果を確かめ、創業のきっかけとなった栄養の課題に応え続けることを目指します。

FrontJournalの解説
  • パラミロンユーグレナが体内に蓄える多糖類。水に溶けにくく、食物繊維に近い性質を持つ成分として扱われ、健康食品の素材に用いられる。
  • 持続可能な航空燃料(SAF)バイオジェット燃料を含め、持続可能性の基準を満たすと認められた航空燃料の総称。航空分野の脱炭素の手段とされている。

会社概要|株式会社ユーグレナの事業内容

東京大学の研究から起業

株式会社ユーグレナは、2005年8月に設立されました。創業の中心となったのは、東京大学在学中にバングラデシュを訪れ、栄養が行き渡らない現実を目にした出雲充氏です。栄養価の高い微細藻類ユーグレナを食料として届ける構想が出発点で、屋外大量培養の研究開発は鈴木健吾氏らが担ってきました。代表取締役社長には出雲充氏が就任し、本社は東京都港区、培養と研究の拠点は沖縄県石垣島に置かれています。同社は、東京大学の研究から生まれた大学発スタートアップの一社です。

上場後に海外へ事業を拡大

同社は2012年12月に東京証券取引所マザーズへ上場し、2014年12月に第一部へ市場を変更しました。バイオ燃料の分野では、横浜市と「バイオ燃料地産地消プロジェクト」に取り組み、路線バスや配送トラックへの供給を進めてきました。マレーシアの商業プラントでは、合弁会社への出資比率を2025年7月に15%へ引き上げ、年間約10万キロリットルのバイオ燃料の取り扱いを見込むとしています。2025年11月には現地で鍬入れ式が行われ、建設工事が始まりました。

ヘルスケアと燃料が事業の柱

ヘルスケア事業、バイオ燃料事業、サステナブルアグリテック事業、バングラデシュ事業が同社の柱です。売上の中心は食品や化粧品を扱うヘルスケア事業で、他社向けの原料販売や受託製造も手がけています。バイオ燃料事業は、実用化までに長い時間を要する分野です。上場企業として、海外プラントへの出資のような長期の投資にも取り組んでいます。

会社情報

会社名株式会社ユーグレナ(euglena Co., Ltd.)
所在地東京都港区芝5-29-11 G-BASE田町。培養・研究拠点:沖縄県石垣島。
設立2005年8月9日
代表代表取締役社長 出雲 充
資本金163億3,115万円(2024年12月末時点)
上場東京証券取引所プライム市場(証券コード2931)。2012年12月にマザーズへ上場し、2014年12月に第一部へ市場変更。2022年の市場再編でプライム市場へ移行。
連携ペトロナス、Enilive(マレーシアのバイオ燃料商業プラントの合弁会社)。横浜市(「バイオ燃料地産地消プロジェクト」)。
技術領域微細藻類の屋外大量培養。機能性食品・化粧品の原料開発。バイオ燃料の製造技術。
製品「石垣島ユーグレナ」などの原料。自社ブランド「からだにユーグレナ」。バイオ燃料「サステオ」。
URLhttps://www.euglena.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

ミドリムシの名で知られる微細藻類が、飲料の棚にも航空機の燃料にも届いていることは、あらためて驚きに値します。株式会社ユーグレナは、屋外で藻類を安定して増やす技術を突破口に、食品から燃料まで用途を広げてきました。培養という地道な工程の積み重ねが、幅広い事業の土台になっています。

印象に残るのは、無菌の環境を保つのではなく、ユーグレナだけが増えやすい環境を選んだ発想の転換です。健康食品の会社にとどまらず、藻類を育てる技術で食と燃料をつなぐ企業である点に、この会社の核心があります。上場で得た資金を、時間のかかる燃料事業へ回す姿勢も、研究開発型の企業らしい選択です。

石垣島の水槽で育つ小さな藻類が、食卓と空の両方を静かに変えていきます。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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