Next Semiconductor「GaNパワーモジュール」を研究|パワーモジュールと駆動回路のイラスト

株式会社Next Semiconductor(ネクストセミコンダクター)

Next Semiconductor「GaNパワーモジュール」を研究|研究領域=GaNによる電力変換・モジュールを設計/強み=素子からモジュール・駆動まで一体設計/将来性=幅広い分野の・電力変換を高度化

企業紹介|株式会社Next Semiconductorとは?

電力変換の損失を抑え、機器を小型にする技術として、注目を集める「GaNパワーモジュール」。株式会社Next Semiconductorは、その社会実装を目指す、大分大学発の半導体系ディープテック企業です。パワーモジュールの設計と、ゲートドライブ回路(電力を切り替える半導体を動かす回路)の技術支援を、パートナー企業へ提供しています。

キーワード「GaNパワーモジュール」

「GaNパワーモジュール」は、GaN(窒化ガリウム)を使った、電力を切り替える半導体素子を、配線や放熱の構造とともにひとつにまとめた部品です。特徴は、高速で電流を切り替えながら電力の損失を抑え、電源を小型にしやすい点にあります。基地局や電源アダプタ、データセンターの電源で、小型で効率のよい電力変換に使われます。

市場課題|GaNは高速で切り替わる一方、回路設計が性能を左右する

現状のパワー半導体の課題|現状は、切り替えが速く回路の影響で性能を出しにくい|切り替えが速いほど・回路が波形を左右/実装後の挙動は・単体で測りにくい

高速化で回路設計の影響が増大

GaNなどの次世代パワー半導体は、切り替えが速いぶん、回路の設計が性能を左右します。スイッチング(電流の入り切り)が速いほど、回路内のわずかなインダクタンス(電流の変化を妨げる性質)やゲートドライブ回路の設計が、電流と電圧の波形を変えるためです。素子単体の性能が、そのまま電源の効率になるとは限りません。

実装後の挙動は単体で測りにくい

高出力のGaNは、素子単体の評価だけでは実際の挙動を把握しにくい状況です。モジュールに実装して駆動回路と組み合わせた状態で測らなければ、動作を確認しにくい状況です。低出力のGaNは充電器などで実用化が進む一方、650V/300A級の高出力は、実装と評価の両面で難しさが残っています。

他にも、高出力モジュールの実装、組み合わせた状態での評価、素子・モジュール・駆動回路の最適化、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • スイッチング電流を流す状態と止める状態を、高速で切り替える動作を指す。パワー半導体はこの切り替えを繰り返して電圧や電流の形を変え、電力を変換する。高い周波数で切り替えるほど周辺の部品を小さくできる。

Next Semiconductorの強み|「GaNパワーモジュール」を研究

Next Semiconductorが「GaNパワーモジュール」を研究|現在は、一体設計で開発の技術支援を提供|素子と駆動回路を・一体で最適化/実機に近い条件で・切り替え波形を評価

素子と駆動回路を一体で最適化

素子単体の最適化にとどまると、モジュールと駆動回路を組んだ状態で、素子の性能を引き出しにくくなります。

同社は、パワーデバイス(電力用の半導体素子)、パワーモジュール、ゲートドライブ回路を一体で最適化します。素子の構造と特性の解析から、構成部材の選定、熱設計と電気設計、製造プロセスまでを一つのチームで扱い、GaNの特性に合わせたモジュール構成を提案します。駆動回路は、回路構成・部品選定・絶縁設計の面と、制御アルゴリズム・信号処理の面の両方が設計の対象です。一体設計により、高効率化とノイズ低減を図ったモジュール設計に取り組んでいます。

実機に近い条件で波形を評価

素子単体の測定では、モジュールに実装したときに生じる波形の変化まで捉えにくくなります。

同社は、素子をモジュールに実装して駆動回路と組んだ状態で、スイッチング特性をダブルパルス法(素子に短いパルスを2回加え、切り替え時の波形を測る方法)で調べる評価条件を設計し、実機で検証します。素子の切り替えの速さや電力の損失は、この波形から読み取れます。高出力のGaNの評価に必要な要件の整理も担い、評価に使う装置の設計や試作も事業の領域です。素子単体でなく、実際の使用条件に近いモジュール全体の特性を確認できます。

FrontJournalの解説
  • ダブルパルス法パワー半導体の素子に短いパルス(瞬間的な電圧)を2回加え、切り替え時に生じる電圧と電流の波形を測る評価法を指す。素子の切り替え速度や損失を、実際の使用条件に近い状態で調べられる。

GaNパワーモジュールの未来|評価装置の共同開発から、電力変換の高度化へ

GaNパワーモジュールが変える未来|共同開発から、電力変換の高度化へ|共同開発の評価装置・1号機を大学に設置/評価装置を提案し・高出力のGaNを研究/脱炭素と省エネの・両立を目指す

評価装置の1号機を大学に設置

共同開発した評価装置「ダブルパルステスター」の1号機は、モジュールと駆動回路を組んだ状態でGaNのスイッチング特性を評価できます。1号機は、2026年9月の発表時点で大分大学に設置され、研究開発に使われています。共同開発は同月に発表され、相手は半導体などの製造設備を手がける株式会社リードテックです。リードテックは測定装置の設計・製造・製品化を、Next Semiconductorは評価条件の設計と実機での検証を担当します。2026年電気学会産業応用部門大会(9月1日開幕)の企業展示では、実機を公開する予定でした。

評価装置の提案と研究を継続

Next Semiconductorとリードテックは今後、研究機関と、パワーデバイス・パワーモジュール・インバータ(直流を交流に変える装置)の各メーカーへ、装置の提案を進めます。高出力のGaNパワーモジュールの研究開発も続ける方針です。同社は、2in1や6in1(素子を複数まとめた構成)のモジュールと、対応するゲートドライブ回路の技術支援に対応しています。パートナー企業には、モジュール設計と評価の技術支援も提供しています。

脱炭素と省エネの両立を目指す

同社は、GaNを軸に、幅広い分野の電力変換の高度化と、脱炭素・省エネの両立を目指しています。変換時の損失が小さくなれば、機器の消費電力と発熱が減り、冷却や電源も小型にしやすくなります。大学や地域の企業と協力し、地域から新しい産業を生み出すことが、同社の使命です。日本の半導体産業の再興に寄与したい考えです。

会社概要|大分大学の研究者を中核に2022年に設立された半導体企業

大分大学の研究者を中核に設立

株式会社Next Semiconductorは、大分大学の研究者を中核に、2022年5月26日に設立されました。代表取締役CTOの大森雅登氏は、専門が半導体工学の大分大学理工学部准教授で、縦型GaNパワーデバイスを研究しています。代表取締役CEOの松本武弥氏は、大分大学の客員研究員です。設立の目的は、GaNを中心とするワイドバンドギャップ半導体(高い電圧や周波数でも効率よく動作させやすい半導体材料の総称)の技術で、新しいエネルギー社会を実現することにあります。取締役には、電力変換やモータ制御、パワーエレクトロニクスを研究してきた名誉教授の野口敏彦氏と竹下隆晴氏、パワーモジュールの設計に携わってきた福田永吾氏が就いています。

産学連携事業の採択と計画承認

同社は2025年5月に、令和7年度の「先端技術挑戦プロジェクト産学連携創出支援事業」へ採択され、大学との連携による技術開発を進めています。大分県からは、経営革新計画(新しい事業の計画を都道府県が承認する制度)の承認も受けました。2025年3月には、大分放送(OBS)で紹介されています。

技術支援と受託評価が事業の柱

事業は、パートナー企業への技術コンサルティングや共同開発、半導体の評価サービス等です。技術支援は、課題の共有とヒアリング、最適な提案と試作検証、製品化と量産の支援の順で進みます。このほか、半導体の評価装置やプロセス装置の開発、材料とデバイスの受託評価も手がけています。

会社情報

会社名株式会社Next Semiconductor(Next Semiconductor, Inc.)
所在地大分県大分市大字旦野原700番地 大分大学研究マネジメント機構棟4階423-1
設立2022年5月26日
代表代表取締役CEO 松本武弥。代表取締役CTO 大森雅登(大分大学准教授)。取締役 野口敏彦、竹下隆晴、福田永吾
事業GaNを中心とする半導体の技術コンサルティングと共同開発。パワーモジュールの設計支援。ゲートドライブ回路の開発。半導体評価装置の開発。半導体材料・デバイスの受託評価
技術領域GaNパワーデバイス。パワーモジュール。ゲートドライブ回路
連携株式会社リードテック(スイッチング評価装置「ダブルパルステスター」の共同開発。2026年9月に発表)。大分大学(1号機を設置)
採択令和7年度「先端技術挑戦プロジェクト産学連携創出支援事業」(2025年5月に採択)。大分県の経営革新計画の承認
URLhttps://nxtsemi.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

GaNは、小型で効率のよい電力変換を可能にする半導体ですが、性能を引き出すには、素子だけでなくモジュールと駆動回路まで含めた設計が欠かせません。Next Semiconductorは、素子・モジュール・駆動回路を一体で最適化し、実機で測る環境づくりにも取り組んでいます。設計と評価をつなぐ姿勢が、同社の特徴です。

パワー半導体の分野では、ダイヤモンドを材料にする大熊ダイヤモンドデバイス株式会社も、研究開発を進める企業です。Next Semiconductorは、素子・モジュール・駆動回路を組み合わせて性能を引き出す、設計と評価に取り組んでいます。大分大学の研究者を中核に、地方の大学から新しい産業を育てようとする姿勢に、期待が高まります。

高出力のGaNを正しく測り、使いこなせる環境が整っていく未来を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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